「絵師が生成AI問題について知ってもらうためにSF小説を書いてる」活動の報告

 この活動はひっそりと一年間、複数の作品の応募をすることで続けていましたが、ひとまず簡潔に、直近の報告と作品の紹介をします。そのうち、一年間のまとめについても記事で書くかも。(落選ばかりで成果がないと思われるかもしれないので書いておくと、さなコン3では審査員賞という成果がありました。でも、それはテーマを前面に出さなかったからでした)

https://note.com/roncele/n/n5dcc77f2205c
 この記事で報告した『大いなる養蜂家』という小説を、ハヤカワSFコンテストに応募していましたが、結果落選でしたので、カクヨムで再公開しました。
https://kakuyomu.jp/works/16817330667751650233

 生成AIの悪影響に困っている絵師さん界隈の共感を得られるお話になったと思います。絵描きさんの癒やしになったらと思います。
 むしろそういう人たち以外には刺さらない内容かもしれません。(一般の人にも面白くなるようこころがけたつもりですが)
 また、いわゆるAI推進派の人にも面白い、笑ってもらえる部分がいくつもある作品になっていると思います。そもそも主人公がAI開発者で、ある程度共感できるように書いてあるからです。

 小説の内容の紹介としては、19世紀に画像生成AIがあったらという話です。
 養蜂の巣箱に絵画を入れると複製されること発見した少年が、巣箱内の蜂による情報の流れをニューラルネットワークに見立ててさらなる応用をするところから始ります。Apis Indica(インドミツバチ)絵画、略してAIアートという言葉遊びです。
 なぜ蜂をモチーフにしたのかといえば、生成AIの擬人化を否定するためです。人格を持つ人間のパートナーとしての古典的AIではなく、昆虫的・機械的なものと捉えてほしいのです。
 花々から蜜を集める蜂と、そこから成果物を収穫する養蜂家のイメージは、AI企業がアーティストから情報を収奪する搾取のメタファーにもなってます。
 後半は、LLMの問題点にも触れ、実在の著作物の引用が増えるので、歴史改変SF感が強くなります。一九世紀版のシンギュラリティ論者のようになっていく主人公の様子が見どころです。

 短めの報告ということで、紹介はこのあたりで終わりです。とりあえず読んでねということです。

 SFのテーマとしては、のちのち推進よりも批判のほうが主流になっていくと思います。テッド・チャンがアートへのAI利用を明確に批判していたのを見て、自分が間違っていないと安心しました。
 たとえばジェンダーや気候危機みたいなテーマとして普通になると思うのですが、まだ数年早いようです。

 いわゆる「規制派」の人たちと「SF小説界隈」(特に大御所)との温度差は広がるばかりです。翻訳家や声優たちが無断学習を批判し始めたので、SF界隈にも届くかと思いましたがそうでもないです。この理由は、ひとつ前の記事に書きましたが往年のSFファンの方たちは「ソラリスの海」的な対象と思っているからではないかと思います。「異質な知性に対して寛容であろう」という正しい教育を受けていることが、知性を僭称するものに対して裏目に出たという感じです。

 まあとにかく今日は短い報告ということです。

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