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Schoo連続講座『デザイン温故知新』無事に終了いたしました

スクーの連続講座『デザイン温故知新』が無事に終了いたしました。ありがとうございます。タイトルにあるようにデザインの歴史、おもに近代デザイン史をみながら、いま、そして、これからを受講生とともにかんがえるオンライン講座となりました。

じつは今回のスクー講座、タイミングがとてもよかったのです。というのも、数年前に作成したデザイン史にかんする授業資料を、そろそろ更新しようとかんがえていたから。その理由は、大林寛さんとの『デザインのよみかた』や、今田順さんとの『日本の美を読む』などのプロジェクトをつづけるなか、自分自身のなか濾過されるものがおおきかったから。

それぞれのプロジェクトでたびたび名前のあがるもの——たとえば工藝風向 高木崇雄さんの著書『わかりやすい民藝』や、平岩壮悟さんの翻訳によるヴァージル・アブローの対話録『ダイアローグ』、あるいは河野三男さんとのとりとめのない雑談やメールのやりとり——にふれるなか、漠としたものがなにかしらのかたちを帯びている感覚があるのです。

今回の連続講座のなかキーワードとしていたのは、典型、デフォルト、オープンソースというもの。それから文明と文化、風土、時間……などなど。この数年、柳宗悦による文章『工藝的なるもの』とデザインの関係性がずっとあたまにあり、そのたびスタンリー・モリスンはじめとするフラーロン関連の面々の仕事がうかんでいました。

それがこの夏、ヴァージル・アブロー『ダイアローグ』にあるリファレンスということばにであい、いっきにとけた。そこから派生的に今回の講座でもちいた典型、デフォルト、オープンソースという、デザインがはらんでいる特性をしめすことばにつながりました。それゆえか。今回の連続講座の章立てとスクリプト、ものの数時間であっという間に書けてしまった。かんがえるというより、だしてゆくだけという感覚でもありました。


スライドショーの表紙画像を決めるのは、毎回、ひそかなたのしみでした。初回はル・コルビジュエ サヴォア邸の建具。学生時代にゼミの研修旅行で撮影したもの。モンドリアンばりの平面構成。二回目はヘルヴェチカ活字。ひさびさに使用しましたが、デフォルト設定のみでモダングラフィックスの表情になる引力のつよさにおどろきました。三回目はヨゼフ・ミュラー=ブロックマン『グリッドシステムズ』書影。モダンデザインが内包するオープンソース性らしさはもちろん、その後、Adobe Illustratorなど造形アプリケーションにおけるデフォルトのありかたを象徴しています。

最終回はザ・ナンサッチプレスによるアルフレッド・テニスン ‘In Memoriam’ 書影。モノタイプ社によるアルダス活字のリイシュー Bladoをもちいたもの。1933年刊なので、谷崎潤一郎『陰翳礼讃』と同年であり、ヤン・チヒョルトがニュータイポグラフィを提唱していたころになります。フラーロンの関連人物 フランシス・メネルのよる出版とデザイン。ナンサッチプレスは、テニスンのほかウィリアム・ブレイクもあつかっており、それもまた民藝、というよりも柳宗悦とつうじるものをみてしまう(じっさいフラーロンの関連人物でもあるエリック・ギルの工房に柳と濱田庄司、バーナード・リーチがたずねてもいるわけで、このあたりは自分自身にとって今後の宿題です)

自分自身の惰性から、こうしたことはかんがえてはいても、具体的なかたちにはなかなか落としこめないもの。今回の連続講座はとてもありがたい機会でした。受講生のみなさま、スクーのみなさまに御礼もうしあげます。


9 December 2022
中村将大

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