見出し画像

アメリカ留学について➀

始めに

 今回は、私がアメリカ留学にあたり行なった準備と、合格後の現状について書きます。まだビザの申請もできでいませんし、渡米や入学などはずいぶん先の話ですが、自分の中での総括とアメリカへの留学を考えている人への僅かながらの後押しになればと思っています。

アメリカ留学を志したきっかけ

 まず私がアメリカの大学院に進学したいと思った理由についてです。いつからかは覚えていませんが、もともと私にはアメリカに対する漠然とした憧れがありました。おそらく楽器を始める前、小学生の頃か、音楽留学なんて考えもしなかった中学生の頃からだったと思います。それが文化に対してだったのか、ライフスタイルに対してだったのかははっきりとしませんが、住みやすい母国を離れて暮らすならなんとなくアメリカだなと思っていたことは確かです。

 しかし、大学三年生の時本格的に留学を考え出した時まず候補に挙げたのはフランスでした。ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、サクソフォンを発明したのはベルギー人のサックスさんです。出身はベルギーですが彼の拠点はフランスにあり、世界で初めてサクソフォンが学校で学べるようになったのもパリのコンセルヴァトワールです。つまり、サックスの黎明期から今までクラシックサックスの中心地は基本的にはフランスにあると言えます。サックスのために曲を書いてくれた作曲家の多くもフランス人か、フランスに移住したヨーロッパ人です。

 つまりフランス留学というのはサックス吹きにとっては自然な流れでした。自分に近い人でフランス以外に留学した人は多分いません。

 しかもヨーロッパは大体学費が安い。生活費込みでも日本の音大にいるよりも安い可能性が高いです。ドイツはほとんどタダらしいし(最近は留学生は学費を払うらしいとも聞きましたが、詳細はわかりません)。

 そんなこんなで色々と調べ始めました。来日したフランスの先生にレッスンしていただいたり、フランス語を勉強したり。フランス留学から帰国した先輩からお話を伺ったりもしました。

 そうしているうちに、なんか違うな、と感じるようになりました。まず、私が行って何をしたいの?という自問に明確に答えられないな、と気付いたのが一つ。何かの目的のために手段として留学があるのではなく、留学を経験してみたいというのが最初に来ていました。それは良くない、と思ってもう一度考えた時、そもそもアメリカに憧れていたことを思い出し、それならついでにアメリカの音楽教育について調べてみようと思ったのが全てにきっかけです。

アメリカの学校の選び方

 これは私が出願に至るまでに調べたことや感じたことであり、実際とは違う点もおそらく含まれます。ご了承ください。

 まず、アメリカには所謂音楽院はほとんどありません。ここでいう音楽院とは、修了後に学位がもらえない教育機関のことです。世界最高峰のジュリアードやジャズ、ポップスの教育で有名なバークリーなどは音楽院ですが、特殊な部類です。

 調べていて一番多いのは、州立大学や私立大学の音楽学部です。注意して欲しいのは、アメリカの音楽学部で検索してよく出てくるのはリベラルアーツとして音楽を教えている学校だということです。

 どういうことかというと、音楽を専攻して取得できる学位は大きく二つあって、一つが学士にあたる Bachelor of Arts (BA) や修士に当たる Master of Arts (MA)と、もう一つ Bachelor of Music (BM)Master of Music (MM) があります。

 何が違うかというとBAやMAはリベラルアーツ(教養科目)のなかで音楽の比重を高めているだけというパターンが多いので、音楽の科目が4割程度という学校もあり、そもそも入試の際に楽器の試験がない場合もあります。初心者からでも大丈夫と謳っている学校もあります。音楽教育や音楽学の分野もこちらに入ることが多いようです。つまり、楽器を専門的に学んで取得する学位ではないということです。

 一方BMやMMは日本でいう音大に近いです。レッスンを受け試験でも演奏し、理論や音楽史の授業もあります(この辺はBAやMAでもあると思いますが、比率が大きく違います)。私の学校だと、レッスンや卒試、室内楽だけで卒業に必要な単位の半分は取れるようです。Master というのも関係しているのかもしれません。師事したい先生が既に決まっていて学校を絞れているのであれば問題ないですが、学校から探そうという場合には学位にも注意してください。

