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【PHI】 新戦力投手の改造具合を確認する回

どうも、フィリーズ担当のペンでございます。
今回は今シーズンからフィリーズに加入した新戦力の投手たちがフィリーズに移籍してからどのように投球割合が変わってきたかその改造具合を確認してみたいと思います。
今のフィリーズはCaleb Cotham投手コーチを中心とした方針でその投手にとって1番有効な球種の投球割合を増加させる傾向があります。
例えば、去年のトレードデッドラインで獲得したKyle Gibsonは移籍後にカッターを投げる割合が5%ほど上昇していました。

Kyle Gibsonの2021年月別のカッターの投球割合
(Baseball Savant参照)
Kyle Gibsonの2021年月別の各球種の投球割合
(Baseball Savant参照)

(以前も取り上げましたがここら辺のことについてはMLBの読み物氏がGibsonを特集したnoteを執筆されていますのでそちらを参考にしていただければと思います)

今年フィリーズに移籍してきた投手たちもまだ少ない出場試合数ながらその投球割合の傾向にすでに今までとは違った傾向が見て取れます。
まだシーズン始まったばかりなので、これから投球内容が変わることもあるかと思いますが現時点でフィリーズが新戦力の選手たちのセールスポイントとなる球種がどれであるかと考えているのかが分かるかと思いますのでBaseball Savantのデータで確認していきましょう。
それでは、noteスタートです。

■ 実績のあるベテラン投手2人に対しての方針

まずは実績のある2人のベテラン投手Jeurys FamiliaBrad Handの投球がどのように変化しているか確認してみます。
ちなみに今回新戦力の選手ではありますが、Corey Knebelに関しては特に取り上げません。なぜならKnebelの場合は4シームとカーブの2球種の威力のみで勝負する選手であり、その点はフィリーズに移籍してからも何も変更点がないからです。

・ Jeurys Familia

Familiaについては契約の際にBrad Handと共にnoteにまとめていますのでそちらに今までの投球の傾向等についてはまとめていますのでそちらも併せてお読みいただければと思います。

上のnoteでは昨年からFamiliaの決め球であるスライダーのWhiff%(空振り率)が減少していることを問題点として指摘しました。
それに対するフィリーズの方針が以下です。

Jeurys Familiaの年度別の各球種別投球割合
(Baseball Savant参照)
Jeurys Familiaの年度別の4シームの投球割合
(Baseball Savant参照)
Jeurys Familiaの年度別のスライダーの投球割合
(Baseball Savant参照)

フィリーズの方針はグラフからも分かる通り、効果の薄くなったスライダーの比率を落として代わりに4シームの比率を上げることです。実際に現状少ない試合数ながらシンカーと4シームのコンビネーションは指標としては一定の成果を上げています。一方で、問題のスライダーは4/19のロッキーズ戦でC.J. Cronに逆転の3ランHRを浴びる球種となっています。本人はそのホームランを浴びたスライダーに対して「地面に付くレベルで曲げるはずだったスライダーが曲がりきらずにゾーンに入ってしまった」と語っており、本人の自覚以上にスライダーの変化量が落ちているのかもしれません。
そうなると、フィリーズの方針であろうシンカーと4シームのコンビネーションで勝負をしていくのがこれからのFamiliaのスタイルになっていく可能性が高いのではないでしょうか。ベテランのブルペン投手が新しい投球スタイルでどれだけ結果を残せるか興味深いところです。

・ Brad Hand

Handに関しても上のnoteではスライダーのWhiff%が下がっていることを指摘しましたが、Handの場合はFamiliaとは別の方針を打ち出しています。
こちらもBaseball Savantのグラフを見ていただいた後に詳しくは語っていきましょう。

Brad Handの年度別の各球種別投球割合
(Baseball Savant参照)
Brad Handの対右打者の年度別の各球種別投球割合
(Baseball Savant参照)
Brad Handの対左打者の年度別の各球種別投球割合
(Baseball Savant参照)

