クリープハイプ歌詞考察23日め

7月になるまでクリープハイプの歌詞を1日ひと歌詞まで独自に考察していく。
本日は「愛の点滅」を考察する。

考察条件として以下の縛りを設ける。
・歌詞以外の情報を検索しない

なお、とくに前提となるクリープハイプの情報は持っていない。苦渋100%を読んだことがある、のみである。
それでは自由にスタート。

題の点滅とは、信号機を指している。
この歌詞を7つに分けると以下のようになる。
①焦りと待つことの葛藤
②点滅
③赤の時と青の時
④点滅
⑤青の時と赤の時
⑥信号に例えたタイミングの難しさ
⑦赤の時と青の時

以上からわかるように②④で「点滅」という語が登場する。
③⑤⑦では、青信号の時と赤信号の時を比較している。
①の前提や⑥の描写は、単に信号の点滅だけでなく「愛の」と掛けたこの歌詞の意味を補強している。

それでは順に見ていく。

・焦って今すぐ飛び出しても後悔するのは知ってるけど
何かが起きるかもしれないその道を探してる
このままずっと待ってたって後悔するのは知ってるけど
何かが起きるかもしれない道は続いていく

→矛盾する二つの気持ちに揺れていることがわかる。飛び出すことも待つことも選べないようだ。
まだ信号は出てこないが、道について語っている。
迷っているうちに点滅する様子が続く。

・どうでもいい事で迷ってたらいつの間にか点滅してる
あと少しで気持ちが変わるその前に届くように早く

→「気持ちが変わる」というのが題にある「愛の」ことなのだろうか。「早く」行かなくては、と点滅を前にして焦っている。
しかしうまくは行かないようだ。

・頭の中ではわかってるんだけど赤でも待ちきれなくなって行ってしまうのに
どうして青なら安心してしまって大事な事も言えなくなるんだろう

→先ほどは点滅に焦っていたが、逆に青信号の時は「安心してしまって」その結果「愛の」「大事な事」を言いそびれるという。
自分でもそれは俯瞰して理解しているつもりなのに、いつもタイミングを間違えがちということだ。ただ、道路信号を擬えているものの「愛の」ことを表現しているため、もっと複雑な感覚が、「赤」「青」には込められているのだろう。

・大事な事だから迷ってたらいつの間にか点滅してる
それでもまた気持ちが止まるそれまでどうかそこにいてよ

→「どうでもいい事」だけではなく、「大事な時だから」迷っていたという場合もあるらしい。
「どうかそこにいてよ」と祈りめいた心境になっている。
「赤」でも「青」でもいつも失敗をしているようだ。

・本当は何も分かってないんだけど青だからわかってるふりして待ってしまうのに
どうして赤なら焦ってしまってどうでもいい事しか言えなくなるんだろう 

→ 「赤なら焦ってしまってどうでもいい事しか言えなくなる」のは「青なら安心してしまって大事な事も言えなくなる」というフレーズと対になっている。
焦りについて繰り返し触れられている。

・ずっと待たされて
ちょっと無視されて
大事な所でひっかかる

→「無視されて」は信号目線だから、「愛の点滅」を起こすのは語り手でもあり他の人でもあるのかもしれない。「待たされて」「引っかかる」は信号に翻弄される様子を指している。
確かに前出の「それでもまた気持ちが止まる それまでどうかそこにいてよ」も信号機側の目線だ。
「大事な所でひっかかる」とは、「大事なことも言えなくなる」状態を指しているのだろう。
「待たされて」「無視されて」はすれ違いが起きていることを表している。
ないものねだりというか、噛み合わなさがどうにも歯がゆい。

・頭の中ではわかってるんだけど赤でも待ちきれなくなって行ってしまうのに
こうして青なら安心してしまって大事な事も言えなくなるんだろう

頭の中では

→「愛」はずっと恒常性のあるもののように感じる語だが、じっさいにはこの歌詞にあるとおりタイミングを逃して「大事な事」を言えなくなるというふうに、気が抜けないものだということだろう。
頭の中ではわかっているというフレーズが繰り返されることで、より不器用さが強調されており、「愛の点滅」に対処することの難しさが伝わる。
また、信号というモチーフを選んだことで「赤」「青」そして「点滅」の三つに気持ちを分類して描くことに成功している。「愛」におけるすれ違いと焦りについて、「点滅」と重ね合わせることでイメージしやすく共感できるものにもなっている。
愛の信号、ではなく「点滅」に焦点を当てたことで、さらにこの愛の不安定さが出ていて、「点滅」してしまうまでの葛藤と、「点滅」してしまってからの焦り、そしてその両方を含めた点滅に対する処理し難さがすべて書かれている。

この歌詞は「愛」と信号の「点滅」を合わせる発想で書かれているが、もし題が先に決まったとしたらそこから「道」や「ひっかかる」などの語を導き出していったのだろうか。「愛」と日常的に眼にする信号を重ね合わせる中では、信号機についてのあるあると、「愛」についての想いが同時に描かれるため、「愛」についてだけ考えていたのでは出てこないワードを以て「愛」を語ることになり、ひとくちにまとめればうまく行かない愛、という状態について、違った角度からの切り口が何個も出てきて、なぜどういうふうに悩んでいるか等のディテールを肉付けし、さらに新たな視点を聴く者に与える。あるいは二律背反的な「愛」についてのもどかしさ、というメッセージから出発したとすれば、相反する2色を交互に示す信号機がそこから連想されたのかもしれない。あるいは焦りの視覚化が点滅であり、この歌詞は視覚と内面を中心にしているという特徴も挙げられる。(2277)

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