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通りすがってごめんなさい

申し訳程度に道の端に残る雪を訝しみながら歩く今日この頃。
線路沿いの道を誰の許可を得た訳でもないですがいつも通り短い脚を大きく動かし自宅めがけて歩いておりました。
すると前からスマホを自分の顔に近づけたり遠ざけたり、首を傾げたり手を頬に当てたりする方に遭遇したのです。
彼女は私の存在に気付くことなく微笑み、しかしその足は確実にこちらへ歩みを進めております。

「このまま知らないふりをして進んだら?」
「正面衝突」

とくだらない心中語劇を繰り広げましたが、
それは現実とはならず、彼女は恥ずかしそうに私に会釈してくれました。

いや、寧ろお取り込み中に通りすがってごめんなさい。
私も会釈をしました。

ところで、私は変なところにこだわるので
「歩行者は右側通行」を絶対に遵守するのですが、特に気にされない方も多いようです。
何かってそうです。
どの方向から歩こうが
“絶対に自分が内側通る”勢が一定数いて面白いんです。
某高校近くの道に最強の“絶対に内側通る”勢の方がいて、勝手に「内側BBA」と呼ばせていただいているのですが、その方は必ず左側通行なんですね。
交通ルールに縛られクソ野郎の私からすると彼女は自分のことを車両か何かだと思ってらっしゃるんじゃないかと思うのですが、とにかく頑なに内側を通るのです。
杖をついている方が相手でも、小さな子どもを連れた方が相手でも、小学生が相手でも、誰も自分の内側は通らせないという強い意志をお持ちのようです。

失礼かと思いつつ、もし私が立ち止まったら外側を通るのか実験してみました。
…まあ幾度となく遭遇している方ですから相手も私の名前は知らなくても顔は認知しているはず。

結果はこうです。
向こうも立ち止まりました。
私はその日特に用事もなかったので5分以上は立ち止まっておきました。
向こうも動きません。

え?

わかりました。
彼女は自分の内側を通られるとどうにかなってまう呪いをかけられているのですね。
眠れる森の美女の如く、死ぬ代わりに内側を通られてはいけない呪いにかけられているのですね。
リラの精が眠りの代わりにそんな厄介な回避策を提示してしまったんですね、きっとそうなんですね。
よくわかりませんが彼女の呪いを解いてくれる王子様が現れますように。

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