Handは2016年に完全にブルペンに転向した際に現在の武器となっているスライダーを身につけて飛躍した投手です。
その一方でそれまで先発の時代にメインの球種としていたシンカー(2シーム)を使う割合は10%台の割合でしか使わなくなっていました。
それを今年は4シームとほぼ同じ割合でミックスして使うようになっています。
特に左打者に対しては今までほぼシンカー(2シーム)を使用していませんでしたが、今年になってからは右打者と対戦する時と同じようにシンカー(2シーム)を使用しています。

・ベテラン投手に対しての方針についてのまとめ

FamiliaにしてもHandにしてもメインの球種(Familiaであればシンカー(2シーム)、Handであればスライダー)ではなく2番目に多い割合の球種を少なくして別の球種で補うという方針を取っています。
ベテランに対しては彼らが今まで培ってきたスタイルは残しつつ、年齢を重ねる中でそのスタイルの弱点となり始めた部分を変えていって今の年齢を重ねた状況でよりマッチするスタイルに変更しようという思考なのではないかと考えています。

■ 実績のない投手3人に対しての方針

次にメジャーリーグでまだ実績を残したとは言えない3名の新加入の投手(Nick NelsonJames NorwoodAndrew Bellatti)についてまとめていきます。

・Nick Nelson

昨年トレードでヤンキースから獲得した平均96マイル以上の4シームが武器の高い奪三振率を誇る右腕。昨年途中までマイナーでは先発を務めていた投手です。この投手をフィリーズはどのように改造しようとしているのでしょうか。こちらもBaseball Savantのグラフをまずは確認しましょう。

Nick Nelsonの年度別の各球種別投球割合
(Baseball Savant参照)

なんとチェンジアップの割合が4シームを超えています。
つまり、フィリーズとしてはNelsonの1番の有効な球種をチェンジアップと判断しているわけですね。
実際にヤンキースでの2年間ではメインで投げていた4シームがまったくメジャーでは通用しておらず、指標上でも球種別の成績で酷い数字を記録しており、メインの球種として使用するには不適格な球種と見なされてもしょうがない球種であると言っていいと思います。
ただ、その問題の4シームにも変化が見えてきています。Nelsonの4シームは昨年でもスピンレートが2,070rpmと平均以下のスピンレートを記録していましたが、今年はさらにスピンレートが一気に下がり1,908rpmと160rpm以上も回転が少なくなっていることになっています。
以前、Ranger SuarezのnoteでSuarezが昨年活躍した要素の1つに低スピンレートのファストボールを投げられるようになったことを挙げましたが、このNelsonの4シームもなかなかの低スピンレートになります。以下でSuarezのスピンレートと比較してみます。

SuarezとNelsonのファストボールのスピンレート比較

Suarez 2022 4シーム 1,831rpm
Suarez 2022 2シーム 1,861rpm
Suarez 2021 4シーム 1,932rpm
Suarez 2021 2シーム 1,843rpm

Nelson 2022 4シーム 1,908rpm
Nelson 2021 4シーム 2,070rpm

SuarezでSavantのFastball Spinのパーセンタルが「1」や「2」なので今年のNelsonのパーセンタルも「5」以内くらいには収まるんじゃないでしょうか。
チェンジアップをメインにしつつ、回転数を下げて改善を試みた4シームがこれからどのような結果を出すのか。引き続き見守っていきたいと思います。

・James Norwood

開幕直前にパドレスからトレードで獲得したブルペン右腕。
獲得した時には開幕ギリギリで実績もなくオプションもない(つまりロースターに入れるしかない)投手をこの時期に獲得するとかどういうこと?とちょっと疑いましたが、平均97マイルの4シームにWhiff%の高いスプリットを持っているというスペックの高さを確認して、これは前々から狙っていた投手をパドレスから盗んできた形なんじゃないかと考えるようになりました。
では、フィリーズはそんなNorwoodをどう改造しようとしているのかこれもBaseball Savantのグラフを見て確認しましょう。

James Norwoodの年度別の各球種別投球割合
(Baseball Savant参照)

