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ブリッジプレート。

まだご覧になっていない方もいると思うので、具体的には細かいこと書きませんが。

いつもお世話になっているギタービルダー日高くんに「福山雅治がマーティンの工場に行った番組があるみたいですよ」と教えてもらって。アコギマニアとしてはそりゃ見ますよね^ ^。

福山くんは僕より年下のプロの人でマーティン好きという数少ないひとりです。年上の人はマーティン党多いけど、僕らの年を境に…同い年の人は斉藤和義とかスガシカオとかトータス松本とか桜井和寿とか…ここで半々でしょ。その下いくと山崎まさよしもスキマスイッチもゆずも秦くんも…急にマーティン率下がる。まあ見た目はマーティンよりギブソンの方が派手だからかな^ ^。

彼は割とマーティン持ってテレビに出てくるので、見るたびにいいなあ、儲かってんなあと(笑)。最初はグレッチとかだったのが、どんどんマニアックなやつになりましたね。グローバー期の000-28、グローバー期のD-45…今回も、彼でなければこういう番組出来なかったんじゃないかなあ。ネームバリュー、好きの度合い、言葉で説明する…そして絵になる。マーティンとか僕らにはものすごい存在だけど、ふつうの興味ない人には…ね。

上の写真パッと見て「45かー」とは思ったものの…あら?ペグが?…われわれマニアはペグの形状でまず年代を見分けています^ ^。そうかあオリジナルの45かー。次に見るところはブリッジサドル。これの長さでいつの時代かわかる。まあ今はいわゆるレリックというかヴィンテージレプリカがあるから見た目上どんどんわかりにくくなっていますが。

今回のネタに関するところで書かせてもらうと…まあここが肝だったんだけど(笑)、音のポイントになっているブリッジプレートというパーツ。

番組見て、あれでわかる人はよほど耳いい人だと思います。ていうか当然ビフォーアフターで聴けばそれはわかるんだけど、単品でビフォー、単品でアフター聴いたら間違いなくどっちもただのいい音で終わると思います。あれは彼がいいマーティンの音を年代ごとに弾いたり聴いたりしてるから「ん?」って思ったんじゃないかなあ。

アコギの作り的なところが音に影響するっていうのは、まあ材質的にはよく言われる話で、ハカランダじゃないと的な伝説がもうふつうの人間にヴィンテージを買えないものに変えてしまいました。今年は特に値上がり度が高くて、ふつうのギターも買えないよねってギター好きの人に会うたびそういう話になります。それくらい異常なレベル。ちょっと前からヴィンテージよりも現行のカスタムショップ系が値上がりしていてなんだろうなあと思っていたけど、今年はもうどっちとも高くなった。これは某為政者のせいじゃない気もするけどどうなんでしょうね?まあいいわ。僕は別にいいものを安く買い叩こうと思っていません。適正だったらいい。それを見極めるのが楽しいってとこですね。ただ、好みはある。そのために作り方や材質を確かめるという展開になっています。

僕は1967年生まれ。ヴィンテージ的なものを集め…なくても一点でも「バースイヤー」のものってなんか心惹かれないですか?自分のものでなくてもお子さん生まれた時に記念の何かとか買いませんでした?僕の友だちはほぼ「お前のだ」とか「大きくなったらお前にやる」とか言ってギター買ってましたけど(爆笑)、僕はもう言われるまでもないです^ ^

で、いつかはマーティン、と思った時からなんとなくバースイヤーのD-28が欲しいなあと思うようになったんです。以来30年。

わりかしお店では肩書きというかハカランダってだけで高いですけどね。当然ながら、材質だけで音が決まるわけではなく、どう弾かれてきたかで大きく音が違います。簡単に言えば、ピカピカだけど弾かれていないものとぼろぼろだけど弾き込まれてきたものではまったく鳴り方が違う。人間でもそうだけど大きい声の出る人は小さい声も出るけど、小さい声の人は大きい声が出るとは限らない。そこに伸びしろがあるかないか。積極的にいろんな人に会って経験の豊富な人とあまり人に会わずに黙っていることの多い人の違いというか…鳴物入りでやって来た人に実際に会ってみて「?」みたいなことも…何の話だ?

話を戻すと、何度弾いても「!!」という感じにならない。音がダメなんじゃないです。音はいいんです。相性なんです。いろいろ勉強にはなりました。鳴るものも鳴らないものも弾いてきましたけど、ああ、これだからあのアルペジオになるのかとわかる。軽く弾いても音が前に飛んでいく。だからこの時期のやつを弾いてる人はサムピック使わずに指で弾いている人が多い。指だけでじゅうぶんクリアな音が出るんです。これじゃあの自分が弾いていたギターではダメだわとか思う。その年代のそのギターなんてバカじゃないのと思われ…ても仕方ないんですけど^ ^理由はあるんです。長渕剛が好きならタカミネの前にギブソンの前にやっぱりヤマハでしょ、って必ずなる。スリーフィンガーするのにヤマハのタッチは違うからです。

67年製、探し始めた頃は5-60万くらいだったかなあ。今もう3倍くらいですよね。だからこれだ!と思うものに仮に会えてももう買えない(泣)。そうなると値段的にももはや「とりあえず買ってあとで考えよう」とはならないから、とにかく考える(笑)。ところがある時偶然見つけたぼろぼろの71年製。いい顔だった。個人的に71年生まれと相性がいいんです。で。買って考えようと思える値段だった。ボロボロだったから。ところが。そのD-28弾いた瞬間「!!」がやってきた。細かいところは日高くんに直してもらって。いいんです。やっとわかった。フルオリかどうかもよく分からんけど音が気に入るってことの大切さ。何を今さら^ ^。

このギターの威力としては。年代とかスペックにまったく興味ないうちのバンマスが「ちょっと弾かせて」って必ず言うんです(笑)。これって逆に信じられるでしょう?

それを見ていてそうかと気づいた。僕らはやっぱり最初に聴いた音を探している。あの頃のレコードで鳴っていたような音。これなんだ。ハカランダとローズウッド以外に何が違うんだろう?と考え始めて、改めて文献をめくってみる。で、発見。それがブリッジプレートなんです。ようやく本題。いつもすいません。

マーティンは1968年に、ブリッジプレートをメイプルからローズウッドに変更します。さらに翌69年にはそれを大型化します。これは20年ほど経って、また元に戻るんです。そうすると、限られた時期のものしか同じ音がする可能性がない、ということになります。ブリッジプレートというのはただの板ですから、大きなものを貼り付ければトップ板の鳴りを抑えてしまいます。逆に言えば、この抑えられた鳴りのギターを刷り込まれている僕のような人間はその時期のものがいちばんしっくりくることになります。あー面倒くさい^ ^。もうね、おもしろいくらい音は違うんです。僕はこの謎が解けてからハカランダマーティンにほぼ興味を失いました。まあくれるならもらいますけど(笑)。気づいたあと、あるお店で1969年のハカランダD-28を弾かせてもらいました。予想通りの音でした。僕が買った個体にうん十万上乗せしないと買えません(泣)。もちろん買えません。

福山くんの耳はこれを聴き分けているということになります。おかしいなって気づいたんでしょうね。僕も何十年もかかってそこにようやく辿り着いたので、さすがプロはすごいなあと思うと同時にとても嬉しかったです。意味わからんけど^ ^。ぜひ番組をご覧になって彼の言葉を聞いてみてください。




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