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発達途上の10代 裁くのではなく「育てる決定」があってもいい


10代の飲酒・喫煙 エースが五輪を前に離脱

体操女子のエースが、パリ五輪開幕を目の前に離脱するという事態になり、大騒ぎになっている。原因は同選手の喫煙・飲酒。これが「代表行動規範」に違反するというのだ。

体操女子のパリ五輪日本代表で主将の宮田笙子みやたしょうこ選手(19)が、代表行動規範に違反したとしてチームを離脱することが7月18日に分かった。

調査を進めている日本体操協会が同選手を事前合宿地のモナコから帰国させており、7月26日開幕の五輪出場は不透明となった。

宮田選手はどんな選手なのか?

福井・鯖江高時代に急成長し、初出場だった2022年の世界選手権で平均台銅メダルを獲得、個人総合8位と活躍した。今春の全日本選手権で初優勝、NHK杯で3連覇を果たし、初の五輪代表を決めた。というから、メダルへのバリバリの牽引役だ。

「当然」「厳しすぎる」ネットには賛否

ネットは賛否両論だ。「決まりは守って当然」「他の選手は守っているのだから特別扱いは無用」「気持ちを切り替えて出直すべき」という賛成派。

一方で「五輪をあきらめなければならないというのは、さすがに厳しい」「選手としてのピークを過ぎてしまう」という決定を疑問視する声も。

同じ五輪種目でもスケートボードの団体と比べるとかなり違う。

スケートボードで5月のパリ五輪予選シリーズ上海大会に出場した20歳未満の日本の4選手(男女各2人)が現地で飲酒し、国内統括団体のワールドスケートジャパン(WSJ)から代表選手規程の違反行為として厳重注意などの処分を受けていたことが6月19日、分かった。

WSJは選手名を公表していない。

大会終了後にスポンサーのスタッフから、中国では18歳以上は飲酒ができると勧められ、つい飲んでしまったようだ。飲酒の程度も考慮し、2人は「口頭での厳重注意」、1人は「口頭での注意」、1人は「不問」とした。

管理責任を問題視して日本代表の西川隆監督を戒告処分とした。

決まりは守るのが前提

行動規範は競技によって違う。事前に示されているのであるから、守らない方が悪いといえば悪い。これがまず大前提だろう。選手だってそれに納得してチームに参加しているはずだ。

ちなみに未成年の飲酒・喫煙を禁じる法律というのは、どうなっているのだろう。

未成年の飲酒や喫煙を禁じる法律は、違反した未成年を厳しく罰しようという主旨のものではない。アルコールやたばこの健康被害から未成年を守ろうというものだ。むしろ周囲の対応に厳しい。保護者やそうした物を扱うお店の責任が厳しく問われる。

かといって本人は全然お咎めなしかというとそうではない。本人が所属する学校などの団体は、違法行為に及んだ場合のペナルティーを設けている。個人の場合は停学処分等、サークルなどの団体の場合は解散、活動停止等の処分が下る。ペナルティーはいくつかの段階があり、違反のレベルによって決まる。

飲酒したうえで暴力沙汰、飲酒運転等をしてしまえば、もちろん別に刑事の事案として裁かれる。

昔は、大学祭というと構内で結構お酒を飲んだものだが、今は販売禁止だ。「ゼミのコンパなどに出席する際は、絶対に未成年には飲ませないでくださいと、大学当局から厳しく言われた」(都内の大学の元講師)

それもこれも10代を健康被害から守るのが目的だ。

最近は若年層のアルコール離れが顕著だ。学校などから常日頃、これだけしつこく注意されていればわざわざお金を使って飲もうという気にはならないかもしれない。

チーム離脱だけが本人のためか?

話を戻そう。

今般の事案を耳にし、筆者はマンガの「家栽の人」の桑田判事を思い出した。ドラマにもなり桑田判事の役は、片岡鶴太郎さんらが演じた。作品の中には、各話に名セリフが出てくるが、中でも「家庭裁判所は人を裁くところではないんですよ。人を育てるところなんです」という言葉は印象深い。

宮田選手は初の五輪代表でしかもエース格。そして、まだ10代だ。精神的な重圧は相当なものだったろう。関係者はそれに十分に対応する環境づくりができていただろうか。

体操協会の行動規範の文面からは「体操ニッポン」の伝統、品位を守りたいという熱意が強く感じられ、それもまたよくわかる。選手と協会の間の経緯は過去どうだったのか。詳しいチーム事情はこれ以上よくわからない。

ただ、将来的には、チームを離れて五輪出場をあきらめるという処分だけでなく、他の道を検討できる余地を用意しておいてもいいのではないか。

ある法律の専門家は、下記の見解を示している。

「法的には処罰されないとしても、日本体操協会では内部の行動規範を定めており、内部のルールで未成年者による喫煙を禁止しており、違反すれば処分が科されることになります。

もちろん、一国を代表するわけですから、それなりの対応は必要かもしれませんが、処分については永久追放から戒告まで、さまざまなものが規定されています。

しかし、飲酒と喫煙だけをもって、代表辞退にまでなると行き過ぎている印象はあります。一般的に戒告で終わることが多いと思います。」


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