チョコレート

K氏は仕事中に疲れが溜まってくるとチョコレートを食べる。その週は特に忙しく、月曜から尋常ではない量のチョコレートを食べていた。

水曜の夕方になり、K氏がチョコレートに手を伸ばそうとすると、残りが一欠片しかないことに気が付いた。

仕事は手が離せない状況で、あと数時間は買い出しに行く余裕もない。K氏は最後の一欠片を、いま食べるか、もう少し我慢してから食べるか悩んだ。しばらく悩んでいるとK氏はチョコレートになった。

上司が後ろを通った。

「さっさと決めないからそうなるんだよ。お前の悪い癖だよな。そういうところが仕事の結果にも出てくるんだ。こっちの欠片は俺がもらっておくぞ」

そう言って上司は、K氏が食べようか悩んでいた最後の一欠片のチョコレートを食べてしまった。すると上司もチョコレートになった。K氏のデスクの前にはチョコレートが二枚ある。つまり一枚はチョコレートになったK氏であり、もう一枚はチョコレートになった上司である。

その時、どこから入って来たのか一匹の野良犬がK氏のデスクの前を通り掛かった。犬はチョコレートを二枚とも咥えてどこかへ行ってしまった。

同じフロアにいた他の社員は、誰も一連の出来事に気付いていなかった。


めかぶは飲み物です。