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おばあちゃんがスマホを持つ話

 うちのおばあちゃんはもう90歳になる。
世の中のおばあちゃんの中では長生きしている方だ。

 そんなおばあちゃんがスマホを持ちたいと言い始めた。最初、両親は今持っている携帯ですら、ろくに使っていないのに何を言い出すのかと反対していた。僕もあまり賛成はしていなかった。

 だけどよくよく考えたら反対する理由はあまりないのかもしれないということに気づいた。確かに、90歳を過ぎた老人は今の若者ほどスマホを使いこなせるとは思わない。SNSを始めるわけでもないし、インターネットでさまざまなことを調べるわけでも、You Tubeで動画を一日中見るわけでもないだろう。

 もしかしたら、うまく使いこなせないで高額な料金を請求されることがあるかもしれない。そのために両親は心配して反対していた。

 でもよく考えてみたら、高額な料金を実際に請求されてから冷静に対処すればいい。おばあちゃんはお金に困っているわけでもなく、欲しがっているスマホも自分で買うと言っている。

 一般的に人間は歳を重ねるごとに新しく何かを始める意欲が薄れていくと最近読んだ本に書いてあった。脳がもともと現状維持を好む仕組みになっているかららしい。

 そのことからするとうちのおばあちゃんはすごい。
 もう90歳を過ぎているのに新しくスマホも持ちたいと思った。まだ持っているわけでもないのにスマホの勉強までしているらしい。スマホを持つことに対して反対することはないのかもしれない。それよりも僕たちがするべきことはおばあちゃんにスマホの使い方を教えてあげることではないのか。スマホがあればこんなことができるとようになる。今までできなかったことが簡単にできるようになると。

 もう90歳を超えているから平均寿命を過ぎている。特段病気をしているわけではないが、いつ天国からお迎えが来るかはわからない。そんな老人の見つけた新たなやりたいことを僕たちの不必要な心配で奪ってしまってはいけないと思ってしまった。

 僕はまだ24歳の若者だ。やりたいことはたくさんあるはずなのに、中々行動に移せず現状維持を選択してしまっている。おばあちゃんみたいにやりたいことがあるのに衰えがあって行動に移せないわけでもない。ただ新しいことを始めた時に失敗したらどうしようという実態のない心配事が枷になって行動に移せないのだ。それはすごくもったいないことではないか。

 おばあちゃんほどではないが、僕にも命の期限がある。時間が過ぎるのは待ってくれない。

 そう思ったらおばあちゃんを見習って僕も自分のやりたいことを始めてみようと思った。     

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