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本読みの記録(2017)

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ブックレビューなど書物に関するテキストを収録しています。対象は2017年刊行の書籍。
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2018年5月の記事一覧

編集の達人による知の万華鏡〜『謎床』

◆松岡正剛、ドミニク・チェン著『謎床 思考が発酵する編集術』 出版社:晶文社 発売時期:2017年7月 起業家であり情報学の研究者でもあるドミニク・チェンが編集工学を提唱する松岡正剛と語りあう。オシャレな横文字コトバが乱舞し、現代の高度情報化社会を語るにあえて古典的なテクストが参照される。──縦横無尽、変幻自在な言葉の交歓。さながら知の万華鏡のような対話が展開されています。 華厳思想が描く重々帝網とインターネットに相似を見出したり、空海とローレンス・レッシグを結びつけたり

大作家が自費出版で出した俳句の本〜『句集ひとり』

◆瀬戸内寂聴著『句集ひとり』 出版社:深夜叢書社 発売時期:2017年5月 作家の瀬戸内寂聴が95歳にして初めて出した句集です。「死んだ時、ごく親しい人だけに見てもらえればいい」ということで自費出版されたものらしいですが、めでたく第6回星野立子賞を受賞しました。 巻末には俳句に関連した人々との交遊録的なエッセイが収められていて、大作家と俳句の関係にまつわる楽屋話をも知ることができる構成になっています。 ちなみに句集の標題は一遍上人の言葉を意識したものです。 「生ぜしもひ