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本読みの記録(2016)

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ブックレビューなど書物に関するテキストを収録。ブログ「ブックラバー宣言」に発表したものをベースにしていますが、すべての文章について加筆修正をおこなっています。対象は2016年刊行…
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#佐藤優

市民の政治的実力で対抗する〜『安倍晋三が〈日本〉を壊す』

◆山口二郎編『安倍晋三が〈日本〉を壊す この国のかたちとは─山口二郎対談集』 出版社:青灯社 発売時期:2016年5月 安倍政権を批判的に検討する対論集はすでにいくつか刊行されていますが、本書は政治学者の山口二郎が「抵抗と対抗提案を打ち出す」べく行なった対談の記録です。相手は、内田樹、柳澤協二、水野和夫、山岡淳一郎、鈴木哲夫、外岡秀俊、佐藤優。 結論的にいえば、どこかで聴いたようなやりとりが多く、新味には欠ける内容というのが正直な感想。その中であえて言及するなら、内田と佐

昭和史を貫く「悪の構造」〜『21世紀の戦争論』

◆半藤一利、佐藤優著『21世紀の戦争論 昭和史から考える』 出版社:文藝春秋 発売時期:2016年5月 昭和史に詳しい作家・半藤一利と元外務省主任分析官の佐藤優による対談集。書名からもわかるように、ここで議論されているのは戦争を軸としてみる昭和史です。具体的には、七三一部隊、ノモンハン事件、終戦工作、軍事官僚機構などが検証・考察の対象となっています。 歴史的事実から思考を組み立てようとする二人の対話は「神は細部に宿る」の格言を地でいくがごとく時に細かな議論にまで立ち入りま

自己決定の実現に向けて〜『沖縄は未来をどう生きるか』

◆大田昌秀、佐藤優著『沖縄は未来をどう生きるか』 出版社:岩波書店 発売時期:2016年8月 大田昌秀・元沖縄県知事と久米島に母方のルーツを持つ作家・佐藤優との対談集。雑誌『世界』2009年1月号号から2010年年9月号に掲載されたものがベースになっていますが、末尾には2016年の対話が収録されています。 江戸時代の琉球処分から太平洋戦における沖縄戦、戦後の米軍占領時代から日本復帰にいたる歴史をたどりながら、沖縄における独立論の系譜や復帰運動のあらまし、中央政府との関係な