書評/『我が手の太陽』(石田夏穂著):能力減退に直面した時、過信とプライドがキャリアと人生のクライシスを招く……
石田夏穂の二回目の芥川賞候補作となった本作は、技能の低下に直面した熟練溶接工が現実を受け入れられず苦悩する物語である。心身の衰えと共にキャリアが停滞した時に自尊心と社会性をどう保つのかという問題が作品の底流にある。
主人公の伊東は、技術の高さを売りにしている配管工事会社のエース溶接工であった。太陽と同じ温度の炎を自らの手で制御して鉄を溶融させる時、こんな危険で困難な仕事をできるのは僅かな人間だけだと感じていた。ある日謎の検査員が現場に現れたのをきっかけに、伊東のキャリア