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本読みの記録(2019)

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ブックレビューなど書物に関するテキストを収録しています。対象は2019年刊行の書籍。
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2019年2月の記事一覧

自分が自分らしくあることを肯定できる唯一の知性〜『天然知能』

◆郡司ペギオ幸夫著『天然知能』 出版社:講談社 発売時期:2019年1月 人工知能。自然知能。天然知能。本書ではこの三つの知能のあり方を比較衡量します。そして天然知能だけが「自分で見ることのできない向こう側、徹底した自分にとっての外側を受け入れる知性であり、創造を楽しむことができる知性である」ことを示すのが本書のコンセプトです。 郡司は、世界に対処する仕方の違いから「知能」のあり方を三つに分類して話を進めます。 人工知能。……自分にとって有益か有害かを決め、その評価のみ

〈参加型権力〉に抗するために〜『やっぱりいらない東京オリンピック』

◆小笠原博毅、山本敦久著『やっぱりいらない東京オリンピック』 出版社:岩波書店 発売時期:2019年2月 2020年東京オリンピックについては、招致活動の段階から反対意見が少なくありません。開催が決まった後も返上を主張する声があちこちから聞こえてきます。 本書は岩波ブックレットの一冊で、五輪が日本社会に及ぼしている/及ぼすであろう影響についてしっかり考える基本的な材料を提供するものです。共著者としてクレジットされている小笠原博毅は文化研究、山本敦久はスポーツ社会学を専門と