ダンボール戦機という作品【執筆:のり】

【ダンボール戦機とは】

近未来、強化ダンボールが発明され、物流に革命を起こしました。しかし強化ダンボールは、やがて「中で手乗りサイズのロボットを戦わせるための箱」として使われるようになり、この手乗りサイズのロボット「LBX」が爆発的に普及していきます。そういった世界におけるお話です。
まあこのあたりの設定は何でもカードゲームのデュエルで解決するのと同じような世界観ですね。ダンボールという名前はそこから来ているのか、と驚きますよね。

全3作あり、順に「ダンボール戦機」「ダンボール戦機W」「ダンボール戦機WARS」です。
結論を先取りして言えば「ダンボール戦機WARSだけは見ろ」です。

夕方に放送されていた子供向けアニメではあるものの、ロボット物として大人でも楽しめる魅力が多く詰まっています。時折出てくる「子供向け」感にさえ目をつぶれば、それなりに面白いと思える大作ですし、子供向けにありがちな冗長な展開や(大人から見れば)寒いやり取りなども抑えめになっています。というか、同時期に流行ったイナズマイレブンなどに比べ、そういった子供向け要素を抑えめにしたせいで子供人気があまり伸びなかった感じがします。ですから「どうせガキ向けだ」と侮っていると案外損をしますよ。
声優陣や戦闘シーンはオタクアニメと遜色ないどころか、完全に平均的なレベルを上回っています。
それに子供向けのキレイゴトも一概に切り捨てられるものではなく、「そういえばこのテーマに答えを出さないまま大人になってしまったな」という気づきも意外とあるのではないでしょうか。
今回の記事では、このダンボール戦機シリーズの布教を行っていこうと思います。

【ダンボール戦機(無印)】

全44話
まずは3つの作品について、軽く概要を語ります。
お父さんが作ったLBXというロボットと、息子である主人公が関わっていくという王道のロボットものです。ストーリーの大筋こそ高尚なテーマや問いかけを含んでいますが、ミクロな展開はかなり子供向けです。次々と出てくる噛ませ犬のような敵キャラを、道徳的なパワーで上回って倒していきます。
・あらすじ
主人公のLBX大好き少年、山野バンは怪しげな女から謎のLBXを託されます。それ以降、バンは世界を揺るがす巨大な陰謀との戦いに巻き込まれていくことになります。

【ダンボール戦機W(ダブル)】

全58話 長すぎ
ダブルというタイトル通り、ダブル主人公になっています。前作主人公の山野バン、新主人公の大空ヒロの2人タッグが主人公という形になります。無印よりかは子供向け感が弱まります。世界を混乱に陥れる陰謀を止めるべく戦う話なので、まあアニメとして致命的につまらなくはならないですね。ただ長いです。とにかく長いです。登場機体が多くてバラエティは豊かなんですが、話が長すぎるのでダンボール戦機によほどハマらない限り見なくていいと思います。
・あらすじ
前作から1年後、再び謎の勢力によるテロリズムが始まります。山野バンはLBXの天才的能力を持った少年、大空ヒロとともにこれを止めるために奔走します。

【ダンボール戦機WARS(ウォーズ)】

全37話
必見。
無印、ダブルは見なくても結構ですが、ウォーズは結構大人向けの味付けがされたストーリーになっていて、戦闘シーンや機体デザインも一気にミリタリー色に変わった作品なので、大人「でも」ではなく、大人「が」楽しめる作品です。見ることをお勧めします。前2作品とのストーリー/キャラ的なつながりはなくなり、今度はLBX操縦者の養成学校が舞台。世界から戦争をなくすべく、生徒たちは仮想国家に分かれてLBXで戦い、戦争のシミュレーションを行っています。学園+戦争という2ジャンルにまたがった魅力を存分に堪能できます。ただ、ところどころに子供向けアニメ感というのがやはり顔を出してはいますね。
・あらすじ
前作からさらに数年後、LBXは今や世界に不可欠な存在となりました。LBXプレイヤー、瀬名アラタはついに憧れだったLBX養成学校の名門に入学します。しかしそこでアラタを待っていたのは、直径10㎞のジオラマで行われるLBXを使った疑似戦争と、完全実力主義の学び舎でした。

【戦闘シーンの完成度】

アニメダンボール戦機の強みとして、戦闘シーンの完成度が上げられます。ダンボール戦機の戦闘シーンは基本的に3Dグラフィックスで描かれているのですが、不思議なことに全く違和感がありません。
おそらく、飛び散る火花や土煙などの効果や、機体の挙動などの細かい描写にかなり注意して作られています。リアルさからかけ離れた作画の甘えは、どれだけ些細でも不自然さとして目につきます。3Dアニメでは特に不自然な動きが目立ちやすいのですが、ダンボール戦機ではそういったものの払拭を重視しているのでしょう。

