"いい人"と"いい友人"

俺はいい人だと思われたい。

だからいい人だと思われるように生活しているつもりだ。

そんな話を知り合いにしたら疑問を投げかけられた。

「いい人とは何か」

「いや..いい人は..いい人じゃん..??」

、、、結構無理があるか⁇

"いい人"とは共通認識のようでいて、投げやりな表現にも思える。

みんなはどんな人を"いい人"だと言うのだろうか。
今回は俺にとっての"いい人"を定めてみようと思う。
当然みんなにとっての"いい人"ではないだろう。

俺の友達にこんなやつがいる。
いつもは辛辣に俺のことを、社不だのなんだのイジる。
しかし俺が真剣な話をすれば真剣に耳を傾け、
俺が彼にしたことに対しては必ず「ありがとう」が返ってくる。

不思議だ。
俺に対するイジりも自然と嫌な感じがしない。
お互いにお笑いとわかってやっている節もあるが。
にしてもそこそこ優しいやつだ。
塩梅がいいというかメリハリがある。
全てに対していい人だとは思わないが、人間こんなもんだろうという感じだ。

ここで思うのは、いい人とはその人をいろんな角度から総合的にみて、関わってていたい、心地がいいと思えるかどうかだと思う。

例えばお互いの趣味の話が共有できるかどうかとかも結局は、自分の喋り相手になってくれるからいい人に当てはまると思う。

彼とは、サッカーやヒップホップなど共通の趣味もある。

一方で致命的にしてほしくないことがある。
例えば、
裏表があってあちこちで言ってる話が違う。
疑心暗鬼になる嘘をつく。
発言と整合性の取れない行動をする。
明らかな悪意で人を傷つける。
悪口が止まらない。

こんなところだろうか。
こういうのは一発アウトだと思う。
他の何が優れていようが関わるのを辞めるだろう。

もう1人俺の周りの人を例にあげたい。
俺の働いているアルバイトの店長だ。
この人はすこぶる優しい。
こっちが気にしていないことでも、「ありがとう」や「ごめん」を常々言う。
俺は24歳になるが、倍以上離れている。
年下に対して、簡単に口にできるのは本当に器がでかい。
賄いで美味い飯を作ってくれたり、誕生日を祝ってくれたり、そんなことは日常茶飯事だ。


俺は店長がいつもどういう仕事量をこなしていて大変なのかを知っている。
その上でこの優しさを表に出せるのは相当すごい。

その人のバックグラウンドを知り、目の前の人物を見ると見え方が変わる。
きっと店長も俺と会話を重ねて俺のことを知ってくれてるのだろう。
人間は関わる数が増えれば自然と好感度が上がるのかもしれない。

いい人の輪郭がなんとなく見えて来た。
俺の思う"いい人"とは、他人を理解しようと歩み寄る努力をしている人だ。
それを利害に関係なく、本心でやっている。
また一貫性のある発言や行動に現れていることも大事だろう。

これをするにはまず、自分以外の人間が、育った環境も、考え方も、生きてきた歴史も経験も、何から何まで違うことを知ることから始まるのではないだろうか。

それでは俺がいい人と思われるにはなにをしたらいいのか。

正直いうと誰にでもいい人と思われたいわけではない。
俺にだってどうでもいい人間はいる。
嫌な人間とは距離をとるだろう。

ただ少なくとも俺は俺の好きな人たちにいい人だと思われたい。
それは純度100%じゃなくていい。
ちょっとだけいい人でいい。

そのためには俺がいい人と思う基準を相手にもすればいいんじゃないないかと思う。
相手の話を真剣に聞き、
してくれたことにありがとうと言い、
自分に非があることには謝り、
大変な時にはできる範囲で手を差し伸べる。

当たり前のことだろう。
でもこの当たり前を一貫性を持ってやることは難しそうだ。

しかし、その行動が実る瞬間がたまにある。
それは相手が自分の身の上話や、過去の経験などを話してくれる瞬間だ。
俺のことを"安心感を持って受け入れてくれる存在"だと認めてくれたからこそ話してくれることだ。
これはとても嬉しいことだ。

先日、哲学者キケロの『友人について』という本の解説動画を見た。
こんなことが書かれている。

「友情とは善き人々の間で以外ありえない」

俺がいい人になりたい理由はこれだ。
つまりはいい人になることでいい友人ができるわけだ。

自分がいい人であれば、自分自身がいい人を見極めるセンサーとなってくれる。

さらにこう言っている。
「友情とは自分の貧しさや、欠乏を補うためのものではない。
何らかの必要性から生まれるものではなく自然発生するものだ。
つまり自分にどれだけ利益をもたらすのかという思惑からではなく、ある種の愛の感情を伴いながら、相手と心が通じ合うことによって芽生えるのである。」

いい人になるということも、いい友人を持つということも、存在の必要性や損得感情ではないらしい。

俺自身、都合のいい人間という意味でのいい人にはなれない。
なる気もない。
金銭をあげたり、人から好意を得るために必死で何かしてあげるのはバカバカしい。

自然発生的に生じる、友情のその瞬間のために、いい人であれればいい。