もう一人の相棒
今日こそは、と思い立った日だった。
しかしながら僕は、どうにもいつもと変わらない作業ばかりを繰り返してしまった。
もうこの海にも飽きた頃だからと、
地図を広げて航路をチェンジしようと思って色々やっていたんだ。
ようやく天候も良くなり、次の島へと向かえそうで良かった。
すっかり忘れていたはずのことを思い出した。
夢だったかもしれないけど確かに現実に会った人だったよな
あの人は僕にどうして林檎をくれたんだろう。
どうしてもあの蒼い目が気になって眠れなかったことが何日かあった。
やっと忘れることが出来ていたというのに、また浮かび上がってしまった。
相棒が小さい背で海を眺めている背中が、この部屋の窓から見えている。
僕はこの景色が好きだ。
おっちょこちょいだからこないだみたいに海に落ちなければいいけど。。
相棒は僕の視線に気付いたのか、こちらへくるっと振り向いて
部屋の戸を開き入ってきた。
「お疲れでしょうからお早めにお休みなさって下さい」
相棒がそう言って小さな体で僕を見上げた。
まだ昼間なのによくわからない気遣いだけど、こういうところが心地が良かった。
「ありがとう。一緒に昼ご飯を食べよう」
僕はそう返して、共にキッチンへと向かった。
次の街へ降りたら、またあの人がいるような気がした。
これまでいくつもの国に降り、数えきれない人たちと出会ってきたというのに、
なぜこんなにもあの人のことが引っかかるのか。
案の定、島へ降りると遭遇した。
その人は僕を覚えてるのかどうなのか微妙な表情だった。
「また会ったな」なんて、男みたいな喋り方をする。
しかし女性とも見えない不思議な人だ。
いつの間にか、僕と相棒に加えて、その人が船の一員に加わった。
何かが起こるのに理由なんて要らないと思う。
僕にも何故だかわからないけど、自然の流れというやつなのだろう。
名前を聞いて、握手をして、
それでもずっと前から知っているような気がした。
海を渡るにはその人は、あまりにも突拍子もないことばかり披露してくる。
サーカスにでも入ればいいのに。
僕は心のどこかで、とても嬉しい気持ちになっていた。
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