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コスト削減と価格競争が本当に嫌いだ

以前にこんな記事を書いた。私は熱心な反デフレ信者なのだが、その原点は自分が前々職でコスト削減の政策を担当していたことにあるかもしれない。


以前にコスト削減を至上命題にしていた部署にいたことがあり、本当にコスト削減というものに辟易していた。コスト削減は他人の仕事の否定しあいであった。お前のやっている仕事は会社に貢献していない、というわけだ。「費用対効果の最大化」であれば受け入れられる。だが、生み出す価値を論じることなくコストだけを論じるのは愚の骨頂である。究極的にはその会社が存在しないことが最大のコスト削減という結論に陥るからだ。コスト削減は最終的には自己否定に行きつく。

良いものを多くの人に届けたい、という理由で驚くような安価でサービスを提供しだすスタートアップの会社がある。その想いは立派だと思うけれど、多くの会社は結局サービスが継続できなくなる。高いサービスを売ることよりも、サービスが継続できなくなるほうが大迷惑だ、ということを認識したほうがいい。高い志をもって安いサービスを提供し、そのままフェードアウトしていくサービスは山のようにある。

応援してくれる出資者にお金を出してもらって、(不当に)安価にサービスを提供するのは最も安易な道、と思っている。「高価なサービスを提供する」ことはユーザーの目線も厳しくなり責任感も伴う。ベストエフォートで頑張ります、ではすまないこともある。「守銭奴」とののしられるかもしれない。

ソフトウェア企業で世界4位といわれているSalesforceという会社がある。一般の方にはあまりなじみがないかもしれない。営業支援ツールを販売している会社だが、一般の感覚から見ればとても高価なツールだ。高い、高い、といわれながらも投資を繰り返し、サービスの拡大を繰り返し、営業支援ツールベンダーとしては業界のリーダーを走り続けている。結果、ユーザーからは高い支持を得ている。

それだけではない。Salesforceは社会貢献に熱心なことでも知られる。しかし、社会貢献に力を入れるためにはそもそも本業で稼いでいなければならない。清貧な気持ちだけではどうにもならない。Salesforceが社会に大きな影響を与えられているのは、しっかりと利益を出しているからだ。

売上の伴わない高尚な志は、強さなき優しさ、といえるかもしれない。社会貢献し、良いサービスを提供したいと思うならば、ガンガン稼いでガンガン使う、そんな事業を展開していこう、と強く思う。だが、その最大の敵は「安価を正義」と考える世の中の風潮だ。

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