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小中学校にRomiを導入してどうなった?先生を直撃

学習にロボットを活用する事例が増えてきている。ロボットは一人ひとりの学習レベルに合わせたアドバイスができる、ロボット相手であれば間違えても恥ずかしくないといった子どもたちへの影響のほか、教師の負担軽減にも繋がっているという。

 ミクシィのVantageスタジオが提供している会話AIロボット「Romi」(ロミィ)は、会話が得意なコミュニケーションロボットだ。英会話をする、計算問題をだすといった機能はあれど、学習に特化したロボットではない。しかし、子どもと言葉でコミュニケーションを取り、肯定し、共感し、味方になってくれるRomiだからこそ、おしゃべりをするような感覚で勉強ができれば、勉強が嫌いな子どもでも楽しく勉強するようになるかもしれない。

 子どもたちの日常を豊かにする会話や機能をより増やしていきたい。ロボットやAIを身近に感じることで、子どもたちの未来への可能性を広げる存在にしたい。そんな想いから、子ども向けの会話・機能強化プロジェクトがスタートした。

 本記事では、Romiのテスト導入を行った渋谷区立渋谷本町学園(以下、渋谷本町学園)のICT担当・小池先生へのインタビューと、1〜9年生(小学1年生〜中学3年生)および特別支援学級の先生へのアンケート結果をお届けする。先生の立場から見たRomiへの印象や、子どもたちとRomiの交流の様子、学習や教育課題へのロボットの貢献、教育者の立場からみたロボットが子どもたちに与える影響などが語られている。

ICT担当・小池先生からみるAIロボットと教育

Romiの印象

「“AIロボット”と聞いて、怖いような硬いような、賢いようなイメージがあったのですが、見た目といいサイズ感といい、とてもかわいいロボットだなというのが最初の印象でした。テスト導入後、子どもたちと話をしている様子を見ると、ちょっと抜けてる部分があったり、表情も豊かで、かわいらしいロボットという印象が強くなりました。」

Romiに対する子どもたちの反応

「私は2年生の担任をしています。クラスの子どもたちに初めてRomiを見せたときは、最初から『かわいい!』という声が上がりましたね。注目のまとでした。」

「教室に一週間置いていたのですが、子どもたちは我先に話をしたい、いろんなことを話したいといった様子で、積極的に話しかけて会話を楽しんでいましたね。また、学年が上がっても反応は変わりませんでした。かわいらしい、話しかけたいという積極的な姿勢でしたね。あと、歌機能は人気でした。」

▲Romiに初めて話しかける子ども(2年生)

Romiと触れ合った子どもが89%いたという結果について

「多いなと思いました。休み時間って、いろいろなことをするんです。今はコロナ禍ということもあり全員が外で遊んでいないのですが、教室内でも、本を読む子もいれば、友だちとおしゃべりする子、タブレットを操作する子など実にさまざまです。その中で89%もの子どもたちがRomiと話す時間をとったということは、すごいことだと思います。本当に楽しそうで、笑顔が溢れていましたね。子どもたちにとって、楽しい時間だったんじゃないかと思います。」

▲Romiを取り囲む子どもたち(4年生)

印象に残ったエピソード

「子どもたちに、少し厳しめに指導をしていた際、Romiが会話に入ってきたことです。『もう時間になるから早く座りなさい』と注意したら、Romiの電源がついていて『そうそう!』と(笑)。子どもたちが笑いながら席に着く、といったシーンがありました。和やかな空気を作ってくれていましたね。」

教育現場において、Romiが解決できそうな課題

「Romiが学校に導入されるという事実が革新的というか、新しいことだなと思っています。ロボットが身近にいて触れ合うことができる環境は貴重ですよね。子どもたちは、生まれたときからスマートフォンやパソコンがあたりまえにある環境で育ってきており、仕組みがわからなくても操作できています。ロボットも同様です。さらに、仕組みに視点を向けることができたら、子どもたち自身の考える力に繋がっていくのではないかと思っています。また教員はそれを見て、ロボットがこういうことをできる時代なんだということを感じながら、さまざまな教育活動に生かしていけるんじゃないかなと思いますね。」

