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エポローバルに上塗り塗装をしました。その後、塗膜剥離が発生してしまいました。何が悪かったのですか?(塗料の相性の話)

「エポローバルの上に他社塗料を塗装しました。塗った当初は問題なかったのですが、その後、塗膜が剥離してしまいました。どんな原因が考えられますか?塗装時には、汚れが付着していた、油がついていたなどの状況はなかったと思います。」

この質問にお答えしたいと思います。
「亜鉛めっきに塗ってはいけない塗料をエポローバルの上に塗った可能性が考えられます。
エポローバルは他社製の塗料を上塗りすることができますが、どんな塗料でも塗ることができるわけではありません。弱溶剤変性エポキシ樹脂塗料を推奨しています。亜鉛めっきの上に塗ってはいけない塗料をエポローバルに塗ると、問題が起きる可能性が非常に高いです。今回の剥離も恐らくその可能性が高いです。
エポローバルを亜鉛めっき面として見なして上塗り塗料を選定ください。繰り返しになりますが、エポローバルの上には弱溶剤変性エポキシ樹脂塗料を推奨しています。」

実験について

質問にあった塗膜剥離現象を再現してみる実験を行います。

・下塗り
上塗りに対応したエポローバルを使います。

エポローバル

・上塗り
上塗りとして、以下の2つの塗料を比較します。
“鉄用のさび止め”と“鉄と亜鉛に塗れる変エポ”を使ってみて比較します。

“鉄用のさび止め”は、JIS K 5674 1種 鉛・クロムフリーさび止めペイントに準拠する製品です。鉄には塗れますが、亜鉛めっきには塗れません。

“鉄と亜鉛等に塗れる変エポ”は、JASS 18 M-109 変性エポキシ樹脂プライマーの規格に準拠する製品です。鉄、亜鉛めっきなどの素材に塗れる塗料になり、エポローバルの上塗りとしても推奨している塗料です。

・板素材
以下の2つの素材の板に塗装して実験を行います。
鉄(SS400、ブラスト処理したもの)
溶融亜鉛めっき

・行う実験
塗装した板を屋外に置き、太陽光、雨風にさらす屋外暴露試験を行います。

屋外暴露試験のイメージ

鉄の上に“鉄用のさび止め”を塗る(正しい組み合わせ)

鉄に“鉄用のさび止め”を塗っても、当然問題ありません。塗膜剥離も起きません。

鉄に鉛・クロムフリーさび止めペイントを塗った事例

塗膜傷部において、さびが発生していますが、環境遮断でさびを防ぐ一般塗料では致し方ないことです。

亜鉛めっきの上に“鉄用のさび止め”を塗る(間違った組み合わせ)

“鉄用のさび止め”は亜鉛めっきの上に塗ってはいけません。塗膜が剥離してしまいました。

亜鉛めっきに鉛・クロムフリーさび止めペイントを塗って塗膜剥離が起きた事例

今回“鉄用のさび止め”として用いた鉛・クロムフリーさび止めペイントは油性系塗料のひとつです。フタル酸樹脂塗料、アルキッド樹脂塗料などの油性系塗料は、成分として脂肪酸を含んでいます。脂肪酸は亜鉛と反応し、金属石鹸を作ります。この金属石鹼は水に溶けやすいです。溶けやすい成分が塗膜中にあると、水が塗膜の中や塗膜と被塗物の界面に入ってきやすくなり、塗膜剥離の原因になります。

エポローバルの上に“鉄用のさび止め”を塗る。(間違った組み合わせ)

エポローバルにも96%の亜鉛が含まれています。そのため、同じように金属石鹸ができ、塗膜剥離が起きてしまいます。

エポローバルの上に鉛・クロムフリーさび止めペイントを塗って塗膜剥離が起きた事例

頂戴した質問もこのようなことが起きたのではないかと推測します。

エポローバルの上に“鉄と亜鉛等に塗れる変エポ”を塗る。(正しい組み合わせ)

亜鉛を多く含むエポローバルの上に、“鉄と亜鉛に塗れる変エポ”を塗っても、剥離は起きません。“鉄と亜鉛に塗れる変エポ”は、亜鉛とは反応してないようにできているので、特に問題はありません。

エポローバルの上に変性エポキシ樹脂プライマーを塗装した事例

亜鉛めっきの上に“鉄と亜鉛等に塗れる変エポ”を塗る。(正しい組み合わせ)

“鉄と亜鉛に塗れる変エポ”は、亜鉛めっきに塗って良い塗料なので、当然亜鉛めっきに塗っても問題は起きません。

亜鉛めっきに変性エポキシ樹脂プライマーを塗装した事例

エポローバル塗膜は亜鉛めっきとみなして、塗料をご選定ください。

エポローバル塗膜には亜鉛が96%含有しております、ほぼ亜鉛です。亜鉛めっきとみなして、塗料をご選定いただけると問題は発生しにくいです。

今回紹介した事例も亜鉛に塗れない“鉄用さび止め”では、剥離が発生してしまう、亜鉛めっきに塗れる“鉄と亜鉛等に塗れる変エポ”では問題が起きないという結果でした。亜鉛めっきに塗れる塗料では問題が起きなったということです。
エポローバルの上塗りには、亜鉛めっきにも塗れる弱溶剤変性エポキシ樹脂塗料を推奨しています。ウレタン樹脂塗料などは、エポローバルに直接塗るのではなく、弱溶剤変性エポキシ樹脂塗料を挟むことを推奨しています。

上塗りに関する資料を添付いたします。

(記事担当:MTMTH)


本記事は亜鉛めっきに塗れる塗料ならエポローバルに上塗りしても問題が起きないことを保証するものではありません。
本記事は使い方を誤ると問題が起きると事例の紹介です。それぞれの塗料の品質に問題は全くありません。誤解なきようお願いします。
鉛・クロムフリーさび止めペイントも変性エポキシ樹脂プライマーも本来上塗り塗装を必要とする塗料だと思います。正しい使い方は、塗料メーカーの製品説明書をご確認ください。


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