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『HR』これからの採用が学べる小説

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広告業界のHR畑(求人事業)で勤務する若き営業マン村本。自分を「やり手」と信じて疑わない彼の葛藤と成長を描く連載小説です。突然言い渡される異動辞令、その行き先「HR特別室」で彼を… もっと読む
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*目次*『HR』 これからの採用が学べる小説

 この小説について 広告業界のHR畑(求人事業)で勤務する若き営業マン村本。自分を「やり手」と信じて疑わない彼の葛藤と成長を描く連載小説です。突然言い渡される異動辞令、その行き先「HR特別室」で彼を迎えたのは、個性的過ぎるメンバーたちだった。彼はここで一体何に気付き、何を学ぶのか……。 第1話 『イタリアマフィアの爆弾』 第1話【1】 第1話【2】 第1話【3】 第1話【4】  第1話【5】 第1話【6】 第1話【7】 第1話【8】 第2話『ギンガムチェックの神様』

第3話『息子にラブレターを』 【21】/これからの採用が学べる小説『HR』

この小説について 広告業界のHR畑(求人事業)で勤務する若き営業マン村本。自分を「やり手」と信じて疑わない彼の葛藤と成長を描く連載小説です。突然言い渡される異動辞令、その行き先「HR特別室」で彼を迎えたのは、個性的過ぎるメンバーたちだった。彼はここで一体何に気付き、何を学ぶのか……。 *目次*はコチラ 第3話【21】 「それで、何か思いついた?」 1時間ほど経った頃、相変わらずソファの上でスマホをいじっていた宇田川室長が聞いた。少し前から答えを用意していた俺は、振り返って

第3話『息子にラブレターを』 【22】/これからの採用が学べる小説『HR』

この小説について 広告業界のHR畑(求人事業)で勤務する若き営業マン村本。自分を「やり手」と信じて疑わない彼の葛藤と成長を描く連載小説です。突然言い渡される異動辞令、その行き先「HR特別室」で彼を迎えたのは、個性的過ぎるメンバーたちだった。彼はここで一体何に気付き、何を学ぶのか……。 *目次*はコチラ 第3話【22】 なんだそれ。あまりに「普通」の答えにガッカリする。その魅力が見つからないから苦労してるんじゃねえか。 というより、中澤工業はデメリットだらけの職場だ。工場は

第3話『息子にラブレターを』 【19】/これからの採用が学べる小説『HR』

「何度もそう言ったわ。あなたのせいなんかじゃない。それどころか、きっと息子は、あなたがいてくれたおかげでとても救われたはずだって。……うちの子、繊細な子でね。小さな頃からなかなか友達もできなくて。中学時代には、ちょっとしたイジメも……。それを救ってくれたのがタカちゃんなのよ。タカちゃんと仲良くなってからは、息子も随分明るくなって……だから、そんな風に言わないでって、あなたのせいなんかじゃないって」 沈黙が降りる。遠くから、機械が動く音だろうか、微かな振動音が聞こえる。 室

第3話『息子にラブレターを』 【20】/これからの採用が学べる小説『HR』

この小説について 広告業界のHR畑(求人事業)で勤務する若き営業マン村本。自分を「やり手」と信じて疑わない彼の葛藤と成長を描く連載小説です。突然言い渡される異動辞令、その行き先「HR特別室」で彼を迎えたのは、個性的過ぎるメンバーたちだった。彼はここで一体何に気付き、何を学ぶのか……。 *目次*はコチラ 第3話【20】 「君ならどうするかね、今回の件」 タクシーの中で、宇田川室長は言った。その手には、帰り際に婦人から受け取った募集要項がある。横目でそれを覗き込み、俺は絶望的

第3話『息子にラブレターを』 【17】/これからの採用が学べる小説『HR』

この小説について 広告業界のHR畑(求人事業)で勤務する若き営業マン村本。自分を「やり手」と信じて疑わない彼の葛藤と成長を描く連載小説です。突然言い渡される異動辞令、その行き先「HR特別室」で彼を迎えたのは、個性的過ぎるメンバーたちだった。彼はここで一体何に気付き、何を学ぶのか……。 *目次*はコチラ 第3話【17】 高本以外の社員2名と、さっきの若い事務員も加わり、食堂は騒がしくなった。 結局俺たちは好意に甘えることになり、婦人の向かい側に座らせてもらう。ベトナム人含め

第3話『息子にラブレターを』 【16】/これからの採用が学べる小説『HR』

この小説について 広告業界のHR畑(求人事業)で勤務する若き営業マン村本。自分を「やり手」と信じて疑わない彼の葛藤と成長を描く連載小説です。突然言い渡される異動辞令、その行き先「HR特別室」で彼を迎えたのは、個性的過ぎるメンバーたちだった。彼はここで一体何に気付き、何を学ぶのか……。 *目次*はコチラ 第3話【16】 工場を出て事務所の扉を開けた時、どこからかチャイムの音が聞こえてきた。腕時計を見ると、昼の12時だ。 「さあ、もう帰れ。俺たちも昼休憩だ」 ふと見れば、事

