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本読みの記録(2018)

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ブックレビューなど書物に関するテキストを収録しています。対象は2018年刊行の書籍。
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2018年2月の記事一覧

民主主義や合理性への憧れ〜『「親米」日本の誕生』

◆森正人著『「親米」日本の誕生』 出版社:KADOKAWA 発売時期:2018年1月 日本の親米意識さらには対米従属を相対化し、そこからの脱却を促す言説は多く提起されています。対米従属の構造や意識はもちろん敗戦後、歴史的に形成されたものです。そうした事態を批判的に論評する場合、主として政治的・軍事的な文脈において問題化されるわけですが、むろん話はその次元にとどまるものではありません。私たちの日常生活全般においてアメリカ化は深く浸透したといえます。 米国への憧れと嫌悪、それ

デモクラシーとは自らを問うもの〜『欲望の民主主義』

◆丸山俊一+NHK「欲望の民主主義」制作班著『欲望の民主主義 分断を越える哲学』 出版社:幻冬舎 発売時期:2018年1月 NHKが2017年4月に放送したBS1スペシャル「欲望の民主主義〜世界の景色が変わる時〜」を書籍化したもので、6人の学者たちの談話を中心にまとめています。 登場するのは、ヤシャ・モンク(政治学)、ジョナサン・ハイト(社会心理学)、シンシア・フルーリー(政治哲学、精神分析学)、マルセル・ゴーシェ(政治哲学)、ジャン=ピエール・ルゴフ(社会学)、マルクス

英国にみる「政府の失敗」とその改革〜『議院内閣制』

◆高安健将著『議院内閣制──変貌する英国モデル』 出版社:中央公論新社 発売時期:2018年1月 日本の統治機構が英国の議院内閣制をモデルとしてきたことはよく知られています。また1990年代に行なわれた政治改革ももっぱら英国に範を求めたものでした。そればかりか英国の議院内閣制は日本だけでなく各国から理想的な政治モデルと見られてきました。 では、実際に英国の議院内閣制は日本が見習うべき模範的なものとして機能してきたのでしょうか。当然といえば当然ですが、万能的な政治システムな