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「失速」を買わなかった理由。

1982年、高校1年の時に「学生街」以外のガロに出会いました。

友人Sくんの「お母さんの」カセットテープがなければかなり違う人生になっていた気がします。

レコードの「たんぽぽ」はキーがDmで、当時ようやく「コピー」というものに手をつけ始めたばかりの自分にはいきなりイントロから高いハードルでした。ローコードで弾いてもカポ5で弾いても同じ音にならない。来る日も来る日も考えてもわからない(初心者ですからね)。コードは合っているはずなのに。当時は諦めてカポ5で弾いていました。数年後、見つけた時の嬉しさは今でも覚えています。夜中にひとりで興奮して誰にも伝えられない(笑)。後年、マークさんに会った時この話をしたんだけど、マークさんたちは通常Emで弾くから、この喜びがあまりというかほぼ全く伝わらなかった(笑)。そうですかー、なんて^^。

今ならYouTubeもサブスクもあるから入手も目コピもし放題だけど、82年の大分のさらに片田舎ではガロの音源を手に入れる方法がまったくわかりませんでした。当時はガロのオリジナルアルバムはすべて廃盤だった。中古レコード、とかいう発想もなかった。唯一「燃えつきた日々」というベストアルバムがあるだけだった。ベストだから当たり前なんだけど、Sくんに借りたテープと曲がけっこうかぶってるしなあ…みたいな感じでなかなか手が出せずにいた。

そんなある日、近所の本屋で「ガロ」というタイトルの本が目に留まった。「失速 ガロが燃えつきた日」。あの頃、アーティスト本といえば単行本のエッセイ集、みたいな感じで、そういう影響を大いに受けた自覚があります。しかし、僕はその本を買わなかった。

ガロに対する熱がその後も冷めることがなかったのはこれまで何度も書いてきましたが、時間が経つにつれ、「なんであの時あの本を買わなかったんだろう?」という疑問が。

立ち読みした記憶はある。なのになぜ買わなかったのか?内容もまったく覚えていない。お金がなかったんだっけ?あー買っとけばよかった…だんだんそういう気持ちが募る^ ^

インターネットの時代がやってきて、GARO fan pageというサイトに出会って、いろんな話を知ることができるようになり、その中でもこの本の話はときどき目にしました。いつでもすこぶる評判が悪い(笑)。いよいよどんな中身だったっけ?気になる。まあでも古本屋で目にすることはなかったですね。この本売れたのか?

書いたのは音楽評論家の富澤一誠氏。富澤さんは今でこそ坂崎さんとフォークの番組とかのMCやって知られてると思うけど、当時はテレビラジオに出てくる人ではなかった気がします。僕は彼のことをアリスの弾き語りスコア本のライナーで知った。少なからず70年代後半のニューミュージック系のフィールドでは有名だったのかな?

評判の悪い本だけど、何年か前にボーカルさんと富澤さんがやりとりしているのもなんか見たか聴いた気がするし、まあ、時が流れれば…というのもあるのかもしれない…それにしてもどういう内容だったのか…

そんな感じでずいぶんと時間が過ぎてしまったのですが、先日ひょんなことからこの本を読む機会に恵まれました。

感想。「ああ、そうか。それでこの本を買わなかったんだった。」

ガロの話であることは間違いない。富澤氏がガロが終わっていく様子を見て思ったことを数年後、本人たちに取材して真相を探った、という感じかな。買わなかった理由は思い出せた。音楽の話がないんです。音楽的な話がほぼない。僕はアーティストの前に自分が出ちゃう音楽ライターが嫌いなんです。カメラを向けたレンズに取材者の指がかぶってる感じ。読みたいのはライターのことではなくそのアーティストのこと。今はどうだか知らないけど、この本の(頃の)富澤さんはガロではなくガロにカメラを向けている自分を語っているように見えます。

後追いの、情報のない地方の人間にとってはメンバーの不仲より、あのハーモニーの秘密や変則チューニングの話、ガロが他のグループとは違う唯一無二のところを書いて欲しかった。そしたら速攻買っていたと思います…唯一今回読み直して?おーと思ったのは当時全く気づいていなかったアルフィーの名前が出てくること。この辺は読み飛ばしていたのかもね。立ち読みだったから^ ^;

長い時間が過ぎたあとで、なぜ買わなかったのか理由があったことを思い出した話でした。




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