 先ほど州立大学と私立大学という言葉が出ましたが、州立は日本でいう県立に近いニュアンスです。二つの大きな違いは学費と教育の質です。州立大学はその名の通り州の予算で運営されているので州内出身者は学費が優遇されており、州外や留学生の学費は州内の倍以上ということが普通です。しかも学校が出す奨学金もそこまで留学生が取りやすいということはない、という話を聞いたこともあります。あくまで噂なのでどうかはわかりませんが…。また、州立大学は一人の先生当たりの生徒数が多いらしく、きめ細やかな指導、教育になりにくいらしいです。学費は調べればわかりますがこっちはわかりません。学校に依る気がします。

 一方の私立大学の運営形式は日本と大きく変わりません。ただこちらは州立大学と比べ物にならないくらい学費が高いことが多いです。日本円で500万を超えているところも見たことある気がします。一年でこれです。なかなかハードルは高いです。その代わり奨学金は留学生でも関係なく優秀ならば出る(出やすい)というもあります。大学や本人の実力にもよると思うので断定は出来ません。学費が高い代わりに、こちらは先生一人当たりの生徒数が少ないことが多いらしいです。私は最初から私大は考えていなかったのでそこまで詳しくはわかりません。

 学費以外にも費用に大きく関わる問題があります。生活費、学校周辺の物価です。当然大都市になれば高額で、田舎に行けば安いです。ただ、田舎に行けば行くほど本番の機会は減りそうだし、安ければいいってものでもないのかな、という気はします。あと、おそらく無給だったりちゃんと申請すれば学外でも演奏は出来ると思うのですがそこも定かではないので、分かった段階でまとめたいと思います。

 学位と学費以外で大切なのは、入試の方法とTOEFLの点数と先生です。私の場合を見ていきます。

 私は最初から州立大学を探していたのですが、その理由は入試で自由曲をやっていくつか大学を受けたかったからでした。仕事をしながらの受験だったので、それぞれの大学に合わせて曲を練習する余裕はなく、同じデータが使えるところを探しました。大学によってはMP3をアップロードすればいいものもあれば、動画データが必要なところ、実際にその学校に行かなくてはならないところもありました。私大は大体独自の試験曲を設定していたので最初から候補から外し、録音データだけで良い大学に絞りました。

 TOEFLも重要です。入学の時点である程度の語学力を求められるのはアメリカの特徴かな、と思います。本当かどうかはさておき、ヨーロッパの音楽院に行った中には現地で語学を習得したという人もいますよね。あれ、冗談なんでしょうか?結構学校によって必要な点数に差があり、低いと61くらい、高いと100を超えます。ざっくりいうと、TOEFL iBT 61点は TOEICだと大体 600点くらい、 100点だとほぼ満点です。ネイティブでも 100点は難しいらしく、ハーバード大学レベルらしいです。ハーバードと同じ英語力を求められる音大とは一体。大学によっては締め切りまでに必要点を取れなくてもちょっとなら待ってくれるという話も聞きますが、おそらく危険です。

 ここまでつらつらと書いてきましたが、次の要素に比べれば今までの話など些末なものです。一番大事なこと、それは当然ながら先生です。留学したい、という気持ちがあるのは大切なことですが、その目的は自分の成長や目標を達成するためのはずです。そのための最大のファクターは間違いなく先生です。気になった演奏家がいれば学校を調べ、気になった学校があれば先生を調べましょう。私の場合、奇跡的にYouTubeである音源を見つけ、ぶったまげてすぐにこの人に習いたい、この人のような音を出したいと思いました。それまで日本で聞いたことがない音だったし、自分もこんな音で吹きたい、そしていつか日本に持ち帰りたいという目標になりました。

 その後旅行でアメリカに行き、その時にレッスンを依頼したところ快諾していただきました。そのレッスンで実際に聞く音にまた衝撃を受け、その人格、人柄、レッスン方にも感銘を受けました。この人に習いたい、という思いをさらに強くし、受験を決めました。というかもう決めてはいたのですが、迷いがなくなった、という方が正しいかもしれません。レッスンの最後に、先生に「僕は受かりますか?」と尋ねた時、先生が「受かると思うよ」と言ってくれたと時の安堵感と幸福感は今でも覚えています。

終わりに

結構な分量になりそうなので、今回はここで切ります。次は入試に必要なものややるべきこと、合格後のことなどについて書いていこうと思います。ここまでお読みいただきありがとうございました。もし質問等があればコメントやTwitterでも受け付けますのでご遠慮なくどうぞ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?