Norwoodも4シームメインからスプリットメインに投球が変わっています。
これを見てフィリーズの狙いが分かりました。
NorwoodはFAで失ったHector Nerisの代わりになる投手としてターゲットになっていたんだと。
すでにマイナーリーグでは高い奪三振率を誇っていたNorwoodをNerisと同様に高いWhiff%を誇るスプリットをメインとした投球スタイルに変更させることでNerisのようにメジャーでも高い奪三振率を残せるようにさせたいんだと思います。
今シーズンは今のところ平均97マイルの4シームが95.5マイル程度に落ちています。ロックアウトによる調整の遅れに加え、トレードが決まった直後にNorwoodの父親が急死しチームを1週間ほど離れていたのも今の球速に影響を与えていると思いますので、球速が元に戻ってきた時に新しいスプリット主体の投球スタイルでどこまで成功できるか期待して見守っていきたいと思います。

・Andrew Bellatti

2015年に一度はレイズでメジャーデビューしながらもその後怪我で長期間プレーできない状況となり、ようやく復帰できるとなったタイミングの2020年にはコロナでマイナーリーグが開催されずと色々と不運が重なった投手です。昨年は主にマーリンズのマイナーで投げつつ、6年ぶりのメジャー復帰を果たしています。フィリーズはそんなBellattiとオフにマイナー契約、開幕ロースター入りしていたConnor Brogdonの再調整とDamon Jonesが1発で失格レベルの投球でAAA行きになったのに伴いメジャー契約を結び昇格することとなりました。
では、フィリーズはそんな苦労人のBellattiをどうやってメジャーの舞台で輝かせようとしているのでしょう。こちらもBaseball Savantのグラフを見て確認しましょう。

Andrew Bellattiの年度別の各球種別投球割合
(Baseball Savant参照)

なんとスライダーの割合が60%を投げています。
Bellattiは4シームもスライダーも2,500rpmに迫る高いスピンレートを誇り球速も平均以上のモノを持っています。
そのような投手でも4シームメインでは投球を組み立てるのではなく、1番効果のあるスライダーをメインの球種として攻撃的な配球をしています。
現状、メインの球種でスライダーを使いながらも30%台後半のメインの球種としては高いWhiff%を残しており結果を出しつつあります。
今のフィリーズにはスライダーを武器にしてきたHandやFamiliaといった成功者たちもいますし、Bellattiにとってはスライダーを磨ける恵まれた環境と言えると思います。そんなフィリーズの環境の中で30歳でようやくメジャーに帰ってきた男が成功を収められるかこちらも期待して見守っていきたいと思います。

・実績のない投手たちについての方針に対するまとめ

Nelson, Norwood, Bellattiの3人とも平均以上の球速の4シームを持ち、今まではその4シームを投球のメインとして投げていた投手たちです。
しかし、今のフィリーズの方針ではそのような4シームメインに組み立てる投球というものは求めらていません。彼ら3人には4シームよりも有効な球種があり、フィリーズは彼らに1番有効な球種でゴリ押しするスタイルをさせようとしています。
今までセオリー通りの投球スタイルでメジャーで活躍できていなかった投手たちを真逆の極端な投球スタイルに変更させてメジャーで通用できる投手に仕立て上げる。もし彼ら3人がメジャーで結果を残せればフィリーズはレイズのような無名の投手をどんどん発掘し、成功させるチームに生まれ変われるかもしません。チームとしてどんどん改革が始まっているフィリーズの中でも1つの指針になるテストになりそうな気がします。

■ まとめ

今回は今年フィリーズに加入してきた投手たちが投球スタイルをどのように変更させてきたかをまとめてみました。
今のフィリーズには、すでにファストボールをメインに投げてカウントを整えつつ追い込んでから決め球になる球種で決めるといったような古典的な投球スタイルはもはやないと考えていいと思います。
1番効果が高い球種を積極的に投げて抑えていく。
実は球数を抑える投球スタイルとしてもこのスタイルが1番効果あるのではないかと考えています。
このスタイルに改造されたフィリーズ投手陣が今年どのような成績を残すのか。ぜひ成功を収めて欲しいと思います。

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