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徒然

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気に入った俳句、短歌、一言を集めてぼちぼち呟きます。
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2023年5月の記事一覧

【蜩や夕日の里は見えながら 子規】0502 今日はよく晴れたと思い授業を始めたのだが、その後に引継や採点等の仕事を終える頃には、町全体が墨を塗られたように暗くなっている。当時の勤め先は母親の実家に近く、子規庵にもまあまあの距離であった。点々と点る家々の灯りを懐かしく思い出す。

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【ひらひらと風に流れて蝶一つ 子規】0502 この数年、蝶が飛んでいるところを見たことがない。出不精なので、休日は遠くまで出かけることはない。自分の身一つ、風に上手く乗って、行きたいところまで行ってみたいと思うのであるが、ひらひらと舞い上がれるほどの軽さでもない気がしている。

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【今やかの三つのベースに人満ちてそぞろに胸のうちさわぐかな 子規】0505 野球の試合を見物しているのか、それとも未だ健康が維持できていた頃に試合に加わっていたのか。満塁となったフィールドを見てわくわくしてきたという一首。俳句より短歌の方が字数が多いだけに、喜怒哀楽が伝わる。 

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【水汲みに往き来の袖の打ち触れて散り始めたる山吹の花 子規】0507 
花瓶を持って、水を取り替えに流しまで持って行ったのであるが、その往復の間に着物の袖が瓶口にかかり、せっかくの花が散ってしまった。病床から良かれと思ってしたことなのに、望まないことが起きてしまったという無念か。

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【もののけの出るてふ家に人住みて笑ふ声する春の夜の雨 子規】明治30年、30歳の作なので、既に病状は重くなっているはず。それでも、自分の住居をお化け屋敷にたとえて笑う無邪気さ、もしくは皮肉っぽさが見える気がする。実際に訪れて子規が自分の家をどれほど気に入って住んでいたのか分かる。

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【うつくしき春の夕や人ちらほら 子規】春が訪れて気候が穏やかになってくると、人々の気持ちにものびやかさが生まれて活気に満ちてくる。本来の明るくゆるい兄ちゃんの資質が出ていて好きな句である。夜がきて暗くなる前の下町に、人通りが増えて夕景の寂しさが薄れる感じが良いなと思う。

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