見出し画像

romi-unieアトリエ くりちゃんの働き方(2)

アトリエ歴16年目のくりちゃんの話の続きです。

20代で入社したスタッフの多くは、30歳前後のタイミングで「このまま、この仕事を続けていていいのか?」と迷いの時期を迎えます。「29の気の迷い」って呼んでいます。自分の仕事と人生を深く考える時期なんだと思います。現在、焼き菓子部門のアトリエ長を務めるくりちゃんも30歳を前に一度辞め、半年ほど店を離れていた時期があります。フランスに1か月遊学してみたり、他のアルバイトを経験したり……。とはいえ、繁忙期には店を手伝ってもらったこともあったので、店を離れていたのは実質3カ月ほどだったでしょうか。

その後、仕事に復帰してからも、年に1度のペースで、「辞める」と言っては周囲を慌てさせてきました。「自由に生きたい」という思いが周期的にやってくるらしいのですが、仕事をしている人なら誰でも身に覚えのあることだと思います。彼女には別の理由があったのかな、と最近話していて思ったことがあります。「お菓子を食べないのに、この仕事を続けるのはおかしいですよね」と、少し冗談めかしながら、そう言ったのです。

現在の彼女は、試作や試食以外では甘いものをほとんど食べません。でもお菓子を作ることは変わらず好きだと言います。食べる頻度が昔に比べて少なくなったことに戸惑い、この仕事を続けることに後ろめたさのようなものを感じていたのかな、とその言葉を聞いて思ったのです。でもあとで「自分は食べなくなっても、お菓子を作ると喜んでくれる人がいる。いまはそれが、仕事を続ける一番のモチベーションになっている」と話しているのを聞いて安心しました。

そういえば彼女はアトリエの窓からよく買い物をしているお客さんの様子を見ています。常連さんが来てくれているな、とかお客さんが売り場のスタッフと話し込んでいると何か問題があったのでは、と後から販売スタッフに聞いてくることもあるそうです。食べる人の存在がお菓子と自分を強く結びつけてくれていることに改めて気づいて、気持ちの整理がついたのかもしれません。

お菓子作りが好きな人なら、そのなかに自分の好きな仕事があると思います。得意と言いかえてもいいかもしれません。彼女は長さをそろえてまっすぐに生地を切る作業が一番好きだそうです。店の商品に正方形の型で焼く「ガレット・フランセーズ」という焼き菓子があるのですが、この型に生地がピタッと収まったときは特に気持ちがいいそうです。最近は、レモンケーキを型からするりときれいに外す方法を見つけ、子供のように「見て見て」とスタッフに報告する姿がありました。初心にもどったようなお菓子作りの楽しさやワクワク感とプロフェッショナルな仕事術、その両立は可能なんだとくりちゃんの働き方を見て思います。

パティシエとして、ひとくくりで表現される仕事ですが、その中でも自分の働き方は自然と心地のよいところを見つけていくのだと思います。長く働き続けるには、どう働きたいのか、そしてどういう自分になりたいのかを自問自答しながら、日々の仕事に向き合うことが大切なのかなと思います。製造の仕事に就く人は、仕事することで成長することも大きいので、働く時間が8時間じゃ足りなくて、もっと限界まで仕事したいという人もいると思います。製造以外の仕事も覚えたいという人もいるかもしれません。romi-unieでは残業をしないルールがありますが、副業をしてもいいことになっています。ひとつの仕事に軸足を置きながらいろんな仕事にチャレンジしているうちに、自分なりの仕事の仕方ができあがってくることもあるかもしれません。

私も迷いながらも、時代とお客様のニーズを感じ、直観を頼りにしつつよく考え、romi-unieの進んで行く方向を決めています。romi-unieで仕事をするスタッフ一人一人も、自分自身の仕事、生活、人生を深く考えながら、働きやすい環境でやりがいを感じながら、それぞれが成長していってほしいと思います。何よりも、お菓子の世界が好きで働き始めた人達ばかりなので、その情熱を大切に、楽しく仕事をしてほしい。そしてチームワークでよいものを作り、よいお店づくりをしていきたいと日々精進しています。

スタッフの考えを聞くために、年に一度面談をして、今後のことについて語る時間を設けています。これからが、その年に一度の面談の季節。それぞれの仕事や生活、成長について話すのが楽しみです。

※Romi-Unie Confitureでは、現在スタッフを募集しております。https://www.romi-unie.jp/(ホームページ下の方までスクロールして【お知らせ】を参照してください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?