これまでの自分にサヨナラ

金曜の夜、某駅前。

疲れたサラリーマンが若いストリートミュージシャンの前で足を止めた。

二十歳前後と思われるそのミュージシャンは、技術は拙いながらも、溢れ出る思いを周囲の空間に放出していた。サラリーマンはしばらく聞き入っていた。

歌う姿、または歌詞の内容にでも何か思うところがあったのだろう、先程まで死んでいたサラリーマンの目が輝き出した。

サラリーマンは、忘れていたものを思い出したかのように、誤魔化していた自分を受け入れる覚悟ができたかのように、力強く歩き出した。

数分後、アクセルとブレーキを踏み間違えた老人の車にはねられサラリーマンは即死した。

めかぶは飲み物です。