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複合サイクル試験ってどんな試験?

質問:「複合サイクル試験という名前を見るのですが、どんな試験ですか?」

回答:「腐食促進試験のひとつです。塩水噴霧、乾燥、湿潤のサイクルを繰り返し、さびなどの異状が発生するか、塗膜の耐久性を評価する試験です。塩水噴霧試験との一番の違いは、乾燥する段階がある点です。」

複合サイクル試験機

以下のような設備で、装置内に試験片(鋼板に塗料を塗ったもの)を立て掛けて並べます。

噴霧段階の時、中心の噴霧塔から塩水が噴霧され、試験片に塩水がかかります。

複合サイクル試験のことをCCT(シーシーティー)と呼ぶことがあります。複合サイクル試験の英語『Combined Cyclic Corrosion Test』を頭文字を取ったものです。

試験の条件

塩水噴霧~乾燥~湿潤のサイクルは、JISにはサイクルA~Dの4種類存在します。よく用いられるのは、サイクルAとサイクルDです。
サイクルAとサイクルDも塩水噴霧試験と同じ濃度の5%の塩水(50g/L)を用います。


サイクルA

  1. 塩水噴霧 2時間 (温度35℃)

  2. 乾燥   4時間 (温度60℃, 湿度20~30%)

  3. 湿潤   2時間 (温度50℃, 湿度95%以上)

合計 8時間を 1サイクルとして、段階3が終わったら、段階1から繰り返して行います。
サイクルAは、日本自動車技術会規格(JASO)に採用されています。そのため、JASOジャソサイクルと呼ばれることもあります。
自動車、製鉄、金属表面処理の会社はサイクルAを使っていることが多い印象です。


サイクルD

  1.  塩水噴霧 30分 (温度35℃)

  2.  湿潤   1時間30分(温度30℃, 湿度95%)

  3.  熱風乾燥 2時間(温度50℃)

  4.  温風乾燥 2時間(温度30℃)

合計 6時間を 1サイクルとして、段階4が終わったら、段階1から繰り返して行います。
サイクルDは、一般用さび止めペイントなどの塗料のJIS規格で使われています。塗料の会社はサイクルDを使っていることが多い印象です。


サイクルAとサイクルDを比較した場合、サイクルAの方が温度が高いため、腐食、劣化のスピードが速い印象です。
なお、本記事内の写真はすべてサイクルDの結果になります。

試験条件の正確な内容を知りたい方はJIS規格をご確認ください。

どれだけさびるの?

サイクルDにかけると、どれくらいさびていくのかを見ていきます。鋼板(SS400)をそのまま複合サイクル試験機の中に入れると、これだけさびていきます。
実験はサイクル数で書くべきとは思いますが、記事内はイメージしやすい経過時間数にて表記します。

腐食が促進されていると言えます。複合サイクル試験は、腐食促進試験のひとつです。

他の異状現象としては、塗膜に傷をつけた部分からさびが発生することもあります。写真の事例はありませんが、試験片の塗膜に膨れが発生することもあります。(写真はローバルの製品でありません。)

複合サイクル試験と屋外暴露試験の関係性

塩水噴霧試験は乾燥段階がなく、ずっと濡れた状態になります。一般的な屋外の環境では必ず乾くので、塩水噴霧試験と屋外暴露試験の結果は違うというのは、一般的な認識です。(屋外暴露試験は、試験片を屋外に置き、太陽光や雨風にさらす試験です。)

では、複合サイクル試験ではどうなのでしょうか?
複合サイクル試験の結果も屋外暴露試験との結果とはやっぱり違うという認識が一般的と思います。
どう判断するかは、それぞれの観点ですので、一例として溶融亜鉛めっきの試験結果を載せます。

屋外暴露試験の結果は、このような感じです。

屋外暴露試験を促進した結果が複合サイクル試験で得られているとは言い難い印象です。
複合サイクル試験に限らず、屋外暴露試験の結果を早く得られると認識されている腐食促進試験は今のところありません。

ローバルの複合サイクル試験結果

最後に、“塗る亜鉛”ローバルの複合サイクル試験の結果をお見せいたします。
赤さびも発生しておらず、良好な状態です。

屋外暴露試験でも良好な状態です。

屋外暴露試験の15年や20年の結果もあります。


(記事担当:MTMTH)

記載した試験結果はひとつの結果です。塗り方や素地の状態によって、塗膜の性能は大きく変わります。塗膜の性能を保証するものではありません。

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