戦闘シーンのクオリティは、マイナス要素の少なさにとどまりません。LBXが対峙する構図や武器の演出の仕方、カメラアングル、LBXの機体の動き方など、スピード感満載で心が躍ります(特にWARS)。高い機動力を持った機体が多いので、アクロバティックに戦うシーンなどもあって全く見飽きないですね。この戦闘シーンだけでも、バトル好きは必見ものです。

【機体紹介】

ロボットアニメの大きな魅力が、登場するマシンや機体のデザインです。このデザインは広義で、物語における立ち位置という意味も含みます。
そこで、ダンボール戦機の機体(LBX)についてもその面白さがいかんなくてんこ盛りになっているということを知っていただくべく、いくつか機体をピックアップして概要を紹介しようと思います。数が多めなのと、著作権関係が面倒なので画像はご自身で検索してください。申し訳ありません。

~無印~
無印の機体は正直あまり好きではないですね。この頃はまだ子供向けアニメの色が強く、機体も装飾やコンセプト重視でデザインされているので、戦うロボには見えないです。それを踏まえた上でも秀逸なデザインをしたLBXはいくつかあります。
・ルシファー
敵組織と結託する大企業の御曹司である神谷コウスケが使用する機体。物語に特別影響を与えた印象はありませんが、とにかく機体が神々しくてかっこいいです。
・ジョーカー
不良の仙道ダイキが使用する機体。ピエロのコンセプトがよく表現された、いい味を出してるロボットです。メカと奇術という相反するものを1つにまとめた矛盾的デザインがとてつもなく惹かれますね。
・プロトゼノン
「序盤の強敵、終盤の仲間」ポジの海道ジンが後半で使う機体です。これはゼノンという後に登場するLBXの試験機なんですが、こちらの方がメカ感が強く、かっこいいデザインをしています。
~ダブル~
ダブルの機体もまだ子供向けの色が強いですが、多少ロボットに寄ったものが多くなった印象があります。中には無印の登場機体がメカ感を増して進化したものなどもあり、戦闘シーンになると結構かっこいいです。
・イカロスゼロ、イカロスフォース
ダブル主人公が宇宙空間での戦闘で使用した2体1組のLBXです。細身の体と大きな翼というデザインが高機動型らしくていいですね。
・ミゼルオーレギオン
みんな大好き「作中最強の機体」です。人類を最適化しよう(滅ぼそう)と企む敵の人工知能ミゼルがLBXに乗り移った機体です。ちっちゃいロボに乗り移っても何もできんだろ。この世のものとは思えない、宝石が装甲を突き破って飛び出してるような見た目をしています。そのくせ飛行形態への変形ギミックもあり、何から何まで歪な魅力にあふれています。武器もかっこいいですね。
・オーディーンMK2
主人公、山野バンの使用機。無印のオーディーンという機体をもとに作られた進化版。真っ白な見た目と空中戦最強という性能、飛行形態への変形など、スタイリッシュでかっこいい要素が多く盛り込まれています。
~ウォーズ~
ウォーズのLBXは前2作と打って変わり、あまり装飾などがされていない「兵器としてのロボット」っぽいデザインになっています。私が「ウォーズは大人でも楽しめる」と主張する要因の一つは、こういった機体デザインにもあります。
・ガウンタ=イゼルファー
仮想国「ロシウス」のエース、法条ムラクが操縦するLBX。特別機体というわけではなく、ロシウスの量産機ガウンタを極限までカスタマイズしたLBXです。シャア専用ザクに近いですね。海賊の帽子みたいなものを装着していて、操縦者含め貫禄がものすごいです。一見でっぷりしていてダサいんですが、なぜかかっこよく見えてきてしまう謎の魅力を持ったマシンですね。
・グルゼオン
謎のテロリスト「バンデット」のボス格(?)LBX。ツヤがある黒色の機体で、ヤギのようなツノが生えている細身の機体です。刃が赤く光る大鎌が使用武器なので、シルエットは死神や悪魔そのものですね。それをメカに落とし込んだという点でも秀逸なデザインをしており、滅茶苦茶かっこいいです。ダンボール戦機を知らない人が見てもかっこいいと思えるのではないでしょうか。

【まとめ】

結局のところ子供向け感が否めないのと、話数が多いという2点が主なハードルだと思います。ただ、ダンボール戦機というのはそれを踏まえてなお有り余る魅力がある作品です。
まあせめてダンボール戦機WARSの最初の2~3話くらいは試しに見ていただけると幸いです。意外と面白い世界観しているな、と感じると思います。
以上、個人的に過小評価されていると感じたダンボール戦機の布教でした。

【執筆者情報】

名前:のり
好きなアニメ作品はエヴァ、冴えカノ。レッドブルに漬かりながら生活しています。

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