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黒皮の上からローバルは塗れますか?

「鉄の上にローバルを塗ろうと思うのですが、鉄には黒皮があります。黒皮を剥がすのは困難です。そのままローバルを塗装しても良いですか?」

よく頂くこの質問にお答えいたします。
「黒皮は除去してからローバルを塗装してください。黒皮の下に赤さびがあると、そこからさびが発生する恐れがあるので黒皮を剥がしてください。」

「ただ黒皮の質が良ければ、実験結果の様にローバルの強力なさび止め効果が得られます。しかし、黒皮の質が悪ければ、早期にさびが発生してしまうかもしれません。黒皮の良し悪しはわかりませんので、黒皮の上に塗る際はユーザー様のご判断にてよろしくお願いいたします。」


黒皮、ミルスケールは赤さびとは違う。

黒皮はミルスケールとも呼びます。鋼材が高温から常温まで温度が下がる過程でできる酸化被膜が黒皮です。
黒皮はさびの一種で、黒さびです。ボロボロになってしまう赤さびと違い、堅さを持ち、鋼材を赤さびから守る作用もあるため、黒さびは良性のさびと言われるようです。そんな黒皮も長期的な鋼材の保護はできませんので、実際に使われるときは、何らかの表面処理や塗装が施されます。

ローバルを塗っても良いかの判断は、導電性があるか、ないかが大事。

ローバルは鉄の代わりに亜鉛がさびる犠牲防食作用でさびを防ぎます。さびるというのは電子が奪われることです。鉄と亜鉛が電気的につながってないと、鉄の代わりに亜鉛が電子を出すことができません。
鋼板に導電性があれば、ローバルを塗って犠牲防食作用が働く可能性があります。導電性があるか、ないかが大事です。

黒皮は導電性がある。

黒皮の鋼板は電気を通しますが、赤さびは電気を通しません。黒皮、赤さび板の電気抵抗を測定し、比較してみます。

黒さびは電気を通すけど、赤さびは電気を通さない(イメージ)

左の黒皮は2.8Ω、右の赤さびは14.83MΩとなりました。Mは10の6乗ですので、右の赤さびがある鋼板は、左の黒皮鋼板に比べ、500万倍くらい電気を通しにくい結果となります。(写真は測定中数値は安定せず、その一瞬を捕らえた写真なので、あくまでイメージとしてご理解ください。)
ちなみに、さびのない鉄は黒皮のある鋼板よりももっと電気抵抗は低いです。

導電性のある黒皮の鋼板はローバルを塗装しても、さび止め効果が得られるかもしれないということになります。

黒皮にローバル塗ってみたら、さび止め効果が確認できた。

果たして、黒皮の付いた鋼板にローバルを塗ってもさび止め効果は得られるのでしょうか?考えていても答えは出てこないので実験を行ってみることにします。

黒皮付きの鋼板にローバルを塗装し、屋外暴露試験を行います。(屋外暴露試験とは、板を屋外に放置してします。太陽光を浴びて、塗膜が劣化して、さびが発生する、塗膜が膨れる等の塗膜異常が発生しないかを見る試験です。)

ローバルを塗装した黒皮鋼板の屋外暴露試験

屋外暴露試験を開始して1年経過、5年経過、8年経過したものすべてにおいて、さびは発生しておらず、ローバルのさび止め効果が出ていることが確認できます。

ローバルの膜厚を薄くしたり、塗料種を変えて同時に行っていた実験の結果もご紹介いたします。

黒皮鋼板にローバル製品を塗装して、屋外暴露試験

ローバル製品の強力なさび止め効果が発揮されているのが確認できます。

実際問題、黒皮って剥がしてから塗っているものなの?

黒皮を剥がすというのは、困難です。
その手間のかかる黒皮をきっちり剥がしてくれるユーザー様も当然いらっしゃします。しかし、正直そんなに多くはないかなという印象です。

ブラスト処理で黒皮を剝いでからローバル塗装

黒皮の上からローバルを塗装するユーザー様の方が多いと思っています。
移転してしまいましたが、自分たちの交野工場でも黒皮の上から塗装しているところがありました。赤さびが発生しても、赤さびを削ってローバルを塗ればいいやって考えてました。メンテナンスのしやすさもローバルの良さのひとつです。

黒皮の上からローバルを塗る

良好な黒皮であれば、剥がさずにローバルを塗装してもさびの発生は防げると思います。赤さびがあるのはダメです。ただ黒皮が良好かどうかは、わかりかねますので、ユーザー様のご判断でよろしくお願いいたします。

まとめ 質の良い黒皮ならそのまま塗っちゃう。(剥がして塗れるなら剥がして塗った方が良い。)

公式見解としましては、「黒皮剥いでからローバルを塗装してください。」です。

黒皮を剥がすのが困難な場合は、赤さびが発生していないなどの黒皮の質を確認の上、ユーザー様のご判断でローバルを塗るというもありだと思います。黒皮の上には油が付いていると思いますので、それはきっちり落としてください。

少々無責任な感じになり申し訳ないのですが、塗装の実態をご紹介できればと思い、本記事を作成いたしました。

(記事担当:MTMTH)


おまけ。黒皮をそのまま屋外暴露した。

黒皮の鋼板をそのまま屋外暴露試験に出すと、こんな感じですぐさびてしまいます。

黒皮に赤さびを防ぐ作用があると言っても、乾燥環境下での話です。雨に濡れたらすぐさびてしまいます。


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