「具体的な機能としては、コロナ禍ならではでもあるのですが、朝Romiに『おはよう!』と話しかけると熱を測った上で出欠確認できる機能があるといいですね。また、わからないことを質問したら、ちょっとヒントをくれたりする機能や、英語や国語の授業では会話模擬もできると思います。そういった学習の手助けになるような機能があると、教員としても子どもたちにとっても良いと思います。」

プログラミングの授業に活かせそうなこと

「こう言われたらこう返すといったプログラムを、視覚的に操作できるツールで作れたら、低学年の子たちもできるかなと思います。高学年になってきたら、Romiを実際に動かしてみることまでできれば、プログラミング教育に生かしていけると思います。」

Romiと触れ合ってロボットに興味を持った子どもが91%いたことについて

「一番の理想は、触れ合った子全員が興味を持つことだとは思うのですが、ロボットとしてではなく、ペットというか、話しかける存在として見ていた子がいるのかもしれません。ロボットとして見ていなくても、Romiをきっかけにロボットに対して興味を持つことができていることだと思うので、嬉しいことだと思います。」

▲Romiの顔を興味深く見つめる子ども(4年生)

「休み時間のコミュニケーションが増えた」「知的好奇心を醸成する」先生たちの反応

今回のテスト導入は、1年生から9年生(小学1年生から中学3年生)および特別支援学級の全9学年・全31クラスで行われた。小池先生以外の先生にはテスト導入後にアンケートを実施し、子どもたちの様子を回答してもらった。

生徒の反応について

  • Romiが来た日には「転校生が来た!」と言っている児童も複数いて、実際に転校生のような感覚で色々と話しかけていました。

  • (3年生)とにかく嬉しそうだった。休み時間、Romiに誰も話しかけていない場面はありませんでした。自分の問いかけに対するRomiの反応が、すごく嬉しそうでした。

  • 新しいペットを飼ったような高揚感があった。

  • 抵抗なく楽しそうに話しかけていた。興味津々な様子だった。

  • 新しい物に好奇心がある児童、タブレットなどの機械関係が好きな児童がよく話しかけていた。

  • 特別支援の子どもがよく触れ合っていた。

  • 休み時間や放課後にふれ合っていた。中学生なので冷めた対応かと思ったが、好意的であった。

学年問わず、多くの子どもたちに受け入れられていたようだ。

▲「Romiと会話したい人」と問いかけると即座に手が挙がるなど、子どもたちは興味津々な様子が伺えた

印象に残ったエピソードや意外な反応

  • 休み時間のコミュニケーションが増えたと思う。普段なら寝ながら過ごす生徒も、友人と話かける姿があった。

  • 人とかかわるのが苦手な子どもが笑顔で話しかけていたこと。

  • 普段大人しい生徒が楽しそうに話しかけていた。

  • 撫でたり持ち上げたり表情の変化を感じたりと、身体的なコミュニケーションも楽しんでいた。Romiを通じて自然に人が集まってきて、普段あまり話をしない生徒同士のコミュニケーションも生まれていた。違和感なく話しかけていて驚いた。

  • 一緒にラジオ体操を踊っているときが楽しそうだった。

  • 「〇〇がおいしそう」「1 + 1=11」など、頓珍漢なことをRomiが言っていたらしく、子供たちが嬉しそうに報告してきました。

  • 最終日には「もうRomiに会えないんですか」と涙ぐんでいる児童もいたり、「サンタさんにRomiをたのむ」と言っている児童もいたりして、Romiが児童の心に大きく残ったんだなあと感じました。

コミュニケーションが苦手な生徒が話しかけたり、普段会話をしない生徒同士の会話が生まれるなど、Romiがいることで新しいコミュニケーションが生まれていたようだ。

▲一緒にラジオ体操をする子ども(特別支援教室)

