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本読みの記録(2017)

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ブックレビューなど書物に関するテキストを収録しています。対象は2017年刊行の書籍。
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#松岡正剛

編集の達人による知の万華鏡〜『謎床』

◆松岡正剛、ドミニク・チェン著『謎床 思考が発酵する編集術』 出版社:晶文社 発売時期:2017年7月 起業家であり情報学の研究者でもあるドミニク・チェンが編集工学を提唱する松岡正剛と語りあう。オシャレな横文字コトバが乱舞し、現代の高度情報化社会を語るにあえて古典的なテクストが参照される。──縦横無尽、変幻自在な言葉の交歓。さながら知の万華鏡のような対話が展開されています。 華厳思想が描く重々帝網とインターネットに相似を見出したり、空海とローレンス・レッシグを結びつけたり

私たちは多重性のなかを生きてきた〜『日本問答』

◆田中優子、松岡正剛著『日本問答』 出版社:岩波書店 発売時期:2017年11月 法政大学の総長で歴史学者の田中優子と編集工学を提唱する著述家の松岡正剛。二人の碩学が日本の歴史をめぐって問答を交わしました。最近、単行本のみならず新書でも増えてきた対論集のなかでは出色の面白さです。 両者に共通しているのは、日本の特徴を「デュアル」な構造に見出していること。〈天皇/将軍〉〈公家/武家〉〈内/外〉〈ワキ/シテ〉〈神/仏〉〈隠す/顕わす〉……などなど様々な局面におけるデュアルなも