諧謔精神に満ちた著者初めての小説〜『すべての鳥を放つ』
◆四方田犬彦著『すべての鳥を放つ』
出版社:新潮社
発売時期:2019年1月
四方田犬彦初めての小説作品。第一作とはいえこれまで多くの著作を物してきた四方田のこと、様々な仕掛けとヒューモアを盛り込んで、堂に入った作品に仕上げています。
主人公が山陰地方から東京の一流大学(作中では東都大学となっている)に入学する──という設定には漱石の『三四郎』を想起する読者も少なくないかもしれません。
もっとも1972年から説き起こされているので、主人公・瀬能明生の身にふりかかる出来事