社会学から文学へ、透明な膜の向こうに広がる世界〜『ビニール傘』
◆岸政彦著『ビニール傘』
出版社:新潮社
発売時期:2017年1月
まるでゴダールの映画のように、自分と関わりをもった人々にまつわる短い挿話を脈絡もなく連ねた『断片的なものの社会学』は不思議な魅力を放つ本でした。今どきの社会学者はこんな本も書いちゃうんだと肯定的な驚きをもって読み終えた人は多かったでしょう。そこからは安易に分析や解釈を許さない現実社会の豊かさや複雑さのようなものが鈍く光って垣間見えるようでした。
本書は、その社会学者・岸政彦による初の小説集。芥川賞の候補に