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『公共事業労務費調査』にまつわるモヤりあれこれ

平成25年度に爆上げしてから順調にV字上昇を続ける設計労務単価

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転機となった平成25年度単価の上昇理由として国土交通省が挙げていることは幾つかありまして、人手不足対策とかダンピング対策とかなんとか。

その中で、モヤッとするのが社会保険料の個人負担分を「労務単価に含めた」としていること。これ、サラリーマンの場合で平たく言うと、所得から天引き「される」はずの社会保険の個人負担分を国が先に払いますっていうことです。

なんか妙じゃないですか?労務費調査手順そのものには何の問題もないのですが、集計結果として公表するにあたってどうやって計算したのかわかりませんが、雇用保険や健康保険や国民年金の個人負担分を加えましたと言ってるんですよ。そりゃあ前年比15(%)も上昇する訳ですよ。ことの本質をみれば上昇率なんてどうでもいいんですけどね。

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社会保険の個人負担分って、いうなれば結果であって貰うものじゃない、と思うんですよね

スーゼネなんか受注が仕事ですから省きますけど、もともと建設業界は日給月給制が多く、小規模企業や一人親方と呼ばれる個人事業主も多いので社会保険の加入率は極めて低かった。義務ではあるけれど宵越しのカネは持たねえし、先のことなんかわからないのでそんなことにわざわざ高い掛け金を払う人はいなかったでしょ。実際。パチンコや風俗に使うほうがその瞬間は楽しいでしょうから。でもそんなことは何十年も前からわかっていたことです。

それに専門工事業者や下請けは常にたくさんいて、人工の調整が容易なのと何よりピンハネしやすかった。資本主義ですし当然そうなりますよ。下請け構造が進むほど末端の手取りは少なくなります。

でもそこが主に労務費調査の対象になるんですよ。

下請けはいろんな意味で、都合のいい受け皿として合法的に機能していたんですね。

ところがそんな建設業界もデフレには抗えないし重ねて少子化やキツイキタナイキケン、あとヤスイってことで若い担い手が激減。世代交代しないので高齢化がどんどん進む数が減る。国土基盤の未来が超危うくなったわけです。

で、どうしたか。政府が補正予算を付けまくって公共事業をいっぱい出そう、併せて賃金を上げよう。ここまではトムロもいいと思います。

ん?賃金上げようにも、実態調査みてみたら他の業界水準よりかなり低くなってしまっている。起死回生策が必要だな。で思いついたのが社会保険の加入を促すという名目のもとに国が個人分を先払いするという奇策なわけです。

先払いしてあとで同額を回収するという理屈はわかります。なのですが、上手くいくと思います?そもそも対象が建設業者だけというのも問題ですし、末端まで行きわたるのかも不透明というか行きわたるはずもない。一応国が下請け契約の内訳を追跡調査するとなっていますけど。

どうでしょう。モヤッとしません?労務費調査自体は問題ないんですよ。政策にモヤッとしません?わざわざ難しいことやる意味って何?利権?何より社会保険の加入を促すのって別の✖✖省がやることでは?

2019現在、建設キャリアアップシステム(CCUS)ってのが立ち上がりまして、嬉しいはずもなく加入する個人と会社の両方から、大金巻き上げるうえに現場ごとにも使用料領収されるというトンデモなさで、過去の就労経歴バレバレになるし、これを使って社会保険に加入しているかまで監視するっていうんですよ。正確なことはポスター見てください。

一部自己完結して、社会保険料のモヤッとは少しだけ晴れましたけど、それ以上にモヤッとが増えたのでモヤッと量は最初より増加しました。今のところ任意みたいですけど、あなた加入します?

今年から受け入れが決まった外国人技能者には、月給制かつCCUSの加入が義務付けられています。そして何より呆れるほど厳しい教育課程をクリアして入国して来ますので、日本人よりも優秀で日本人よりも高給取りになるでしょう。

これから選択を迫られる日本人は大反発のまま。そりゃそうでしょう。持ち出しばかりで嬉しい人なんか1人もいないでしょうよ。そのほかいろいろな意味でも。もう施行されちゃいましたけどね。さて、国は広げた大風呂敷どう収めるんだろう?

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公共事業労務費調査にまつわるエトセトラでしたが、まだまだモヤる所はたくさんあります。

最も多いのは、設計労務単価が安い高いの話。

これはそもそも積算の「賃金」の考え方-土俵が皆さんの手取額と全く違うので、比較する意味を成さないんですよ。

元請けはあえて、あなたにこの仕組みを教えません。「国が決めた単価なんだから、これ以上は出せないよ💢」と言われたひと、多いですよね。

「知らない」ってそういう事です。搾取されっぱなしで嬉しいですか?

あるべき給料が欲しいかたは「公共事業労務費調査の手引き」と「土木工事積算基準」は最低限読み込む必要があります。

手っ取り早く学びたいかたは、トムロの有料note2冊組を会社に買ってもらってください。

それでも納得した給料にならなければ、強力な資格を取り、より条件の良い会社に転職してください。今のところあなたを救えるのはあなたしかいません。

建設業界の先々を考えると、トムロは20~30代の皆さんと官民が協力し、既存の重層下請構造を破壊して、より働き甲斐のある業界をつくって欲しいと思うところです。

あ、わたしの社会保険料も国に払ってもらいたいんですケド

ありがとうございます