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新旧揃い踏み。

1996年11月。Charさんは20周年記念コンサートに臨みます。武道館公演はテレビでも放送され、のちに発売されたものとは違うカメラアングルで両方とも貴重なものになりました。

その20周年で、突如登場したのがYAMAHAのL-51。当初は謎扱いでしたが、われわれアコギマニアにとっては少なくともカタログ上では見たことのあるギターでした。世に言う(笑)カスタム四天王。左右非対称の形状の先進性が保守的なアコギマニアの理解を得られず?ほとんど売れずに終わったという話を聞いていましたが、なんとそれをCharさんが持っているとは!さすが人と同じものを持ちたくないタイプ(笑)。プロでもこのモデルを使っていた、と言われているのはガロのボーカルさん、そしてググると出てくるボブディラン。ガロとディランとか出来過ぎ(わかる人だけ笑ってください)。

1975年カタログ。定価30万円。

アイドル期からJLCではも少し太い弦だったのではと推測しますが、この周年イベントの時はいかにもエクストラライトな感じでした。当初はダンカンのウッディというピックアップで拾っていましたが、その後天邪鬼あたりだったかフィッシュマンのレアアースになり、いやーこの弦でレアアースはないわーこれならM-1でしょとかぶつぶつ言ってたら聞こえたのか(笑)次のツアーからLR BaggsのM-1activeに変わって今に至るという。

その後、ある時期あら?音変わったなーと思う時期がありました。もうギターの方が諦めてCharさんの弾き方に合わせたような?そんな感じ。今でもワンアンドオンリー状態ですよね。オベーションとかタコマとかどこ行ったのよ的な。

そんな96年以降、中古市場では、一気にL-51が高騰しました。当たり前ですね。倍々ゲームだった。最近ではもう200とか250とかいう数字を耳にしてため息しか出ません。

そのオリジナルの個体数や希少性ゆえか?あるいはYAMAHAの復権をかけたのか?突如L-51がリイシューされました。2010年のことです。限定10本。マスターグレードとマチレスとカスタムショップを売りました。今持ってりゃもっと高く売れたなあ(笑)。こんなにギターが高騰するなんてね。ともあれ。そうやって手に入れたリイシューでしたが、やはりあまりにも高いので、いじるか飾るかかなり悩んで…飾るの無理なんですよね…当然弾くことに決定。いろんな気になっていたところと全体の調整を名工日高雅樹氏にお願いして。このたび生まれ変わってきました。

受け渡しの日に日高氏が、お客さんでオリジナルのL-51持ってる人がいるから紹介しますよ、なんてことでなんとオリジナルもオリジナル、1975年製のL-51を持っている南さんと引き合わせてくれました。いや〜こういうのって縁ですよね。

南さんは現役バリバリのシンガーソングライターで、このL-51を先輩からほぼ新品デッドストック状態で譲り受けて以来40年あまりに渡って使ってこられたと。若い時に手に入れた究極の一本を大切に弾き込んでこられた、まさにギター弾きとして「かくありたい」理想的な歴史。

オリジナル1975年製。

アメ色に焼けたトップ。歴戦の傷。そして経年変化でくすんだ本鼈甲のピックガード。

ブラジリアンローズウッドのサイドバック。ヤマハのハカランダってけっこう見てきたけど、大概ワイルドな模様のやつで、そういうのわざと選んでるんですかね?昔は柾目じゃないと…なんて思っていましたけど、坂崎さんの68年D-45見て以来、なんも関係ないんだと思うようになりました。ていうかそこ実際に違いとかあるんでしょうか?

リイシューモデルを弾くようになった頃にはハカランダの音っていうのがわかっていたつもりです。昔は分からなくてほんとに。そんなに違うんかな?って。D-28研究で有名な染村さんに質問したりして。普通の弾き方ではハカランダが鳴るところまで行かないと思っています。相当ガンガン弾き続けないと。だからそういう意味ではプロ用だと思う。うちにあるハカランダモデルで最初に音が変わったのはやっぱり最初に買ったモーリスでした。20年後。毎日弾いていないとこれくらいかかるとわかった。ふつうの人ならもうやめてますよね(笑)。これは合板ですけど、抜けた時の爆音感というかレンジの広がりは衝撃的だった。あーこれをみんな望んでいるのか。いわゆるローズウッドはこれに比べると、まとまった優等生な感じ。抽象的だけどワイルド感が違う。

余談ですが、マーティンのハカランダはマジックというか裏があって、ブリッジプレートのデカさでまったく鳴りが違うので、ハカランダの音とかその爆音感とか知らないと騙されちゃう。まあ誰も騙してないんだけど(笑)、僕自身「あら?」って思うことが何度もあって、そのうちにわかってきた。単にどれくらい弾かれてきたかだけでない作りの問題がある。だから「だれだれと同じ音」という探し方するなら同じ年のやつってのがやっぱり手っ取り早い。

南さんのL-51はCharさんのやつとほぼ同じ時期のもの。実際に弾かせてもらうと、あるところで「あーこの音!」という感じになります。Charさんがこのギターを弾いてるのを間近で見た方は分かると思うけど、真ん中からネックより、M-1の真上あたりを弾いてますよね。だからときどきピックアップに当たってカチカチ言ってる。あの辺りがそっくりな音。その場ではその気になって弾いていたけど、伝わりますかね(汗)。動画見ると僕はそのあたりを弾けてないなー。すみません。

リイシューモデルは、それはそれで丁寧に作られているんだけど、細かいところがいくつか違うのと、ギターの機能として、然るべき進化をしています。より良い音を求めてなのか?ブレイシング(力木)の形状やネックの差し込み方、バックのアーチなど鳴りに関係するところなどが違います。見た目ではわからないけど、実際に触ってみると裏板はオリジナルはまっすぐ(フラット)なのに、リイシューの方はエッジの部分にアーチがつけてある。オリジナルはカスタムオーダーモデル前提ということもあってか?ネックエンド部分に角度がつけてあるけどリイシューはフラット。これも正面から見ただけではたぶん気づかない。そして両方ともに共通するというか、ここが大きく意味のあるところだと思うんだけど、テンション感が他のギターと違うんです。柔らかい。Charさんがずっと使っているのは、当然デザインとかもあるでしょうけど、この部分大きいと思います。ロングスケールでこれはびっくりする。アコギメインの人だと正直戸惑うかもレベル。

リイシュー2010年製。

ヘッド、指板、ブリッジにはハカランダでインレイが入っているんだけど、たぶん個体差だと思いますが、僕のはブリッジ部分のインレイがかなり暗いので、エボニー単品に見えますね。ふと気づけばもう作られてから10年以上経っているんだけど、大事に箱入りにしすぎて新品の音がしているというかまだまだ全然実力発揮していない。

今回、日高氏のおかげで南さんと出会えて、オリジナルとリイシューの2本揃い踏みを実現させることができました。よほどのマニアかヤマハのファクトリーでもなければこういう場面はなかなかないと思いますが、お互い現役プレイヤー同士、そのうちライヴでご一緒したいなと思います。南さん、ありがとうございました!今後ともよろしくです^ ^

Special thanks to
Kazuya Minami
Masaki Hidaka

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