マガジンのカバー画像

本読みの記録(2016)

80
ブックレビューなど書物に関するテキストを収録。ブログ「ブックラバー宣言」に発表したものをベースにしていますが、すべての文章について加筆修正をおこなっています。対象は2016年刊行… もっと読む
運営しているクリエイター

#内田樹

市民の政治的実力で対抗する〜『安倍晋三が〈日本〉を壊す』

◆山口二郎編『安倍晋三が〈日本〉を壊す この国のかたちとは─山口二郎対談集』 出版社:青灯社 発売時期:2016年5月 安倍政権を批判的に検討する対論集はすでにいくつか刊行されていますが、本書は政治学者の山口二郎が「抵抗と対抗提案を打ち出す」べく行なった対談の記録です。相手は、内田樹、柳澤協二、水野和夫、山岡淳一郎、鈴木哲夫、外岡秀俊、佐藤優。 結論的にいえば、どこかで聴いたようなやりとりが多く、新味には欠ける内容というのが正直な感想。その中であえて言及するなら、内田と佐

若者におくる生き延びるための知恵〜『転換期を生きるきみたちへ』

◆内田樹編『転換期を生きるきみたちへ ──中高生に伝えておきたいたいせつなこと』 出版社:晶文社 発売時期:2016年7月 社会のさまざまな分野で綻びが目立つようになってきた昨今、既存の考え方では通用しない時代がやってきた、そのように言う人が増えてきました。 人はとかく自分の生きている時代を歴史的に過大に意味づけたがる習癖がありますから、そうした紋切型の認識には注意が必要かと思いますが、とにもかくにも今や「歴史的転換期に足を踏み入れた」のだと思う人が多いことは間違いありませ

苦い現実を直視して考える〜『「戦後80年」はあるのか──「本と新聞の大学」講義録』

◆一色清、姜尚中、内田樹、東浩紀、木村草太、山室信一、上野千鶴子、河村小百合著『「戦後80年」はあるのか──「本と新聞の大学」講義録』 出版社:集英社 発売時期:2016年8月 朝日新聞社と集英社による連続講座シリーズ「本と新聞の大学」第4期の書籍化。現代思想、憲法学、社会学、財政金融論の立場から、戦後70年の今が抱える問題と未来への展望を考えるという趣旨です。 内田の〈比較敗戦論〉は、白井聡の『永続敗戦論』を下敷きにして他の「敗戦国」の戦後のありようを問いかけたもの。そ