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塩水噴霧試験ってどんな試験?

質問:「耐塩水噴霧性という防食性能を示す指標がありますけど、どんな試験をしていますか?」

頂いた質問にお答えいたします。
回答:「塩水噴霧試験をしています。塩化ナトリウム水溶液を霧状にして噴きつけ続け、塗膜にさびなどの異状が発生するかを見る試験です。」

塩水噴霧試験機

以下のような設備で、装置内に試験片(鋼板に塗料を塗ったもの)を立て掛けて並べます。

プレゼンテーション1

中心の噴霧塔から塩水が噴霧され、試験片に塩水が常にかかります。

塩水噴霧試験のことをSST(エスエスティー)と呼ぶことがあります。塩水噴霧試験の英語『Salt Spray Test』を頭文字を取ったものです。

試験の条件

蒸留水のように不純物を含まない水と純度の高い塩化ナトリウムで、塩水を作ります。塩化ナトリウム濃度は5%(50g/L)となります。ちなみに海水の塩分濃度は3.4%(34g/L)くらいです。液は中性なので、中性塩水噴霧試験という時もあります。

真水と海水を比べた時、海水の方がさびやすい印象があると思います。塩水噴霧試験は、海水のようにさびさせる力のある塩水を延々とかける試験です。

『さびる』、『腐食』も化学反応なので、温度が高い方がよくさびます。槽内は35℃に設定します。35℃と言えば、猛暑日です。猛暑日のような厳しい環境です。

常に塩水が噴霧されているので湿度は100%と認識してよいです。

どれだけさびるの?

塩水が噴霧されるということが、どれくらいさびていくのかを見ていきます。鋼板(SS400)をそのまま塩水噴霧試験機の中に入れると、これだけさびていきます。

スライド2

あっという間にさびており、腐食が促進されていると言えます。塩水噴霧試験は、腐食促進試験のひとつです。

他の異状現象としては、試験片の塗膜に膨れが発生したり、塗膜に傷をつけた部分からさびが発生することもあります。(写真はローバルの製品でありません。)

スライド3

塩水噴霧性試験の結果が悪い=防食性が弱いとは限らない

塩水噴霧試験は、JIS K 5600-7-1に規定のある試験になります。
その規定の中に、塩水噴霧に対する抵抗性が良くても、他の腐食環境に対する抵抗には直接的な関係性はほとんどないとあります。その一方で、塗料の品質チェックとしては、意味があるとも書いてあります。どういうことかを考えてみます。

溶融亜鉛めっきの塩水噴霧試験の結果を見てみます。

スライド3

1,008時間経過した時点で、赤さびが一部発生しており、塩水噴霧試験の結果としては理想的とは言えません。
(表面にある白いものは白さび(亜鉛のさび)です。亜鉛めっきは、鉄の代わりに亜鉛がさびる犠牲防食機構でさびを防ぐので、白さびは発生して当然のもので、異状とは判断しません。)

5年間屋外に放置した溶融亜鉛めっき板は写真のように赤さびは発生しておらず、鉄を保護できています。(屋外暴露試験は、試験片を屋外に置き、太陽光や雨風にさらす試験です。)

スライド4

先ほど溶融亜鉛めっきの塩水噴霧試験の結果は理想的ではないと言いましたが、一般環境における防錆性能は良好です。街中でもたくさんの溶融亜鉛めっき製の構造物(ガードレールや信号柱など)が見られます。溶融亜鉛めっきは使用されている環境でよい防錆性能を発揮しており、広く実績のある材料です。

塩水噴霧試験の結果は、防錆性能のひとつの側面だけで防錆性能のすべてを表すわけではないということです。防錆性能を見るときは塩水噴霧試験だけでなく、他の腐食促進試験も行っておいた方が良いです。

塩水噴霧試験は『100m走の速い人が野球とかサッカーが上手とは限らないけど、足の速い人の方が野球とかサッカーで活躍できる可能性は多そうだから、100m走のタイムを測っておこう。』みたいな試験だと個人的に思っています。

塩水噴霧試験は、このような試験となります。正確な内容を知りたい方はJIS規格をご確認ください。

ローバルの塩水噴霧試験結果

最後に、“塗る亜鉛”ローバルの塩水噴霧試験の結果をお見せいたします。
赤さびも発生しておらず、良好な状態です。

スライド5

屋外暴露試験でも良好な状態です。

スライド6

屋外暴露試験の15年や20年の結果もあります。

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(記事担当:MTMTH)

記載した試験結果はひとつの結果です。塗り方や素地の状態によって、塗膜の性能は大きく変わります。塗膜の性能を保証するものではありません。


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