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【考察用 デス・ストランディングRPT】伝説の配達人

保護施設に引き取られた俺は、そのまま何年もそこで過ごすことになった。

親元へ帰りたいと何度もお願いしたが、「もう少し待っていなさい」と施設の職員は言うだけで、そうしてくれる気配さえなかった。

下手に外へ出て死体になっては困るのだろう……今のアメリカにとって『ネクローシス』による『対消滅(ヴォイドアウト)』は脅威だからな。

そして月日が流れ、施設を管理する技術者としての腕を見込まれた俺は『BRIDGES(ブリッジズ)』の端末開発エンジニアに抜擢された。

かつての上司だった『デッドマン』に「能力者の体調を24時間監視できる端末を用意してほしい」とお願いされたため、俺はBRIDGESのエンジニアたちと共に研究を重ね、手首に装着する手錠型の端末を開発した。

手錠型の端末

実物を見せた時は苦笑いされたが、血液の汚染濃度や臓器不全の兆候などを分析できる優れモノだ。

また体調管理だけでなく、装着者の視覚や聴覚から得た情報もデータとして残るため、監視カメラのような役割も担っている。

――ある日、俺は手錠端末のデータ解析を依頼された。

対象となる能力者(帰還者)の名は、かつて<伝説の配達人>と呼ばれた『サム・ポーター・ブリッジズ』。

俺の命を救ってくれたのはポーター(配達人)だ、だからサムの存在は畏敬の想いもあり、自分が失った自由を彼の中に感じていた。

「なわ」は、「棒」とならんで、もっとも古い人間の「道具」の一つだった。「棒」は、悪い空間を遠ざけるために、「なわ」は、善い空間を引きよせるために、人類が発明した、最初の友達だった。「なわ」と「棒」は、人間のいるところならば、どこにでもいた。

安部公房『なわ』

あの手錠端末は彼にとっての命綱となるだろうし、ポーターの必需品としてスタンダードな装備になると思われる。

今回の依頼は願ったり叶ったりといったところか……俺はサムの目を通して「今のアメリカ」を見ることができるのだ。

死者が生者を脅かし、国家も崩壊・分断された世界を見て何が楽しいのかと思うだろ?

それでも人は心で繋がっていると信じたいのさ、そう願わないとやってられないからな。

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