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現象の攻撃力を上げる3つの方法(の続き)

前回の『現象の攻撃力(インパクト)を上げる3つの方法』の補足(少し)とその他の方法について。そしてその方法を習得することの意義について。

前回の『②予想外を使う』の補足と別の予想外を使う手法

⒈現象を起こすタイミングをずらす

とりあえずマジカルジェスチャーをせずに現象を起こす。とは書いたもののマジカルジェスチャーと同時に現象を起こしても、マジカルジェスチャーの後に現象を起こしてもお客さんの予想外のタイミングにすることは可能だ。うちの店長のカードマジックだと「赤と黒どっちが良いですか?」「赤?じゃあ赤消しますね」と言って手に持っていた4枚のKから赤いKを消すマジックがある。実際に消す時は手元のKをデコピンするのだが重要でもない雰囲気で気軽にした会話の途中で突然現象が起こるのでマジカルジェスチャーと同時でもお客さんの予想外のタイミングとなる。

大事な事は会話の途中で現象を起こすからできるのではなく、現象を起こすような気配を出していないから予想外のタイミングになる、という事、喋る時の声のトーンや速さなどで場の空気を軽くなるようコントロールする必要がある。実際に空気感のコントロールは状況によって変わるものが多く、現場立って慣れろ、で終わるのだが、軽くする方法よりはまず重くする方法を学ぶ方が効率的だ。その具体的な手段については、近いうちに記事を書いて公開する……と、思う……たぶん……

予想外はタイミングだけではない。

現象にも予想外なものはある。マジシャンなら身近なものとしていくつかあげると

キックバック系現象。コインマトリックスで最後の1枚が集まるかと思えば最初の位置に戻る、2枚目のカードを見つけたと思ったら1枚目と同じカード……などなど、そもそもが予想させてそれを裏切る構造なので楽に取り入れることができる。が、少し難しいのはお客さんに現象の先読みをさせる事、ちゃんとした流れを組まないとこちらが誘導したい予想とは別のものを想像していたり何も考えてなかったりなどの問題が起こる。それに加えて基本的にお客さんがすっきりしないマジックが多い。予想を裏切る事で攻撃力自体は上がれど(なんでそうなるの?)(よくわからない?)などお客さんの思考能力を圧迫することにもなるのでセリフなどを練り込みちゃんとついてこれるお客さんか考え、その上で予想通りに現象を起こした場合を超えれる何かが自分にできる場合のみやる価値があると言える。

他にも失敗したと思わせてから別の現象を起こすサカートリックも予想外を起こせるマジックではある。が、ぼくの師匠であり日本催眠奇術界の第一人者であるBirdieによるとサカートリックは『傷口に塩を塗ってから絆創膏を貼るような演出』だそうだ。ここまでは言わないが失敗を演技する事や、そこでお客さんに不快感を与えない事などサカートリック自体が難しいものではあるとぼくも思うので下手に手を出すのはオススメしない。

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いつのまにか系現象。

カードアンダーザボックスなどに代表される、いつのまにか視界の中で現象が起きているのに言われるまで気付かなかった。系の現象である。演じかたにもよるが対一般において優秀なジャンルであると共にお客さんの視線管理や台詞による意識の誘導などの練習にもなる為上記2つと違って初心者におススメだ。

僕も好んで手順に取り入れている系統の現象で、いつのまにか系ならではの手法や理論もある。あえて現象を先に宣言してやるなど色々と試したが、個人的にはリスクを高めるほど攻撃力があがる演じる側としても楽しいジャンル。ぜひこのスリルを楽しむ同士が増える事を祈る。

攻撃力を上げる事の意義とは?

わざわざ攻撃力を上げなくてもそもそも高いものをやれば良いのでは?10を50にあげるより元が100のものをやれば良いと考える人もいるだろう。その通りだと思う。たくさんある手法を考え学び実践習得する労力を経て10を30にしようと、元が100のマジックをすればそれを越えることができる。コスパも良いし実際にそうしているマジシャンも沢山いる。それが悪い事だとは言わない。お客さんにマジックを見せる以上最低限のウケは取らないといけないし、受けネタに頼っても良い。が、その100はマジックの力であって自分の力ではないという事、受けてるのは自分じゃなくてマジックだという事。マジシャンの力は10を30に上げるための20の部分だ。そして10を30にできるマジシャンは100も130にできる。それでもマジシャンの力はマジック100に対して30、それほどマジックとは素晴らしいもので僕らはマジックに助けられて評価されているという事を忘れてはいけない。

初心者はどうすべきか?

環境や状況によって変わるが、あなたが趣味としてマジックを見せ、たまにしかやらないのであれば受けネタを演じお手軽に高評価を得て良いと思う。それはマジックの良いところでもあるし、趣味人にまで「そんなのダメだ!」と口出しする人は無視すれば良い。

あなたがプロとして人前に立つ場合、周りに自分をカバーしてくれる人がいる前提だが、受けネタを禁じてやる事をオススメする。

僕の場合はマジックバーに入り最初の1年は店長から『マジック中に嘘をつかない』『受けネタは禁止』という制限を設けられていた。受けネタを最初からやってしまうと反応が良すぎるために、自分の力がつかない。10と30の差は初心者でもわかりやすいが100と130の差は初心者にはわかりにくい。最悪失敗して空気がお通夜になろうとそのあと何とかしてくれる先輩や店長がいるのならば、10を出すリスクを負うべきだという店長の考えだ。

プロとして人前に立つが、自分1人でカバーしてくれる人もいない場合、そもそも初心者がそんな場合になるのかという疑問はあるが、受けネタを演じるべきたと思う。たとえ初心者だろうとお金をもらうのであるならば、お客さんを満足させる最低ラインは越えなければならない。実力がないなら受けネタに頼らざるを得ない、が、そこで受けて満足してしまう様にならないよう手順の中に1つか2つくらい地味なマジックを入れるのが良いだろう。「このマジックは受けないからやめる」なんてマジシャンをたくさん見てきたが、受けないのはマジックが悪いんじゃない、マジシャンの実力が足りていないだけだ、甘えるな。


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