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ロウドウ Re:ビュー(日清食品 カレーメシ/まずりん『独身OLのすべて』)

2014年5月5日発行 ロウドウジンVol.8 所収

この社畜メシがすごい!

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日清食品 カレーメシ
2010年に販売開始したカップヌードルごはんの続編として2013年9月に発売された カップカレーライス。水を入れ電子レンジでチンするだけのお手軽さから好評なものの、売り上げはいまひとつ。それを受けて2014年4月にプロデューサ佐藤可士和をかついで改称し再デビュー。ぶっ飛んでいるシュールなCMで一躍人気商品となる。ゆるキャラ・カレーメシくんからは、日清UFOのヤキソバンを彷彿とさせる日清食品独特のDNAを感じられる。ジャスティス!

 日清のカレーメシは電子レンジで調理できる即席のカップライスであるが、他のインスタント食とは一線を画す特徴がある。薫りの強さである。

 匂いの質そのものは同じ日清の製品カップヌードルカレーとほぼ同等だが、拡散性は比べ物にならない。加熱を終えたあとはもとより、封を開けただけで周囲の空間をカレー色に染めるだけの匂いを発するのだ。

 残業時間の夜食としてこれ以上のものはない。あえて定時直後にカレーメシをかきこめば、開封してから食べ終わるまでの10分近い時間「俺はこれから残業を頑張る!」というアピールを多くの人間にすることができる。毎日毎晩カレーメシテロを敢行すれば、もはや国民食たるカレーの匂いはキミの体臭、フェロモンも同じ。オフィスラブだって自由自在だ。

 また、CMも特徴的で、レトロ調の力強いナンセンスぶりは一度見れば忘れられない。「インド人もびっくり」のフレーズで有名な1964年の特製ヱスビーカレーへのオマージュも繰り返し織り込むこのCM真似すれば、各時代各世代のカレー話が花開き、上司との精神的距離がグッと近寄ること請け合いである。

 現状その匂いで街を職場を席巻しているエナジードリンクを脅かすだけの魔力がカレーにはある。カレー味のレッドブルが登場する日も遠くはないだろう。

このOLまんががすごい!

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まずりん『独身OLのすべて』
バーグハンバーグバーグのWEBマガジン「オモコロ」に2010年10月掲載され話題となった4コマまんが。ゆるかわなタッチとアラサー女子の非モテ毒……という、最近良く聞くタイプのあれですが、まあ面白い。本作でヘッドハンティングされ、講談社モーニング⇒モアイで隔週連載。2014年3月に待望の単行本1巻が発売され、大ヒットとなっている。個人的には同作者の「ゲボちゃん」もおすすめ。

 不本意にも? 独身を貫いてしまっている30代のOL三人のダメながらも楽しく、エネルギッシュな日々を描いた人気マンガである。

 さて、このマンガの主人公であるノブ子達は負け組みなのであろうか。

 現在30代の大卒会社員はその多くが就職氷河期を潜り抜けていて、同世代の中では能力・意識ともに高いといえる。会社で仕事は十二分にこなし、それが終われば仲間同士で酒を飲み、非モテの発情という報われない恋を楽しむ……作中では人間関係の底辺として、あるいは怪物のように扱われてすらいる彼女たちはあくまで勝ち組の中での負け組だ。

 OLマンガの草分け、80年代のバブル期に連載を開始、作品自体も時代に対応・進化し、今も愛されているOL進化論は「どこにでもいる普通のOL」の日常を描いているということだが、そもそも今の時代OLとは本当にどこにでもいる普通の存在なのだろうか? その系譜を引き継いでいる独身OLのすべても同様で、人気作といっても若い世代へのウケ方は「あるある」という共感ではなく、在りし日を思う三丁目の夕日と同様のカテゴリに分類されているのはないだろうか。

 非正規雇用に甘んじるあなた。恋人、配偶者の居ないあなた。将来のイメージすらつかめないあなた。本当にあなたたちは、ノブ子達を心の底から笑うことができますか……?

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