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コーヒーのサプライチェーン⑥…コーヒーのフェアトレードについて

こんにちは、ROUTEMAP COFFEE ROASTERSです。

2022年初投稿は、【コーヒーのサプライチェーン】シリーズから!

他の内容の記事も重なり、このシリーズの更新がやや滞ってしまいましたが、こちらの方もしっかり進めて参りたいと思います!


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今回のテーマはフェアトレードについて。

フェアトレードという言葉はコーヒーに限らず、主に途上国で生産された産品を対象に「公正公平な取引」を目指し活動が行われています。

活動内容や取り組みついては多岐に渡るので、今回はフェアトレードの全てではなく「コーヒー」「フェアトレード」、この2つの関連性に焦点を当てて資料をまとめ、記事にしました。

なお、フェアトレード自体については日本のフェアトレード団体を始めその情報が多く存在します。

フェアトレード全般について興味がある方はぜひ下記のリンクを始め、気になるワードを検索したり専門の文献などをぜひ探して見てください☺︎



1)フェアトレードとは?

フェアトレードとは、小麦・とうもろこしなどの農作物、綿や切り花などの製品、原材料などを生産・供給において一定の基準を満たした商品として世界に流通させ、格差の是正を図ることを目的とした『認証制度』です。

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世界で流通している、主に途上国で生産された日用品や食料品は、市場価格の変動の影響によってかなり安い価格で取引されており、生産者の手元に渡る利益はほとんどありません。

そこで、認証された商品を流通し、公正な取引を行わせて適切な利益を生み出すことで、生産者に安全かつ安定した生活を提供することが可能になります。


農家や労働者にとって、フェアトレードは“労働者の権利”、“より安全な労働条件”、“より公正な賃金”を意味しており、そして消費者にとっては、“高品質で倫理的に生産された製品”を意味します。

買いものをする際のひとつの選択で、商品の利益は生産者の生活を保証するだけではなく、設備投資や、次世代生産者向けの技術トレーニングの費用などにも分配され、生産格差の是正につながっていき国際貿易の成長にも発展していくのです。

つまり、“フェアトレード認証の商品を選ぶ”ということは、「世界が直面する最大の問題のいくつかに立ち向かい、公正と平等のために供給者と共に歩む」ということを示します。


2)コーヒーのフェアトレード


コーヒーのフェアトレード認証が広まったのは、1988年のコーヒー危機がきっかけでした。

[コーヒー危機/Coffee Crisis]…国際コーヒー協定(ICA)がコーヒー生産主要国に対し価格を割り当て管理を行なっていたが、先進国の政治的な支援不足によりICAが破綻し、市場価格が大暴落した出来事。小規模農家に特に大きな打撃を与え、最大で約70%もの収入減、多くのコーヒー農園が壊滅に追い込まれた。


当時の市場価格に割り当てが行われず、買い手がつかなかったためコーヒーの供給量が需要量を上回ってしまい、多くのコーヒー農家が生活困難に陥ってしまいました。

そこで、オランダのフェアトレード団体「Max Havelaar」がコーヒー生産者に十分な賃金を払うことを目的に、世界初のフェアトレード認証ラベルを作り、コーヒーの価格を人為的に引き上げるためのフェアトレード取引が行われます。


その後コーヒーだけでなく、他の製品の市場価格を安定させるために世界中でフェアトレード推奨団体・支援企業が設立され、やがてそれらが集まり、ひとつの国際基準が設けられた現在の「フェアトレードインターナショナル」が設立されました。


3)フェアトレード認証の基準/条件

前提として、フェアトレードに関わるサプライチェーン上の全ての組織が国際フェアトレード認証を取得する必要があります。

単に対象地域、国内で生産されたからというだけで誰でもフェアトレード認証商品を取引できるわけではなく、携わる人全員が共通認識としてフェアトレードに精通していなければならないのです。

このことから、フェアトレードについての概要を理解していれば、認証ラベルが貼られた商品を見た時に“この商品は生産・流通において安全かつ持続的な環境を整え、公正に取引が行われるための厳しい条件を全てクリアしている”ということが把握できます。

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認証ラベルはそれだけ大きな意味を示すので、消費者は安心して「倫理的な取引が行われた商品」を購入することができます。

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製品としての認証基準は、認証をする団体ごとで細かな違いはありましたが、国際フェアトレード機構がひとつに統合された際に国際フェアトレード基準としてまとめて設定されました。

認証ラベルにも多くの種類がありますが、基本的に「開発途上国の小規模生産者・労働者の持続可能な開発を促進すること」を目指して設計されており、その認証基準は「生産者の対象地域」「生産者・トレーダー基準」、そして「産品基準」により構成されています。


先ほど述べたように、サプライチェーンに関わる全ての組織が認証を取得しなくてはならないのは、「生産者」と「トレーダー」両者がフェアトレード認証の基準をクリアし、公正公平な取引を達成することを目的としているためです。

