クリープハイプ歌詞考察22日め

7月になるまでクリープハイプの歌詞を1日ひと歌詞まで独自に考察していく。
本日は「愛のネタバレ」を考察する。

考察条件として以下の縛りを設ける。
・歌詞以外の情報を検索しない

なお、とくに前提となるクリープハイプの情報は持っていない。苦渋100%を読んだことがある、のみである。
それでは自由にスタート。

題は、愛とネタバレという普通は組み合わせることのないものを繋げる方法が取られている。ネタバレといえば、どんでん返し小説や映画等のレビューで見られる単語だ。
レビューというところから、これは「愛」の使用後ないしは視聴後の歌詞なのだろう。
まず、初めて見た時のことから振り返っている。つまり出会いの場面か。

・初めて見た時初めて見たと思えたそれだけで
当たり前だけどなんか嬉しかった
どこかであったような気がするよりもっと運命で 好きだと思ったんだ

→「初めて見た時初めて見た」は、同語反復になるが、「なんか」嬉しい、という詳細な言語化を拒むような感覚を言っている。君とはどこかで会った気がするんだ、とは少女マンガにおける出会いの場面で鉄板のセリフとも言って良いが、それ以上に「初めて見た」という感覚は「もっと運命」なのだと言う。
なぜ「もっと運命」なのかさらに説明している。

・星5のうち3.2 なんとも言えないこの評価
好きか嫌いかで言えば好き でもここからはネタバレを含む
この人を好きな人は こんな人も好きだろうとか
誰かが決めた人じゃなくて
ここからネタバレ

→「この評価」とは、この歌詞のことだろうか。いや、それとも「好きだと思った」相手のことを過去の人が評したのが3.2なのだろう。なぜなら、複数のレビューがあるために3ではなく3.2という小数点込みの数字になっているのだ。「なんとも言えない」のは、1でも5でもない中間であるためだ。なぜ視聴者(元恋人?)たちがそのような点を付けたかは、「好きか嫌いかで言えば好き でもここからはネタバレを含む」と理由をネタバレ以下で述べているのだろう。
「この人を好きな人は こんな人も好きだろう」とは、映画や小説のおすすめが自動で表示される仕組みのように、人に対する愛もレコメンド可能な現代を指している。それに対して、「誰かが決めた人じゃなくて」と言っているのは、つまり自分で決めたいということだろう。
先述のとおり「初めて見た時初めて見たと思えた」という実感を大切にし、「もっと運命」を希求するゆえに、「ネタバレ」は厳禁なのである。
さて、「ここからネタバレ」が始まるという。どのような主要ネタやオチが明かされるのか。

・これでお別れ 握りしめた手 笑えないって笑えがんばれ
夜のコンビニ 駅前の椅子 帰り道で
泣きそうになる っていうか泣いてる

→どういう状況だろう。「夜のコンビニ」「駅前の椅子」「帰り道」は、その順に立ち寄ったということか。「握りしめた手」とは、一人でではなく、相手の手を、ということなのか、どちらとも読める。
結局、別れることになったというのがオチであったのだ。
さらにその別れを説明している。

・急上昇ワード1位「二人でいるのに一人みたい」
言われたあの日から いつまでも忘れられなくて 最後に見た時最後に見たと思ったそれだけで当たり前だけどいつも愛しかった

→「急上昇ワード」は、SNSを連想させるフレーズを用いたことで、時事ネタ感が出ている。
「いつまでも忘れられなくて」とあるが、「二人でいるのに一人みたい」というセリフは、安心するとも孤独ともどちらとも取れるので、どのような意味で急上昇したのかが分からない。それは、炎上も話題も一緒くたに急上昇、で括られることを活かした言葉選びなのだろう。
別れの後に振り返って、いつも愛しかったのだと結論づけている。
これで終わらず、さらに気になるワードが投下される。

・あの口コミで知りました あなたの奥の方
蜂蜜みたいな味とか 嘘ついたけど

→「蜂蜜みたいな」は歌詞の引用だ。「あの口コミ」とはなんなのだろう。それは「ネタバレ」を見たということではないのか。いや違う、ネタバレは視聴の意欲を削ぐが口コミは逆に喚起するものだ。「奥の方」とは他人が普通見ることができないが、それだけなんでも個人的な核となりうることさえも他の人から聞けてしまうということだろう。
「愛」は「ネタバレ」してはいけないものというか、ネタバレという言葉をくっつけることで「愛」の重みや厚みが極限に薄くなった気にさせる。「愛の口コミ」でも同様だろう。そもそもが作品のネタバレをする、ということ自体が好ましくないため見ても見なくても良いように「ここからネタバレ」と注意を設けるのだから、この歌詞も、未視聴の方は回れ右、というメッセージを込めているのか。

・だから これでお別れ まるでネタ切れ
握りしめた手を振り払え
自分の家が自分の家過ぎて やっと笑えた

→「笑えないって 笑えがんばれ」と前出したが帰ったことで「やっと笑えた」ということだ。「まるでネタ切れ」とは、これ以上の先がないことを「ネタバレ」にかけて表している。
ネタバレももうすぐ終わるようだ。

・誰かの落とし物 どこかで花火
たまに間違えるスーパーライト
初めて別れて初めて別れたと思った
当たり前だけどそれが悲しくて
泣きそうになる っていうか泣いてる

ぜんぶネタバレ

→ここで無造作に思える単語が三つ出てくる。別れの最中にも、他の人にとっての日常は何事もなく続いている。「泣きそうになる っていうか泣いてる」も、前出の「初めて別れて初めて別れた」のような同語反復でしか伝えられないリアルタイム感を出している。映画や小説で泣くのとはまた違った涙だが、これも「愛」の感想としての記録なのだろう。
「ぜんぶネタバレ」とは、何もかも大事な思い出だったという意味に読める。「愛」の核心すなわちネタにあたる部分は、別れと涙と思い出ということだろうか。
他にも、もしもあらかじめこのレビューを最後まで読んでいたら、この愛に手を伸ばしはしなかっただろう、という意味にもとれる。
あとは、なんで星3.2かという理由の内約が、ネタバレを読むとはっきりするので大体わかってしまうということか。優れた作品ならネタバレ後の視聴にも耐えうるかもしれないが、この歌詞でいう「別れ」がオチとしてバレた以上は星3.2の愛は再視聴に値しないということか。
「この人を好きな人は こんな人も好きだろうとか 誰かが決めた人じゃなくて」と言っていたり、「どこかであったような気がするよりもっと運命で」と言っていたが、その衝撃はこの一度きりだということだろう。ネタバレは未知ゆえの冒険や失敗、驚きを無くすから、「当たり前だけどそれが」愛しいとか悲しいという受け取り方を左右する要素なのである。まあ確かに結末わかってて恋愛する人もいないか。(2777)

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