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第六十一話 海外初タトゥー

海外で初めてのタトゥーアーティストとの出会いは、ここ、ジョグジャでした。

知人の話では、このスハルト政権時代にタトゥーというものは違法で、見せしめに銃殺された事もあったという。

やはりそんな時代に彫る事を生業としてちる連中というのは、なかなか”肝が座った”連中だったのだろう。
地元の友人は怖いと言い、スタジオには行かなかった。
 
 当時の僕はそんな話はまったく知らず、彼らと普通に話しをしていました。
外国からのお客さんという事で、彼らの下っ端のコが、食べ物から飲み物から欲しいと言えば、何でも買ってきてくれた。どこかに行きたいと言えば、直ぐにバイクで送ってくれた。

 現地のスタジオは衛生的にも、かなり危うい感じの所ばこりで、針もインクを置くトレーもそのまま使っているんじゃないかという状況で、余りちゃんとしてる感じは無かった。

彼らのスタジオは、一応、その中では綺麗め部類に入るので、僕はジョグジャ滞在の最後にと、ここで海外初の施術を受けることにした。

インドネシアはボルネオ(カリマンタン)島などで、伝統的なトライバル(部族的な)があるように、日本と同様に元々の下地が文化の中に存在している。
やはり、その中には、そんなデザインが数多く見受けられた。

それまで一緒に遊び、飯を食ってたせいか、施術が始まる時になっても、余り緊張もなく、始まってからも特に痛みも無い。

施術の途中、ドイツ人の女性が来る。

聞くところによると、彼女はフランクフルトのタトゥーアーティストだそう。
僕に衛生についての話を聞かせてくれた(案にインドネシアで入れるのは相当、気を付けた方が良いという事だろう)。
この時、入れたのには、正直、理由は無かった。

ただ、この旅の中で友人達を失ったという心の痛みを何かしらの形にしたかったのだ。
気持ちを何かに残して置きたかったのだ。

無事に施術を終えて、別れの握手をし、スタジオを後にする。

 さて、そこから宿に戻ると、みんなテレビの前に集まっていて、現地のドラマを観ていた。

いや、正確には中国のドラマで、インドネシア語字幕付きのものだ。

鬼guiと言ってるので、恐らく霊的なものか。

皆で観ている。何か古い道士みたいな格好で、剣を持った人間が戦っている。
皆、真剣に見ている。
 
 
「霊なんて居ないのにね」僕がボソッという。
ここまでこの旅で散々、不思議体験はしてたものの、まったく信じていない僕。

信じなければ、例え存在しても存在しない。
 
その言葉を聞いた他の連中が、急に振り向き、僕に向かって言うのです。
 
「お前!霊魂を信じないのか!??」
とても驚いた薫で。
 
「え?当たり前じゃん!そんなの!現実に居るわけない!霊も神も居ないよ、この世には。」
どうやら、その言葉が彼らを刺激してしまったようで、彼らが身を乗り出して、霊についての話をし始めたのです。
 
「へー。」
まだまだ半信半疑、というか、全く信じていない。
 
「君はこれからバリ島へ向かうんだったよな?」
 少し怒り気味に聞いてくる。

「そうだけど?」
 
「じゃあ、僕らがここでこれ以上、話す必要はないな。君はバリへ行けば、嫌でもその存在を感じるようになるから。」
 
 この時、僕がバリ島へ対する知識とすれば、「サーファーの行く島」「マジックマッシュルーム」「神様への信仰が厚いところ」。こんなところでしょうか。

以前、僕の先輩達が、バリでタトゥーを入れてきたという話を聞いた事があった。
路上で入れるんだとの話を聞いて、その時はどれだけ原始的な生活をしている島なのだろうと思っていた。
 
「バリ島か。。」
僕はここで初めてバリ島というものを意識し始めたのです。それまではただ一つの、途中に立ち寄る島、程度にしか考えていなかったのに。

まさかここから、僕の人生に深く関わる事になる所になるなんて。その時は全く考えもしませんでした。

さあ、次はバリ島だ!

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