なんなん テキスト 0
中村ぎん造「どーもー なんなんです」
中山きん蔵「彼が中村で、ぼくが中山です」
ぎん「中村、中山ですから、なかなかですけど言いにくいでしょ? だからなんなんです」
きん「なんなんでやらして貰ってます」
ぎん「本名も違うんですけどね」
きん「本名、違うっている?」
ぎん「さあー? ところでさ、明日、明日ね、明日だよ。朝起きたらおにぎりに成ってたら、どうする?」
きん「え!?」
ぎん「どうする? 考えて」
きん「す、すごいこと言いましたねぇ」
ぎん「どうするって、言うんだよ!」
きん「何、なに、なに?」
ぎん「もしもーしッ? 明日、君がおにぎり成っていたらどうしますか?」
きん「おにぎりに? えっ? 無理、無理、無理」
ぎん「君が、タオルに包まれて、赤ちゃん用ベッドに寝かされたおにぎりだったらどうるするって考えて」
きん「タオルに包まれているんだ。赤ちゃんなんだ…」
ぎん「じゃあさ、高校生になったある日のおにぎりの自分でもいいよ」
きん「高校生に成長したんだ…。おにぎりなのに16歳も歳経ったんだ」
ぎん「もうっ! 夜、タオルケットを掛けて寝るだろう。 朝になったら、おにぎりになっていた。朝もタオルケットに包まれて目覚めるじゃないか」
きん「タオルケットで寝てるけど…、のりに包まれてないんだ」
ぎん「タオルケットが朝に成って、のりに成ってるなんてないだろう!? 見たことあるか?」
きん「ないよ。ないけど…、朝起きて、おにぎりに成っていたこともない」
ぎん「当たり前だろう。ぼくはおにぎりとコンビを組んで漫才をしたいと思ったことはない。人間だった君が、おにぎりに成るかもしれないと思っているんだ」
きん「もう、ぼくはおにぎりなんだ?」
ぎん「さあ、どうする? おにぎりに成った君は」
きん「そんなの考えたこともねーよ!」
ぎん「じゃあ地震保険とか入るなよ。これから起こるかもしれない災害に対して、保険とか備えとかするなよ!」
きん「はい? はいはいはい」
ぎん「もし明日、地震とか起きて、お前一人困っていてもぼくは君のことなんか見向きも助けてもやらないからな。ぼくは地震保険が下りて助かるから。あと明日、君がおにぎりに成っても、見て見ぬふりするからな」
きん「まあ、まあ、……」
ぎん「それでいいのか? おにぎりに成ってもいいのか? 考えろよ」
きん「考えるよ。考えます」
ぎん「考えろよ。それでいいのか!?」
きん「万が一、おにぎりに成っていたら」
ぎん「万が一、おにぎりに成っていたら?」
きん「おにぎりでしょ? 万が一に、おにぎりに成っていたら…」
ぎん「どうるする? どうする? どうする?」
きん「まず、なんでおにぎりに成ったのかなー、て考えるよ」
ぎん「あーベタ。なんで、なにが切っ掛けでおにぎりに成ったか考える?」
きん「理由探しますね」
ぎん「理由ねー。昨日、バイト行った?」
きん「行った」
ぎん「行ったかぁ。行った先でなにかあった?」
きん「なにかあったかぁ?」
ぎん「なにかあったから、おにぎりに成っちゃったんでしょ?」
きん「なにか…、なにか…、なにか…?」
ぎん「なにかバイト先であったでしょ? 驚くようなこと、普段と違うこと」
きん「あっ…、あった! 時給が50円上がった」
ぎん「そんなことは、どうでもいい」
きん「どうでもいいんだ。どうでもいい?」
ぎん「まず考えるのは、具がなにかなー? だろ」
きん「そこ!?」
ぎん「そこだよ。そこに決まってるじゃん。普通に考えて、コンビニにおにぎり買いに行くじゃん。おにぎりの棚の前で、おにぎりを選ぶ基準だよ」
きん「そこでは…」
ぎん「おにぎりを見て、おにぎりが昨日なにやってたか、昨日なんだったか気にするやつ居ねぇじゃん」
きん「まーね、そうね」
ぎん「普通は具はなにかなー、でしょ?」
きん「棚の前で…」
ぎん「おにぎりの具はなにがいい?」
きん「具…、具ねぇ…、シャケかなぁ?」
ぎん「わーっ! おろかしいねー。浅はかだねー。シャケって言ったよ」
きん「えーっ。なに? なにが悪いの?」
ぎん「シャケとか言う時点で、根本的な危機管理に問題があるね。ぜんぜん違う。リアルに考えられてないもの」
きん「えっ? リアルに考えられる人はシャケ選ばないの?」
ぎん「シャケって言葉はでない」
きん「えっ、えっ? えー--っ。…じゃあコンブ?」
ぎん「ア、ハハハ。お母さんの電話番号教えてくれる?」
きん「何でだよ! なにがウチのお母さんと話すことがあるんだよ」
ぎん「どっからなのか聞くから。どっから過ちが始まったか聞くから」
きん「過ちっ! おれの人生、間違っちゃった!?」
ぎん「シャケだ、コンブだって。シャケ、コンブはよく考えたら違うでしょ?」
きん「んーーーっ…。違う…、違った!! 梅、梅だ!!」
ぎん「えーーーっ!! 梅!! 結局、…弁が、…弁が、…心臓の弁が苦しい……」
きん「結局、なに!! なんなの!? リアルに考えたらなにがおにぎりの具?」
ぎん「特選トロサーモン」
きん「シャケじゃん!! トロサーモンはシャケじゃん!!」
ぎん「コンビニ行って、シャケと特選トロサーモン両手に持って、リストラされた50過ぎのおじさんが居るレジに行って、二つとも投げつけて、どっちもシャケじゃん、て言ってこいよ!」
きん「言えるか!」
ぎん「お前な、そんなこと言ってるとバチが当たって、明日の朝、おにぎりに成ってるぞ」
きん「いいかげんにしろ」(終わり)
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