ある半端者の最期

Nはヤクザになりきれないチンピラである。いや、チンピラと言うのもチンピラに失礼な中途半端な人間であり、せいぜいチンピラ崩れとでも呼ばれれば御の字だ。

そのNがある日、町で老婦人とすれ違いざまに肩がぶつかり、因縁をつけた。Nは老婦人に悪態をつき始めた。

Nがババアだのクソだの足りない語彙力で精一杯の悪態をつき終えると、老婦人は何も言わずにいきなり、持っていた杖をNの急所部分に突き刺した。

Nは倒れ込んでウンウン唸った。Nが動けないでいると、老婦人は今度はNの頭を杖で何度も殴った。何度も。この言葉から何回ぐらいを想像するだろうか。10回?20回?老婦人は500回までは自分で数えていたが、その後は数えるのをやめ、Nが動かなくなるまで殴り続けた。

Nが気絶すると老婦人は去っていった。老婦人が去るのと入れ替わりで、餌不足のために山から下りてきた熊が現れた。

周囲にいた人たちは一斉に逃げ、倒れているNだけが残った。熊はNに近寄り、しばらく様子を見ていた。それからNの臭いを嗅いだり顔を舐めたりした。この動かない物体を警戒し、どう扱えばよいのか迷っているようだった。

そのような状態が15分ほど続いた後で、Nの意識が戻り始めた。Nが少しずつ体を動かすと、熊は驚いてNから離れた。Nが目を開けると、5メートルほど離れた場所で巨大な熊がこちらを見ている。周りに人間はいない。

Nは頭がぼうっとして全く状況を理解できないでいたが、いったい誰に去勢を張っているのか、熊に向かって「見てんじゃねえよ」と凄んだ。その瞬間、熊はNに襲いかかり、まず首から上を噛みちぎった。その後、胴体、腕、足と続いた。

これ以上語ることはない。

めかぶは飲み物です。