マガジンのカバー画像

本読みの記録(2017)

73
ブックレビューなど書物に関するテキストを収録しています。対象は2017年刊行の書籍。
運営しているクリエイター

2018年4月の記事一覧

悪人の心には情を、絶望する者には希望を〜『深読み日本文学』

◆島田雅彦『深読み日本文学』 出版社:集英社インターナショナル 発売時期:2017年12月 文学とは実学である。エセ文学的な「言葉の悪用」をする人たちを批判するのが、文学の本来の役割である。文学は神話という最も古い形式から出発して、焼き直しを繰り返しながら時代状況に沿ったアレンジを重ねてきた。 ……様々なアングルから文学に光を当て、その特長を言挙げすることから島田雅彦は始めます。期待感を抱かせるに充分な序章。結論的にいえば最後まで私を愉しませてくれた本でした。近頃出た文学論

国民を監視する権力を監視する必要〜『スノーデン 日本への警告』

◆エドワード・スノーデン、青木理、井桁大介、金昌浩、ベン・ワイズナー、マリコ・ヒロセ、宮下紘著『スノーデン日本への警告』 出版社:集英社 発売時期:2017年4月 アメリカ中央情報局(CIA)、アメリカ国家安全保障局(NSA)などの元情報局員だったエドワード・スノーデン。2013年に米国政府が無差別監視をしている実態を内部告発し、世界を震え上がらせたことは未だ記憶に新しい。その後はロシアに滞在し、2014年には米国のNPO「報道の自由基金」理事に就任しました。 本書は20

易しいけれど内容は深い!?〜『日本一やさしい「政治の教科書」できました。』

◆木村草太、津田大介、加藤玲奈、向井地美音、茂木忍著『日本一やさしい「政治の教科書」できました。』 出版社:朝日新聞出版 発売時期:2017年7月 4月、学校では新年度が始まると新しい教科書が配られます。小学生の頃は勉強がとても好きというほどではありませんでしたが、新品の教科書の匂いが私は好きでした。ページを繰るたびに鼻孔にとどく、あの教科書の匂いは子どもの私にとって生活の一つの節目である4月を象徴するもののように感じていたものです。 前置きはこれくらいにして本書の話を始