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はちべいポエム73

ひとがなぜ赦すのか
何十年も裁判の判決を不服として相手を恨み続けるひとがいる
恨み続けた末に、赦す人赦さない人に分かれる
だれが見たって、判断したって相手が悪い
ことはもう済んでしまっていて、悪いと判断されたものを
どこまでも追求し恨んでも解決には至らない
分かっていても、そうせざるを得ない
その感情の行き場がない

では、赦す人はなぜ赦すのか
相手を赦すことで、どうしようもなく苦しんでいる
自分を赦すことになるからだ
自分の心が悲鳴を上げている
自分の心の中に、赦せない相手とは別の
絶対に赦せない恐ろしい恨みの念みたいものが
本当の相手以上に自分の心に住み続け、自分を苦しめている
このことに耐えきれなくなってしまうからだ

赦せないひとの顔には苦しさが滲んでいる
自らの心がむしばまれ、生きる糧とさえなってしまっている

赦すひとの顔は穏やかだ
本当の意味で相手を赦すことはできなくても
自分と相手のあいだにしっかりとした境界線を定めて
自分の人生をまた始めようとする決意みたいものを感じる
大切なことは、そこからまた始めること
そこからしか始まらないと知り、
自分の大切なひとの分まで自分の人生を大切に生きること
そのことに気づいたから赦すのかもしれない