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企業理念2.0 現状分析編 最新企業理念マッピング

2012年11月18日発行 ロウドウジンVol.5 所収

 反社会人サークル『ロウドウジン』Vol.5では、戦後日本の諸制度の屋台骨であり、そして長いあいだそれについて議論することさえ困難であった「企業理念」について、いままでのイデオロギー対立を離れ、まったく新しい観点と前提から再検討することが不可欠だと考えた……と某ゲンロン雑誌風にはじめてみました。

 時は2012年、ポスト3・11を生きる我々が選んだテーマは……企業理念。それは企業が企業としての形を維持するための言葉。企業のコンプライアンスが再注目されている今だからこそ、企業理念の行く末に目を向けてみたい。

 ──企業理念2.0の世界へ、ようこそ。


 まずは「企業理念」について考えてみよう。あなたはCMで目にする有名企業の企業理念を知っているだろうか? 友人の会社の企業理念を知っているだろうか? おそらく、多くのひとの答は「NO」だ。しかし、いわゆる大企業には、ほぼ確実に企業理念が存在する。

 企業理念とはなにか。それは「企業や組織の目的や存在意義について、短くまとめたもの」として定義されている。別の言い方をすれば「なんのためにこの会社に集まっているのか、を明文化したもの」である。類似の概念として、他にも「経営理念/社是/社訓/クレド」などもあるが、ここでは「企業理念」という単語で統一したい。

 企業理念は様々な解釈が可能であるが、一般的に次の三つの要素から構成される。

・ミッション
 (使命、目的、役割、存在意義など)
・ビジョン
 (目標、夢、志、方向性など)
・バリュー
 (価値観、あり方、姿勢など)

 この三要素は『マネジメント』で有名なピーター・F・ドラッカーの著書『ネクスト・ソサエティ』の中で取り上げられている。さらに、ドラッカーはこの三要素以外はアウトソース可能だとも言っている。すなわち企業の独自性、その企業が他の企業と区別されるための要件は、まさしく企業理念にほかならない。

 また企業理念には、別の側面からも捉えられる。それは企業理念を受容する対象によって、次のように区分される。

・社会
・顧客
・社員

 ここに本来であれば直接的なステークホルダである「投資家」や「株主」が含まれないことは特徴的だ。また企業とは「営利を目的として、一定の計画に従って経済活動を行う経済主体」と定義される。すなわち、企業はその内部にいる社員とは無関係に存在しうる。企業理念に社員がターゲットとして含まれることは示唆的だ。企業理念には対外的な意義だけでなく、企業それ自身を維持するための内部統制的な意義も少なくないのだ。

 社内ニートの急増、早期退職制度という名のリストラといった諸問題の根源には、企業理念が横たわっている。時代の変質に、前時代型の企業理念が追従できなくなっているのだ。これからの時代を生きるうえで、どのような企業理念が必要なのか? そもそも企業理念は本当に必要なものなのか? 日本が日本2.0にアップデートするにあたり、特集を通じて、新しい企業理念のありかた「企業理念2.0」を模索する。

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企業理念を模式図にすると上図のようになる。一目瞭然の通り、3×3の合計9の要素で構成されていることがわかる。ミッションにも社会に対するミッション、顧客に対するミッション、社員に対するミッションがあるのだ。そのような複雑な欲望の集合体として企業は存在し、それを異なる第三者に伝達し共有するためのツールが企業理念だといえよう。

最新企業理念マッピング

 未来の企業理念について検討を開始する前に、まずは既存の企業理念を把握する必要がある。インターネットで会社情報が公開されている現代において、われわれが各社の企業理念を知ることはたやすい。上場企業を中心に企業理念を収集/マッピングし、企業理念市場のいまを解明する。

 さまざまな企業体やその他の団体の理念を内面的な「意識の高さ」と外面的な「実現度」の2軸で評価・分類を行った。

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やはりあからさまにウケを狙うようなものは新しい企業が多いが、社名ほどは堅さが求められないためか業種・年代に関わらず様々なパターンが散在している。それらの独自性は意外と低く、他社の企業理念と交換可能とも思われる。また、様々な企業理念をサンプリングする段階では、狭窄した視野で自己満足のみを追求したかの様な造語を駆使するケースも少なからず見受けられたが、考え出した当人以外理解できないような企業理念は中二病象限に自動的に収まる事となるだろう。

 本人の意識だけは高いが現実とは完全に乖離している「中二病」、神託を受けるかのように高い意識を体現している「預言者」、ただただ現実にまみれ地に足が着くどころか地面を舐めて暮らす「社会人」、意識も低く大業も成しえない「自己啓発本」の4象限というわけだ。

 しかしいずれの企業理念もマップ上のどこかに配置された点でしかなく、奥行きのない平面に囚われた力のない言葉に過ぎない。例示した中で唯一そこから解放への可能性を見いだせるのが、企業理念を敢えて設けていない「企業理念がないのが企業理念」とでも言うべき任天堂くらいのものであろう。

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