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本読みの記録(2017)

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ブックレビューなど書物に関するテキストを収録しています。対象は2017年刊行の書籍。
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2018年11月の記事一覧

新聞記者の弾けた文体を楽しむ〜『仕方ない帝国』

◆高橋純子著『仕方ない帝国』 出版社:河出書房新社 発売時期:2017年10月 著者の執筆当時の肩書は朝日新聞の政治部次長。肩書とのギャップを感じさせる今風のカジュアルな弾けた文体がひとつの持ち味といえるでしょうか。もっとも内容以前にそこが非難の的になったりもしているようですが。 本書に収められた文章の論題は政治問題にとどまりません。あえてキーワードを一つピックアップするなら「自由」ということになるでしょうか。自由をめぐって自由を求めて、思考し行動する著者のすがたが随所に

詩人がパフォーマーに近づくとき〜『対詩 2馬力』

◆谷川俊太郎、覚和歌子著『対詩 2馬力』 出版社:ナナロク社 発売時期:2017年10月 谷川俊太郎と覚和歌子による詩のキャッチボール。連句・連歌の伝統をもつ日本の詩歌の歴史を振り返れば、連詩・対詩のような企ても自然なものと考えられ、実際、過去にもいろいろな試みがあったようです。ただ現代詩の世界で書籍化できるレベルの完成度に達したのは本書が初めてかどうか知りませんが珍しいのではないでしょうか。 谷川が、狭い読者層を対象にした難解な現代詩の世界に対する違和感から出発したこと