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夢と現実の狭間で揺れる起業のお伽話①

メロンの甘い夢と苦い現実(資産と資産に見える負債の話)

日暮里という町に、ぼんたとあずきという夫婦が住んでいました。二人とも、他人の成功や豊かさが羨ましくて、自分も同じようになりたいという強い願いを持っていました。

ぼんたとあずきは青果店で成功しようと頑張っていましたが、うまくいきませんでした。そこで、ぼんたは銀座で高級フルーツパーラーを経営する社長に相談しに行きました。

社長は言いました。「日暮里では高いフルーツは売れないよ。銀座にお店を出すべきだよ。」ぼんたはお金がないので、それは無理だと言いました。すると社長は優しく、「じゃあ、うちの店に商品を置かせてあげるから持ってきてごらん」と言いました。

ぼんたは銀座の店に自分のフルーツを持っていきましたが、社長は「この品質では銀座のお店には置けないよ。もっと良いものはないの?」と言いました。ぼんたは「ありません」と答えました。

社長は優しく、「農家を紹介してあげるから、4万円のメロンを仕入れてうちに置きなさい。そして、1万円のメロンを自分の店に置いて、このメロンは銀座の4万円のメロンと同じだけど、傷があるから1万円で売ってます、と言うといいよ。」と教えてくれました。

初めのうちは言う通りにして、4万円のメロンを銀座の店に、1万円のメロンを自分の店で売っていました。ところが、ある日あずきが言いました。「なんでうちがお金を出しているのに、銀座のお店が4万円のメロンで、うちが1万円のメロンなの?うちの方が4万円のメロンにふさわしいわよ。」

ぼんたもその通りだと思い、銀座の店には4万円のメロンを持って行かなくなりました。しかし、日暮里ではメロンが売れず、腐ってしまいそうなので自分たちで食べました。あずきは「4万円のメロンって美味しいね。やっぱり私たちはこれにふさわしいのよ。」と満足そうでした。

でも、半年が過ぎると、借りていたお金も尽きてしまいました。困ったぼんたはまた銀座の社長に泣きつきました。社長は呆れた顔で、「しばらくメロンを持ってこなかったから、てっきり上手くいってるものと思っていたよ」と言いました。ぼんたは褒められたと勘違いして少し良い気分になりました。

社長は、今度はシャインマスカットの農家を紹介してくれました。ぼんたは喜んで銀座の店に2万円のシャインマスカットを、自分の店には3千円のシャインマスカットを置きました。今回はまあまあ売れ始めましたが、半年が経つとまたあずきが言いました。「なんでうちがお金を出しているのに、銀座のお店が2万円のシャインマスカットで、うちが3千円のシャインマスカットなの?うちの方が2万円のシャインマスカットにふさわしいわよ。」

またぼんたはあずきに押し切られて銀座の店に2万円のシャインマスカットを持って行かなくなりました。そしてまたお金がなくなり、ぼんたは再び銀座の社長に泣きつこうとしました。しかし、今度は違いました。

ぼんたが銀座の社長の店に向かう途中、突然空から大きなメロンが降ってきて、ぼんたの頭に直撃しました。「うわっ!」と叫び、ぼんたは気を失いました。目を覚ますと、ぼんたの目の前には亡くなったお祖父さんが立っていました。

お祖父さんは言いました。「ぼんた、お前たちは欲望に振り回されすぎだ。自分たちの店で地道に努力しなさい。他人の成功をうらやむのではなく、やってもらった事に感謝して、自分の道をしっかり歩むことが大切なんだよ。」

ぼんたはその言葉を胸に刻み、あずきに伝えました。あずきは最初は信じませんでしたが、次の日、彼女の頭の上にもメロンが降ってきました。「ぎゃー!」と叫んで気を失い、目を覚ますとお祖父さんが現れました。

「欲望を抑えなさい」とお祖父さんはあずきにも告げました。あずきはようやく理解しました。自分たちの欲望が、成功への道を妨げていたことを。

それ以来、ぼんたとあずきは地道に努力し、欲望に振り回されずに、自分たちの店を大切に経営しました。お祖父さんの言葉のおかげで、彼らの青果店は日暮里でも繁盛し、町の誇りとなりました。

そして、ぼんたとあずきは、欲望を抑えることと、人に感謝することが、真の成功への鍵であることを学んだのでした。


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