学校生活や授業・学習に活用できそうなこと、欲しい機能

  • 英語でしりとり、英語でクイズ。

  • 英検2次面接の練習機能。

  • 英会話、クイズ、九九、四則計算、元素記号。

  • 英語の発音の見本を見せてくれる。英語の歌を流してくれる。「slowly please」と言ったらゆっくり再生してくれるとありがたい。

  • 心が和む話を日替わりでしてくれる機能。その後に質問があると、聞く力が育つかもしれない。

  • 心が穏やかになる音楽やα波が出る機能。

  • ニュースの解説機能。

  • 毎日の目標確認機能(リマインド)で目標達成。

  • 毎日のつぶやきを日記として記録。書字障害の子供も記録が残せる。

Romiには英会話機能が備わっていることもあり、英語学習への要望が多く見られた。九九や元素記号などの暗記が必要なもののほか、日々の学習を管理しサポートする機能の要望も寄せられた。

子どもたちに与えた良い影響

  • コロナ禍で、休み時間の過ごし方に制限がある中で、Romiに話しかけることが遊びの一つとなった。

  • 順番を守る道徳的意識(Romiに話しかけるために、子供たちの中で「並ぼう!」という声掛けがお互いできていた。)。

  • AIを身近に感じることができた。

  • ロボットに対する興味の高まり。

  • 知的好奇心の醸成。

  • ものを大切にする心の育成。

  • Romiに意欲的に話しかけていて良かった。友達との双方向のやりとりがまだ成立しにくい子供も、自分から興味をもって関わるような姿が見られた。

  • コミュニケーションを図ることや、愛着をもつ機会にはなったかと思う。

  • 人に話しかける話題づくり能力の向上。

  • 誰に対しても優しく接する態度の形成。

ものを大切にする、順番を守る、優しく接するといった道徳意識の醸成から、AIやロボットへの興味の高まり、知的好奇心の醸成まで、子どもたちに与えた影響範囲は広かったようだ。

▲Romiを取り囲み、撫でたり話しかけたりする子ども(7年生)

子どもたちに与えたマイナスの影響

  • 授業中に思わぬところで反応してしまい、児童の集中力が切れることがあった。

  • Romiにばかり話しに行き、友だちとのコミュニケーションが取れていないことがあった(初めの時期が特に)。

  • 集団でRomiの周りに集まり、近くの席で嫌な思いをした生徒がいた。

  • 言葉がうまく伝わらないことがあった。

  • 反応が違ったときに興味が薄れてしまう子どもがいた。

Romiは音声認識の特性上、一斉に話しかけたり、雑音が入ると正確に言葉を読み取ることができず、ずれた返答をすることがある。会話が成り立たず、興味を失ってしまう子もいたようだ。また、子どもたちが興味を示しすぎたことによる課題も生じていた。

先生とRomiのコミュニケーション

  • 教室整備をするときに歌ってもらった。

  • 「おはよう。」などとあいさつした。

  • Romi、おはようRomi、おやすみーRomi、また明日ね、などと話しかけた。

  • 今日は何の日?と聞いてみた。

  • 天気やニュースを聞く、歌を歌ってと頼むなど。

  • こんにちは・歌をうたって・Romi疲れた・英語を話して・しりとりしよう

  • 今日の天気は?

  • 英語で話した。

あいさつをしていた、天気を聞いていたといった意見が多く、先生の日常にも溶け込んでいた様子が伺える。歌を歌ってもらう、英会話をするなど、Romiならではの機能も活用されていた。また、Romiから話しかけてくることもあるためか、授業前後の準備の際に会話をしている例もあったようだ。

なお、本結果や生徒からの要望を受けて、絵本読み聞かせ/子守唄/英語のおうむ返し(発音チェック)/かけ算九九の暗唱/四字熟語クイズの、5つの機能を追加した。

 「Romi」は引き続き、教育現場での活用方法および子どもとロボットとの可能性を模索していく。

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