第3話『息子にラブレターを』 【15】/これからの採用が学べる小説『HR』

この小説について 広告業界のHR畑(求人事業)で勤務する若き営業マン村本。自分を「やり手」と信じて疑わない彼の葛藤と成長を描く連載小説です。突然言い渡される異動辞令、その行き先「HR特別室」で彼を迎えたのは、個性的過ぎるメンバーたちだった。彼はここで一体何に気付き、何を学ぶのか……。 *目次*はコチラ 第3話【15】 そこから十分ほどかけて俺たちは工場内を回った。 工場を一周りして入り口まで戻ってくると「ほら、もういいだろ」と高本が言う。 まるで生け簀の魚のように高本の

第3話『息子にラブレターを』 【14】/これからの採用が学べる小説『HR』

この小説について 広告業界のHR畑(求人事業)で勤務する若き営業マン村本。自分を「やり手」と信じて疑わない彼の葛藤と成長を描く連載小説です。突然言い渡される異動辞令、その行き先「HR特別室」で彼を迎えたのは、個性的過ぎるメンバーたちだった。彼はここで一体何に気付き、何を学ぶのか……。 *目次*はコチラ 第3話【14】 見ていてハラハラする。室長の質問はあまりにストレートだ。確かに俺も、「機械を作る」ということがよくわかっていなかったが、だからといって嘘つき呼ばわりするなんて

第3話『息子にラブレターを』 【18】/これからの採用が学べる小説『HR』

この小説について 広告業界のHR畑(求人事業)で勤務する若き営業マン村本。自分を「やり手」と信じて疑わない彼の葛藤と成長を描く連載小説です。突然言い渡される異動辞令、その行き先「HR特別室」で彼を迎えたのは、個性的過ぎるメンバーたちだった。彼はここで一体何に気付き、何を学ぶのか……。 *目次*はコチラ 第3話【18】 食事が終わり、皆が出ていった後、俺たちはあらためて婦人と向かい合った。ベトナム人スタッフの1人が入れてくれた緑茶。婦人は湯呑みに手を伸ばし、上品な手つきで、口

第3話『息子にラブレターを』 【9】/これからの採用が学べる小説『HR』

この小説について 広告業界のHR畑(求人事業)で勤務する若き営業マン村本。自分を「やり手」と信じて疑わない彼の葛藤と成長を描く連載小説です。突然言い渡される異動辞令、その行き先「HR特別室」で彼を迎えたのは、個性的過ぎるメンバーたちだった。彼はここで一体何に気付き、何を学ぶのか……。 *目次*はコチラ 第3話【9】 病院を出た俺たちは、病院のタクシー乗り場に向かって歩き始めた。 「難しい状況ですね」 道すがら俺が言うと、「そうだねえ」と室長も同意する。 「でも、どう

第3話『息子にラブレターを』 【8】/これからの採用が学べる小説『HR』

この小説について 広告業界のHR畑(求人事業)で勤務する若き営業マン村本。自分を「やり手」と信じて疑わない彼の葛藤と成長を描く連載小説です。突然言い渡される異動辞令、その行き先「HR特別室」で彼を迎えたのは、個性的過ぎるメンバーたちだった。彼はここで一体何に気付き、何を学ぶのか……。 *目次*はコチラ 第3話【8】 どういうことだ。一体何の話をしているのか。 あの男はどう考えても、「信頼できそうな男」には見えなかった。それどころか、自己中心的で短絡的で、すぐに問題を起こ

第3話『息子にラブレターを』 【6】/これからの採用が学べる小説『HR』

この小説について 広告業界のHR畑(求人事業)で勤務する若き営業マン村本。自分を「やり手」と信じて疑わない彼の葛藤と成長を描く連載小説です。突然言い渡される異動辞令、その行き先「HR特別室」で彼を迎えたのは、個性的過ぎるメンバーたちだった。彼はここで一体何に気付き、何を学ぶのか……。 *目次*はコチラ 第3話【6】 「……え?」 意外な発言に、思わず室長と顔を見合わせた。人の良さが滲み出ているような社長だ。社員を辞めさせないよう頑張ることはあっても、辞めさせたいなどとい

第3話『息子にラブレターを』 【5】/これからの採用が学べる小説『HR』

この小説について 広告業界のHR畑(求人事業)で勤務する若き営業マン村本。自分を「やり手」と信じて疑わない彼の葛藤と成長を描く連載小説です。突然言い渡される異動辞令、その行き先「HR特別室」で彼を迎えたのは、個性的過ぎるメンバーたちだった。彼はここで一体何に気付き、何を学ぶのか……。 *目次*はコチラ 第3話【5】 室長が聞くと、社長は大げさに手を振った。半袖のパジャマから伸びる日に焼けた腕、その肘の内側に、止血用の絆創膏が貼られてある。血液検査をしたのか、あるいは、点滴