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スパイスの効いたクライム・サスペンス〜『インサイド・マン』

マンハッタンの銀行に強盗が押し入り、人質をとって立てこもる。交渉役の捜査官と銀行の会長から差し向けられた弁護士とが交錯し、事件は思わぬ方向へと展開していく……。

スパイク・リーが監督した作品であるからして、当然、単純なサスペンスもの、アクションものであろうはずはありあせん。ただ脚本に無理を感じて傑作というほどの出来栄えとは思えませんでした。いつからか米国映画は「お話作り」に必要以上のエネルギーをそそぎすぎるようになった気がしないでもありません。

もちろん監督や脚本家の才気を感じさせるスパイスが随所に効いているのも事実。人質にした子供が、凶悪犯罪を犯すほどに得点がアップするテレビゲームをやっているのをみて犯人が説教を垂れるブラックユーモア。犯罪のカムフラージュ工作にiPodが一役買っているのも面白いし、イスラム系やヒスパニック系に対するニューヨーク市警の人種差別的な言動を盛り込んで、同時テロ以降の米国内の空気をやんわり皮肉っているのはさすがです。
犯行の進展と人質が解放されたあとの事情聴取をカットバックする編集も見事に決まっています。

デンゼル・ワシントン扮する捜査官のスケベぶりには少し違和感をおぼえましたが、ジョディ・フォスターの嫌みな女性弁護士役はハマっていると思います。

*『インサイド・マン』
監督:スパイク・リー
出演:デンゼル・ワシントン、ジョディ・フォスター
映画公開:2006年3月(日本公開:2006年6月)
DVD販売元:ジェネオン・ユニバーサル

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