なので、両者に向けて定められた基準も厳格に設定されています。

それぞれが守るべきフェアトレード基準にはかなり多くの項目が存在していますが、全ての基準に共通しているのが以下の「三つの原則」です。

①経済的基準…フェアトレードの最低価格の保証や長期的な取引の促進など
②社会的基準…安全な労働環境、差別や児童労働・強制労働の禁止など
③環境的基準…農薬の使用削減または適正使用、土壌・水源・生物多様性の保全など

フェアトレードの認証基準を満たすことで初めて、生産者はこの原則に沿った製品の生産、そして市場へのアクセスが可能になるのです。


4)コーヒーの生産と三つの原則

フェアトレードの認証基準の「三つの原則」はそれぞれ、認証対象の産品はもちろん、コーヒーの生産においては特に大きな課題として存在しています。


①経済的基準における課題
世界で2500万人存在する50ha以下の農園を持つコーヒーの中小規模生産者にとって、コーヒー市場への参入と経済的な自立はサプライチェーンにおいて大きな課題となっています。市場価格が安定しないことで、生産者の手元にはほとんど利益が残らないため、生産者の生活の安定を図るためにも公正公平な取引が求められています。


②社会的基準における課題
…植民地支配により、奴隷たちが強制的にコーヒー栽培に従事していた歴史はかなり長く、生産主要国ではコーヒー産業が盛んな今でもその背景が尾を引いています。過酷な労働環境で働く生産者や、低賃金で雇われる出稼ぎのピッカー、小さな子どもがコーヒーの実を収穫する、などの状況をいち早く改善するため、コーヒー業界では現在多くの議論が交わされています。


③環境的基準における課題
…コーヒーの生産はSDGsの掲げる各目標と密接に関係しています。農園ごとではコーヒーの品質と生産量を保ちながら、廃棄物の適切な処理を始め、資源の再利用、土壌・水源の保全、生産者の労働安全・管理など、ゴールの達成に向けて様々な取り組み・システムをコーヒー農園で行っていく必要があります。しかし国や組合からのバックアップがなく、かつ経済的、政治的な理由でそれらの取り組みを行うことが難しい状況の生産者もいまだに多く存在しています。


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フェアトレードは主に途上国で生産された製品を対象としていますが、中でもコーヒーの認証については比較的他の製品に比べ、認証条件をクリアするハードルが高いままの状況に置かれているのです。

生産と流通の現在抱える課題と、フェアトレードが目指しているゴール。そこに生じた大きなギャップを埋めていくために、コーヒーのサプライチェーン内全体で課題に取り組んでいかなくてはなりません。


【コーヒーのサプライチェーン⑥まとめ】

○フェアトレードとは、「公正公平な取引」を行うことを目的とし、生産者に安定した生活を提供するための『認証制度』である。

→主に途上国で生産された日用品・食料品は市場価格の変動の影響によってかなり安い価格で取引されており、生産者の手元に渡る利益はほとんどない。

→対象となる商品の生産・供給において一定の基準を定めることで生産者と消費者の格差の是正を図る。

→消費者にとってフェアトレード認証の商品を選ぶことは、「世界が直面する最大の問題のいくつかに立ち向かい、公正と平等のために供給者と共に歩む」ということを示す。


○コーヒーのフェアトレード認証の始まりは1988年のコーヒー危機がきっかけである。

→当時のコーヒー市場価格は政治的要因により大暴落し、小規模農園に大きなダメージを与え、多くのコーヒー農園が壊滅にまで追い込まれた。

→オランダのフェアトレード団体「Max Havelaar」がコーヒー生産者に十分な賃金を払うことを目的に、価格の安定を図るためのフェアトレード認証による取引が行われ始めた。

→その他の産品もフェアトレードの対象とし、多くの認証団体・支援企業が集まり現在の「フェアトレードインターナショナル」が設立される。


○フェアトレードによる取引を行うには、サプライチェーンに携わる組織の全てが国際フェアトレード認証基準をクリアしなくてはならない。

→認証ラベルが貼られた商品は、厳格な基準・条件を満たし、公正な取引が行われたという証明となる。

→認証ラベルにも多くの種類があり、その認証基準は「生産者の対象地域」、「生産者・トレーダー基準」、「産品基準」により構成されている。

→基準に共通する「三つの原則」、これらを満たすことで生産者は安定した生産、市場へのアクセスが可能になる。


○フェアトレード認証の「三つの原則」は、コーヒーの生産背景の抱える問題と密接に関係している。

→コーヒーの認証については比較的他の製品に比べ、歴史的な背景や政治的な要因により認証条件をクリアするハードルが少々高い。

→フェアトレードの認証基準=生産者の安定した生活の保証を目指すには、コーヒーのサプライチェーン内全体で課題に取り組んでいかなくてはならない。

〔コーヒーの取引について 参照資料〕
…UNION HAND、PDG(☆Direct Trade In Specialty Coffee: Is It An Effective Model?、☆What is a Coffee Cooperative & How does it Support Producers?)、DCN(☆Fair Trade vs. Direct Trade: Communicating Yourself Into a Corner)、RoastyCoffee、Javapresse、Fairtrade International、Desarrollo(第3章)


コーヒーのサプライチェーン⑦に続きます…

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