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過去と未来①:シンジュとコンゴウ  その1

※ゲームソフト「Pokemon LEGENDS アルセウス」のネタバレ注意






(承前)




前稿において検討した「過去・未来」という主題の、一作品に限らない広がり。

そして一見対立に見えない「真実・過去」が、「過去・未来」を含んでいた構図。


この理解を、ヒスイ地方と、そこに存在したコンゴウ団・シンジュ団に援用しうるのではないか、というのが本稿の主眼である。



コンゴウ団・シンジュ団



https://www.pokemon.co.jp/ex/legends_arceus/ja/story/211215_01/


既にクリア済の方にはわざわざ公式の紹介記事を挙げて説明するには及ばないかもしれないが、今一度紹介する。

ヒスイ地方には、主人公が所属するギンガ団とは別に「コンゴウ団」「シンジュ団」と呼ばれる2つの集団が活動している。
コンゴウ団の人々は「今この時間をみんなと生きることが大事だ」という言葉をよく口にしている。一方のシンジュ団からは「この土地でみんなと生きることが大事だ」という声がしばしば聞かれる。


単純な話だが、

コンゴウ団=ディアルガを「シンオウさま」と称し、時間を大切にする集団

シンジュ団=パルキアを「シンオウさま」とあがめ、場所=空間を大切にする集団


これが多くのプレイヤーが抱く、この両組織に対するおおまかな理解であろう。伝説ポケモンであるディアルガ・パルキアの対関係を踏まえた、一見何のひねりもない組織であるが、細部においては謎も多い。

(その起源、開祖、各地への旅立ち、ヒスイへの帰還時期、レジェンズの数年前に起きていたらしい、セキ・カイが長になる前の両組織の争い、そしてその解散時期等。ここでは深くは立ち入らない)


いずれにせよ、表面上「過去・未来」との関係ははっきり見いだせない。「過去・未来」は時間にまつわる概念であるから、しいて言うならコンゴウ団と近い、くらいである。


そんなコンゴウ団・シンジュ団だが、ストーリー上からは、以下の如きそれぞれの団の特徴を見出せる。




一、コンゴウ団


https://www.pokemon.co.jp/ex/legends_arceus/ja/character/211215_01/

コンゴウ団を率いる長で、リーフィアが相棒。
ゆっくり待つ時間が苦手で、細かいことは気にせず突き進む豪快な性格の持ち主だ。シンジュ団の長であるカイとは考え方の違いからしょっちゅう喧嘩をしている。


公式でも触れられている通り、コンゴウ団の長セキはゆっくり待つ時間が苦手=せっかちな性格である。



また、ストーリ序盤のセキ・カイ初登場の一幕において、

コンゴウ11)


こうした発言からも、彼の性格がうかがえる。


その後、バサギリを鎮めるよう主人公らギンガ団に頼み、シンジュ団キャプテンであるキクイを紹介するなどしたセキ・ヨネが、ギンガ団本部を後にしたときの、ラベンの発言


コンゴウ12

団全体として、時間を大切にしていることが強調された。

他にも、

コンゴウ14


コンゴウ13

セキは自らをリーダーと自己紹介しており、古臭い呼び名を避けている。



以上をまとめると、

・コンゴウは時間を大切にして、時間を無駄にしないようにせっかちに動いている。

・セキは長という呼称を嫌い、リーダーという呼び方を気に入っている描写がある。


二、シンジュ団

https://www.pokemon.co.jp/ex/legends_arceus/ja/character/211215_02/


長として、ヒスイ地方の広大な大地を恐れぬ心を大切にしている。最初は主人公のことを疑わしく思っていたが、キングを鎮める際に力を借りたことをきっかけに、信頼を寄せるようになる。


公式の紹介だが、セキのほうは彼のせっかちな性格を記すのに対し、カイのほうは性格というより信条を記している。(こうした違いが生じる事自体、突き詰める余地があるかもしれない。)

ここでより注目したいのが後半の内容である。物語序盤におけるコンゴウ団とシンジュ団、それぞれの主人公に対する態度の違いが記される。

思えばコンゴウ団は主人公に対して当初から寛容に接していたようにも思う(セキからカミナギのふえをもらう、オヤブンコロトックを退治したことでアヤシシさまも認めてくれた)

対してシンジュ団は、序盤に限ればキクイもカイも主人公に対する態度はそれほど寛容でもなく、特にボールでポケモンを捕らえ、仲間にすることに対して拒否感を露わにしていた。



そしてシンジュ集落で教えてもらえる以下の話

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シンジュ集落は純白の凍土、ヒスイの北端に位置している(DPtシンオウ地方でいうところのキッサキシティである)。かなり寒い地域である。

住人の話によれば、このシンジュ集落が位置するのはシンジュ団開祖がシンオウさまと出会った地であり、シンジュ団の伝統と、場所を大切にする教えに従いこの場所にこだわっているようである。

しかし極寒の地だけに、食料の確保等に苦労しているらしい。これに加え、多分ポケモンが襲ってくることもあると思われ、こうした要因に依る死者も少なくないという事情をうかがわせる。こうした事実があろうとも、伝統と教えを守り、集落の位置を変えることはしないのである。

(なおポケモンが襲ってくることに関しては、コンゴウ集落もその事情は同じに思えるが、コンゴウ集落では、いざとなれば峠クイーンのドレディアが守ってくれるらしい。対して凍土のキングのクレベースは…)


以上をまとめると、

・シンジュ団は場所を大切にしている。

・シンジュ集落がある場所は、開祖がシンオウさまと会った場所という由緒があり、苛酷な環境下であるにもかかわらずそこに住み続けている。

・カイは長と名乗り、当初はギンガ団に対して懐疑的な態度を取っている。



三、比較

以上、両組織の特徴を比較した時の傾向は、端的に言うと


コンゴウ団=革新的

シンジュ団=保守的


と考える。

これも、BWの理想・真実の構図と同じように考えられはしないだろうか?

つまり、

革新的=未来志向

保守的=過去志向


ということである。これを念頭に置いて、改めて公式サイトのコンゴウ・シンジュ団を見てみると、

https://www.pokemon.co.jp/ex/legends_arceus/ja/story/211215_01/


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コンゴウ団の制服は黒っぽく、シンジュ団の制服は白っぽい。

黒=ゼクロム、白=レシラムと考えたとき、ここまでの話がすべてつながってくる。


四、結語


以上、この論で私が指摘したいのは、


・コンゴウ団=革新的思考=未来志向

      =黒=ゼクロム=理想=未来


・シンジュ団=保守的思考=過去志向

      =白=レシラム=真実=過去


という構図が成り立ちうる、

つまり最初に述べた「過去・未来」という主題が、ヒスイにおいても確認できるのではないか、ということである。


だが、こうした関係性を示すのは、コンゴウ・シンジュ団にとどまらないと私は考えている。この点を両組織の集落の立地と絡めて、稿を改めて論じることとする。

(続く)


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